朝_講義室
――――で。
「なんで僕がここにいるんです?」
うやむやに終了した剣術講義の後、次の講義へ向かおうとしていた碧流は、なぜか朱真に首根っこをつかまれて、とある空き講義室へと連れ込まれていた。途中、片手でぶら下げられたのは、忘れたい思い出だ。
「お前もあそこにいただろうが」
回答はシンプル。
いただけで、皇太子と戦う軍隊に入れられてしまうのか。
講義室に集まったのは、朱真と碧流、それに青華。
そして朱真の第一声が、作戦会議、だった。
しかし、碧流が戦力に数えられるかどうかは、二人とも充分に知っているはず。
人数が十名と定められている以上、精鋭をもって臨むべき、ではあるが。
「そもそも、オレには集められるような仲間がおらん」
いや、そこに胸を張られても。
助けを求めて、青華の方へ目をやるが。
「私も、そこを期待されると弱い」
武人は頼りなげに目を伏せる。
あんたがた、腕っ節だけなんかい。
もちろん碧流には知り合いすらほとんどいない。なにせまだ三日目だ。
碧流は再度朱真に目を向けて。
「南須国の知り合いとかいないんですか?」
「いないことはないが、オレが声を掛けて、動くようなヤツはおらん」
だから、そこで胸を張らないで、公子。
同じく、青華へ目を向けても。
「皇太子を相手取りたい者に心当たりはない」
擦り寄りたい相手を殴ってどうする、ということか。
ここで良いところを見せれば皇太子の目にも止まってあわよくば、、、なんて考えもできなくはないが、分の悪い賭けであることは間違いなく、そこに引きずりこむ話術を青華に求めるのは酷に過ぎる。
考えれば考えるほど、ますます望みは薄くなっていくが、さすがに三人では戦えないわけで。
「とにかく、このままでは作戦も何もありません。それぞれが出来る限り人を集めて、昼休み終了前にまたここに集まりましょう」
目を伏せたままの二人が、頷いたものだと信じて。
碧流は講義室を後にした。自分も出来る限りのことをしなければならない。
なぜ、碧流が一番一生懸命に動いているのか、それは考えないようにしながら。




