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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第84話 悪役必要

グレイウッド。


中央図書館・最深部。


静寂。


重い空気。


だが。


先ほどまでとは違う。


理解が進んだ分だけ。


“現実”の重さが増している。


机の上。


広げられた図。


三つの役割。


循環。


閉じた構造。


誰もがそれを見ている。


そして。


一つの結論に辿り着いている。


だが。


口に出せていない。


レオナが先に言う。


「結論は出てるわ」


静かに。


逃げない。


全員の視線が集まる。


レオナは図を指す。


円。


循環。


その一点。


“悪役”。


「これが止まると」


一拍。


そして。


「全部止まる」


断定。


勇者の喉が鳴る。


理解している。


だが。


認めたくない。


「……つまり」


声が低くなる。


「悪役は、必要ってことか」


問いではない。


確認。


レオナは頷く。


「必要」


即答。


迷いなし。


「混乱がなければ、勇者は機能しない」


論理。


続ける。


「勇者が機能しなければ、聖女も機能しない」


連鎖。


そして。


「結果として、世界は停滞する」


結論。


セラが小さく息を吐く。


「……安定のための不安定」


矛盾。


だが。


成立している。


リリアが首を振る。


「そんなの……」


否定したい。


だが。


言葉が続かない。


目の前の事実。


論理。


崩せない。


レオナは淡々と続ける。


「安定状態を維持するには、外乱が必要」


専門的な言い方。


だが。


本質。


完全な静止は。


死と同じ。


変化がない状態。


それは。


維持ではない。


停止。


だから。


意図的に。


揺らす。


問題を起こす。


そして。


解決する。


その繰り返しで。


世界は“動いている”。


勇者が拳を握る。


強く。


「じゃあ……」


怒りが滲む。


「誰かが、わざと不幸を作ってるってことか」


核心。


レオナは一瞬だけ考える。


そして。


言う。


「そういう設計」


否定しない。


感情も乗せない。


ただの事実。


リリアが一歩下がる。


顔が青い。


「……ひどい」


小さく。


震える声。


自分が信じてきたもの。


神。


その存在が。


そんな仕組みを作っている?


受け入れられない。


だが。


否定できない。


セラが静かに言う。


「合理的ではあります」


またその言葉。


だが。


今は重い。


「完全な平和は維持できない」


現実。


だから。


管理する。


被害をコントロールする。


大きくならないように。


循環させる。


システムとしては。


優秀。


人間としては。


許しがたい。


勇者がレオナを見る。


まっすぐに。


「お前はどう思う」


問い。


試すように。


レオナは少しだけ視線を外す。


図を見る。


そして。


答える。


「効率はいい」


まず評価。


冷静に。


だが。


次の言葉。


「でも、最適じゃない」


否定。


はっきりと。


勇者の目がわずかに開く。


セラも反応する。


レオナは続ける。


「無駄がある」


指で円をなぞる。


循環。


繰り返し。


「同じことを何度も繰り返してる」


非効率。


改善の余地。


「進化がない」


致命的。


システムとして。


閉じている。


だから。


外部からの変化に弱い。


その言葉に。


全員が気づく。


外部。


例外。


レオナ。


勇者が小さく呟く。


「……だからお前がいると壊れるのか」


理解。


レオナは頷く。


「そう」


シンプルに。


「私はこの循環に必要ない」


断言。


「だから、想定されてない」


つまり。


存在してはいけない存在。


リリアが震える声で言う。


「でも……」


レオナを見る。


まっすぐに。


「あなたは、混乱を生んでない」


事実。


むしろ。


逆。


安定させている。


都市。


人々。


すべて。


レオナはそれを聞いて。


少しだけ考える。


そして。


言う。


「だから矛盾してる」


静かに。


核心。


悪役の役割を持たない悪役。


それは。


システムにとって。


致命的なバグ。


勇者が息を吐く。


長く。


「……めちゃくちゃだな」


本音。


世界そのものが。


歪んでいる。


その認識。


もう戻れない。


セラが図を見ながら言う。


「結論としては」


整理。


冷静に。


「悪役は必要」


一つ。


「ですが」


続ける。


「今の“悪役”は機能していない」


レオナを見る。


はっきりと。


リリアが小さく頷く。


勇者も同じ。


理解は一致している。


レオナはその視線を受けて。


特に何も感じていないように言う。


「なら」


一歩。


思考を進める。


「代替が必要ね」


その言葉。


空気が変わる。


勇者が眉をひそめる。


「代替?」


確認。


レオナは頷く。


「このシステムを維持するなら」


前提。


「“悪役”は必要」


論理。


「でも私じゃない」


事実。


「なら別の何かが必要」


結論。


その意味。


全員が理解する。


誰かが。


“悪役”になる必要がある。


沈黙。


重い。


選択の話になる。


その時。


レオナが次の本を開く。


まだ終わらない。


むしろ。


さらに深い。


「……そもそも」


静かに。


「このシステム自体が必要かどうか」


根本。


問いが変わる。


維持か。


破壊か。


その選択へ。


物語は進む。

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