Episode:14
「あ、ねぇねぇ、そこの執事さぁん。あたしたちシエラ学院から任務で来たんだ。
でね、お部屋、どこ行ったらいいの〜?」
天衣無縫もここまでくると、そうとうの威力だ。呼びとめられた執事?も、不審に思うより先にミルの質問に答えてる。
「シエラ学院の皆様ですか? 少々お待ちください。すぐにご案内しますので……」
「ありがと〜♪」
なにがなんだか分からないまま、気が付くとあたしたちは、割り当てられた部屋にいた。
ちなみに由緒正しい家柄なだけあって、調度品なんかはどれも一級品ばかりだ。
「この続き3部屋を、どうぞお使いください。それからなにか御用がおありでしたら、こちらの呼び鈴を……」
「はぁい♪ じゃぁまたよろしくぅ〜♪♪」
ミル、ウインクひとつで執事?を追い出す。
あまりの展開に、みんなしばらく呆然としたままだった。
しばらくしてからようやく、シルファ先輩が口を開く。
「今のうちに……いろいろ点検した方がいいんだろうな……」
「そうですね……」
才媛で知られるエレニア先輩も、やっぱりいつものペースがない。
「えぇと……ともかくお嬢さんたち、荷物出してみて。ほらミル、妙なことをするんじゃないの」
エレニア先輩、ロア先輩以上に面倒見がよさそうだ。あたしたちの荷物を、ひとりひとり点検していく。
「シーモアは問題なさそうね。ルーフェイアは……これだけ?」
「はい」
あたしはほとんど、荷物は持ち込まなかった。着替え以外は武器と、自分用にアレンジしたツールキットだけだ。
「驚いた。これで済ませられるなんてあなた、じつは慣れてるんじゃない?」
エレニア先輩、鋭い。
あたしがシュマーの人間で尚且つ戦場にいたことは、知っている人はみんな黙ってくれてるけど、これじゃばれてしまいそうだ。
――どうしよう。
今までだって学園長やらロア先輩やらタシュア先輩やら、そうとう知られてしまってる。これ以上知られたら、学院を退学することになりかねない。
「えぇと、その……」
どう答えていいのか困り果てて、あたしが口篭もっていると、横から助け舟が入った。
「エレニア。こみ入ったことには、立ち入らない方がいい」
「こみ入ったこと、ですか……?」
まだどこか訝しげなエレニア先輩に、こんどは嬌声が振りかかる。
「せんぱい〜、そんなのいいから、あたしの、あたしの〜〜!」
ミル……。
けどこれ、もしかしてわざとやってくれてるんだろうか?
ともかくこの騒ぎで、エレニア先輩の注意がミルへ移った。