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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第73話 セラ分析

グレイウッド。


居住区の一角。


夜。


灯りが並ぶ。


魔導灯。


静かな光。


人の気配。


安心できる夜。


昼の混乱が嘘のように。


落ち着いている。


だが。


セラの中は。


静かではない。


部屋。


簡素な机。


紙。


ペン。


広げられている。


書きかけのメモ。


線。


単語。


繋がらない情報。


セラは椅子に座り。


それを見つめている。


考えている。


必死に。


「……分からない」


小さく呟く。


だが。


止まらない。


考え続ける。


レオナの言葉。


神の命令。


リリアの反応。


全部。


頭の中で並べる。


整理する。


そして。


一つずつ。


切り分ける。


「神は“悪”って言った」


確認。


だが。


レオナは否定した。


理由は明確。


事実と合わない。


グレイウッドは。


悪ではない。


むしろ逆。


じゃあ。


なぜ。


神はそう判断したのか。


セラの手が動く。


紙に書く。


“善悪?”


すぐに。


横線で消す。


違う。


それでは説明がつかない。


じゃあ。


別の基準。


思い出す。


レオナの言葉。


「前提が壊れてる」


そして。


自分が言った言葉。


「役割なんじゃないですか?」


セラの指が止まる。


その単語。


“役割”。


紙に書く。


丸で囲む。


見つめる。


もし。


神が善悪ではなく。


“役割”で判断しているなら。


すべて。


繋がる。


リリア。


聖女。


浄化する存在。


役割がある。


王国。


秩序を保つ。


それも役割。


なら。


レオナは?


セラの呼吸が少し浅くなる。


考えたくない。


だが。


避けられない。


グレイウッド。


異常な発展。


既存の構造を壊す存在。


もし。


この世界が。


何かの“仕組み”で動いているなら。


レオナは。


それを乱す存在。


つまり。


“想定外”。


紙に書く。


“役割外”


その文字を見た瞬間。


背筋が冷える。


理解してしまった。


これは。


ただの異端ではない。


もっと根本的な。


“外”。


セラが顔を上げる。


天井を見る。


その先。


空。


神。


その存在が。


何を基準にしているのか。


少しだけ。


分かった気がする。


「……善悪じゃない」


ぽつりと。


言葉にする。


静かな部屋に響く。


「役割……」


確信に近い。


もし。


それが正しいなら。


神にとって。


重要なのは。


物語の進行。


役割の遂行。


善か悪かではない。


必要か不要か。


それだけ。


そして。


レオナは。


そのどちらでもない。


だから。


排除対象。


セラの手が震える。


理解したくなかった。


だが。


否定できない。


ゆっくりと立ち上がる。


部屋を出る。


廊下。


静か。


足音だけが響く。


向かう先は一つ。


レオナの部屋。


扉の前で止まる。


ノック。


「お嬢様」


中からすぐに返事。


「どうぞ」


変わらない声。


いつも通り。


セラは扉を開ける。


レオナは机に向かっている。


何かを書いている。


いつもの光景。


だが。


今は違う。


セラの中で。


認識が変わっている。


目の前の存在。


この人は。


ただの優秀な人間ではない。


もっと。


違う。


言葉が出る。


自然に。


「……お嬢様」


レオナが視線を向ける。


セラは一瞬迷う。


だが。


言う。


はっきりと。


「お嬢様は……普通じゃないです」


沈黙。


重くはない。


ただ。


静かに落ちる。


レオナは少しだけ首を傾ける。


「そう?」


本気で分かっていない。


セラが苦笑する。


「はい」


即答。


そして。


続ける。


「神が言ってる“役割”に……お嬢様は入ってません」


核心。


レオナの目がわずかに細くなる。


興味。


思考が動く。


「……外部変数、ね」


静かに。


納得するように。


完全ではない。


だが。


方向は見えた。


セラはそれを見て。


確信する。


この人は。


どこにも属さない。


だから。


どこにも縛られない。


それが。


どれだけ危険で。


どれだけ強いか。


理解してしまう。


その時。


遠く。


王国。


神殿。


巨大な魔法陣が輝く。


夜を裂く光。


儀式。


最終手段。


祈り。


叫び。


すべてを込めて。


一つの存在を呼ぶ。


役割を持つ者。


この世界を正すための。


“正解”。


光が収束する。


空間が開く。


そして。


降りる。


新たな存在。


勇者。


グレイウッドとは別の場所で。


物語が。


もう一つ動き出す。


セラは窓の外を見る。


遠くの光。


それに気づく。


小さく呟く。


「……来ますね」


レオナも視線を向ける。


同じ方向へ。


そして。


静かに言う。


「ええ」


短く。


だが。


確信を持って。


次の役割が。


投入された。


それが何を意味するのか。


まだ分からない。


だが。


確実に。


状況は進む。


“物語”が。


動き始めている。

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