Episode:13
でも、ほっとしたのはつかの間だった。
「あぁ、例のシエラの連中ですか。女性ならと思いましたが、やはり野蛮そうですね」
そう言いながら、殿下があたしたちを一瞥する。
一瞬あたしを見たような気がするけど、それを気にしてる余裕はなかった。みんなが、言われたことに怒ってるのが分かる。
シーモアなんて相手がクライアントじゃなかったら、まちがいなく殴り倒してるだろう。
「いずれにせよ、下々のしかも孤児の集団では、仕方ないんでしょうね。
まぁともかく、あまりみっともない真似だけはやめてもらいますよ。こちらの品位に関わりますから」
この少年、お父様より凄いかもしれない。
見ればみんなは切れる寸前だ。でもさっきだって止められなかったのに、どうやったらいいんだろう?
そこへ、ミルの能天気な声が響いた。
「ふぅん、じゃぁ殿下ってさ、血が青かったりするんだ〜?」
ふわりとあたしたちの前へ出て、とんでもないことを言い放つ。
「な、なんだと……」
「え? だってそうじゃない♪ 上の人たちってあたしたちとちがうんでしょ〜?
そしたらさぁ、血の色が青かったりとか、実は目がもうひとつあったりとか、するんだよね?」
無邪気な毒舌……とでも言うんだろうか?
にこにこしながら言う様は、まるで小さな子が尋ねているようだ。それなのに、しっかり相手の急所を突いている。
「おっもしろいよね〜、あたし初めて知っちゃった♪」
この親子が相手じゃ、どうなるか。でもミル、そんなことまったくおかまいなしだった。
「ゆ、由緒ある我々を、まるで化け物のように……!」
「あれ? ちがったんだ? んじゃあたしたち下々といっしょ? へぇ、そっかぁ♪」
ある意味、タシュア先輩以上かも。
「けどさぁ、あんまり言わない方がいいよ〜。
これでみんなに嫌われちゃったりして、任務がうまくいかなくて、死んじゃったりとかしてさ〜♪ でも、自業自得だもんね?」
とどめの一言。
さすがのクライアントも、今度ばかりは黙ったままだ。なにしろミルの言っていること、あれでも一理ある。
「でさ、あたしたちもう、行っていいんだよね? だって顔合わせ、おわったんだもん♪
ねぇ、みんな行こ。あ、お部屋まで誰かつれてってくれるんでしょ? テキトーに決めちゃってもいいけど〜♪♪」
あたしたちも含め、部屋にいた一堂全員、唖然とするばかりだった。
その中をミル、さっさと部屋を出ていく。
「ねぇほら早くぅ。お部屋決めて、ゆっくりしようよぉ〜」
部屋を決めるって、ホテルじゃないと思うけど……。
ともかく完全に、みんなミルのペースに巻き込まれてた。勢いに引っ張られるようにして、あたしたちも部屋を出る。