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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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69話 普通に防ぐ

グレイウッド。


中央広場。


光。


暴走。


空間を埋め尽くす神聖力。


触れれば終わる。


誰もがそう理解している。


だが。


その中心。


レオナの手が。


触れている。


リリアに。


正確には。


その周囲を覆う光に。


そして。


何も起きない。


爆発も。


反発も。


焼き尽くす現象も。


ない。


ただ。


止まっている。


静かに。


完全に。


時間が凍ったかのように。


リリアの瞳が揺れる。


理解が追いつかない。


神の力。


絶対のはずのそれが。


止められている。


“普通に”。


レオナは手を軽く動かす。


撫でるように。


光の流れをなぞる。


その瞬間。


変化。


暴れていた神聖力が。


整う。


流れが変わる。


荒れていたものが。


規則性を持ち始める。


まるで。


導かれるように。


「流量過多。制御経路が破綻してる」


レオナが言う。


淡々と。


まるで。


壊れた水道を見るかのように。


リリアの呼吸が止まる。


言っている意味が。


分かってしまう。


感覚的に。


確かに。


自分の中の力は。


流れすぎている。


溢れている。


だが。


それは。


神の力。


制御するものではない。


従うもの。


その常識が。


今。


目の前で否定されている。


レオナの指が。


さらに動く。


ほんのわずかに。


光の一部を。


“切り離す”。


ブツリと。


音はない。


だが。


確かに。


分断された。


その瞬間。


リリアの体が大きく揺れる。


「……っ!?」


声が漏れる。


神託の圧が一瞬だけ弱まる。


回路が断たれた。


そう理解する前に。


レオナは次の操作に入る。


「供給元と接続経路……ここね」


視線。


空間の一点。


何もない場所。


だが。


そこに。


“ある”。


目に見えない接続。


神とリリアを繋ぐ経路。


通常は。


触れられない。


認識すらできない。


だが。


レオナは違う。


観測する。


構造として。


現象として。


そして。


手を伸ばす。


空間へ。


掴む。


何もないはずの場所を。


だが。


確かに。


“掴んでいる”。


リリアの目が見開かれる。


感じる。


自分の中に流れ込んでいたものが。


捕まっている。


止められている。


「……うそ……」


かすれる声。


神託が激しく反発する。


『悪を討て』


命令が強まる。


供給を増やす。


押し流そうとする。


だが。


レオナは動かない。


微動だにしない。


ただ。


握っている。


その経路を。


完全に。


「圧はあるけど……構造は単純ね」


分析。


結論。


そして。


次の動作。


「なら、切れる」


断定。


レオナの指が閉じる。


わずかに。


その瞬間。


ブツン。


今度は。


誰にでも分かる。


“切れた”。


リリアの体から。


光が一気に崩れる。


供給が止まる。


暴走していた神聖力が。


一斉に。


消える。


静寂。


一瞬で訪れる。


さっきまでの圧が。


嘘のように。


消失する。


リリアの体が崩れる。


支えを失ったように。


力なく。


落ちる。


レオナがそのまま受け止める。


自然に。


何事もなかったかのように。


広場。


誰も動けない。


理解が追いつかない。


今。


何が起きたのか。


神の力。


それを。


技術で。


断ち切った。


そんなことが。


可能なのか。


レオナはリリアを支えたまま。


周囲を見る。


被害。


範囲。


再確認。


「……収束完了」


一言。


それだけ。


セラが呆然と立っている。


口が開いたまま。


「……今の、何を……」


問い。


だが。


レオナは簡単に答える。


「過剰供給の遮断」


それだけ。


特別なことではない。


そう言わんばかりに。


だが。


周囲にとっては。


常識の崩壊。


リリアがかすかに目を開ける。


光は消えている。


瞳に。


ようやく。


自分の意思が戻る。


震える声。


「……止めたの……?」


確認。


信じられない。


レオナは頷く。


「ええ」


短く。


当然のように。


リリアの瞳から涙がこぼれる。


安堵。


そして。


理解できない現実への恐怖。


神の命令が。


止められた。


それも。


力ではなく。


“理屈”で。


レオナはリリアを見下ろす。


静かに。


そして。


言う。


「奇跡も、現象よ」


はっきりと。


断言する。


神の力であっても。


例外ではない。


構造があり。


法則がある。


ならば。


対処できる。


それだけ。


リリアは言葉を失う。


否定できない。


今。


目の前で起きたことが。


すべてを証明している。


神の絶対性。


それが。


崩れた。


静寂が広場を包む。


混乱の後。


残るのは。


現実。


そして。


一つの事実。


この都市には。


神すら例外ではない存在がいる。


その認識が。


ゆっくりと。


広がっていく。


世界の前提が。


今。


書き換わった。

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