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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第65話 神託強制

グレイウッド。


中心区画。


空気が重い。


目に見えない圧。


人々が足を止める。


ざわめきが広がる。


「……何だ?」


誰かが呟く。


だが。


答えはない。


ただ一つ。


異常だけがある。


中心へ向かう通り。


白い光。


遠くからでも分かる。


強い。


異質。


近づくにつれて。


それは増していく。


そして。


その中心。


リリアが立っている。


動いている。


ゆっくりと。


だが。


止まらない。


周囲の空間が歪む。


魔力ではない。


それ以上の力。


神聖力。


溢れている。


制御されていない。


押さえ込まれていない。


ただ流れ出ている。


リリアの足元。


石畳が軋む。


ひびが入る。


力の圧で。


騎士たちは距離を取る。


これ以上は近づけない。


「……止められない」


一人が言う。


現実。


誰も手出しできない。


リリアの呼吸は静か。


乱れていない。


だが。


その状態が異常。


普通なら。


崩れる。


この力の量では。


耐えられない。


それでも。


立っている。


動いている。


理由は一つ。


“神託”。


それが。


強制している。


内側から。


体を。


意識を。


すべてを。


『悪を討て』


声が響く。


リリアの中で。


何度も。


何度も。


繰り返される。


止まらない。


弱まらない。


むしろ。


強まる。


命令が。


力を増幅させる。


比例して。


神聖力も膨れ上がる。


制御不能。


暴走。


リリアの指先がわずかに動く。


その瞬間。


光が弾ける。


衝撃。


空気が震える。


周囲の窓が割れる。


音が響く。


人々が悲鳴を上げる。


混乱。


広がる。


だが。


リリアは気にしない。


認識していない。


対象以外は。


すべて無視。


思考が削ぎ落とされている。


必要なものだけが残る。


“敵”。


それを討つ。


それだけ。


リリアが手を上げる。


無意識に。


光が集まる。


一点に。


凝縮。


濃く。


危険なほどに。


騎士が叫ぶ。


「やめてください!」


届かない。


声は。


意味を持たない。


リリアの瞳。


光だけがある。


意思はない。


命令のみ。


『悪を討て』


さらに強く。


押し込まれる。


限界を超えて。


リリアの体が軋む。


骨が。


筋肉が。


悲鳴を上げている。


だが。


止まらない。


止められない。


神託が。


許さない。


「……っ」


かすかな声。


一瞬だけ。


残っていた意識。


抵抗。


だが。


すぐに潰される。


光が爆発的に膨らむ。


制御を失う。


広がる。


暴発寸前。


周囲の空間が歪む。


熱。


圧力。


すべてが増幅する。


人々が逃げ出す。


悲鳴。


混乱。


広場が崩れる。


だが。


遅い。


すでに。


危険域。


このままでは。


都市の一角が吹き飛ぶ。


リリアは前を向く。


対象。


レオナ。


その方向。


攻撃が向けられる。


完全に。


照準が定まる。


その瞬間。


空気が変わる。


静かに。


だが。


確実に。


圧が“別のもの”に上書きされる。


リリアの光が揺れる。


わずかに。


不安定になる。


周囲の人間が気づく。


「……誰か来る」


気配。


強い。


だが。


重くない。


圧迫しない。


ただ。


“整っている”。


その存在が近づく。


一歩。


また一歩。


混乱の中でも。


その歩みは変わらない。


一定。


迷いなし。


そして。


視界に入る。


一人の少女。


レオナ。


いつもと変わらない。


平然。


状況を見ている。


分析している。


感情ではなく。


情報として。


リリアの暴走。


神聖力。


範囲。


影響。


すべてを。


一瞬で把握する。


そして。


結論。


「過剰ね」


小さく。


それだけ言う。


リリアの光が膨張する。


限界。


放たれる直前。


衝突は。


避けられない。


理想の都市と。


神の命令が。


真正面からぶつかる。


その瞬間が。


今。


訪れる。

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