表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/81

第63話 神託

グレイウッド。


中心区画へ続く通路。


リリアは歩く。


静かに。


だが。


確実に。


一歩ずつ。


心は揺れている。


先ほどの言葉。


「悪じゃない」


自分で言った。


はっきりと。


否定できない実感。


目で見た現実。


感じた空気。


すべてがそれを裏付けている。


この都市は。


善か悪かで言えば。


“善”に近い。


そう判断しかけていた。


その時。


ふと。


空気が変わる。


風が止まる。


音が消える。


人の声も。


足音も。


すべてが遠ざかる。


リリアの足が止まる。


異常。


直感が告げる。


騎士が周囲を見る。


「……何だ」


警戒。


だが。


何もない。


目に見える異変は。


ただ。


“感じる”。


圧。


見えない何か。


リリアの呼吸が乱れる。


わずかに。


心臓が強く打つ。


これは。


知っている。


何度も経験した。


神の気配。


だが。


今までとは違う。


強い。


そして。


重い。


リリアはその場に膝をつく。


反射的に。


抗えない。


騎士たちが驚く。


「聖女様!?」


だが。


触れられない。


触れてはいけない。


本能が止める。


リリアの視界が揺れる。


光。


白。


すべてが塗りつぶされる。


現実が遠のく。


その中で。


声が響く。


直接。


頭の中に。


言葉ではない。


だが。


意味は明確。


強制的に理解させられる。


『悪を討て』


短い。


絶対的な命令。


拒否はできない。


疑問も許されない。


ただ。


従うもの。


リリアの体が震える。


理解する。


対象。


この都市。


グレイウッド。


先ほど。


自分が“悪ではない”と判断した存在。


それを。


否定する命令。


思考が衝突する。


現実と。


神託が。


一致しない。


ありえない。


今まで。


そんなことはなかった。


神の言葉は絶対。


世界の真理。


それに従ってきた。


それで間違いはなかった。


だが。


今回は違う。


明確に。


矛盾している。


「……なぜ」


声が漏れる。


だが。


返答はない。


ただ。


再び。


同じ言葉。


より強く。


押し付けるように。


『悪を討て』


圧が増す。


思考が歪む。


拒否しようとする。


だが。


できない。


体が言うことを聞かない。


力が流れ込む。


内側に。


制御を超える量。


リリアの瞳が光る。


白く。


強く。


騎士たちが後ずさる。


「……まずい」


誰かが呟く。


空気が震える。


魔力。


いや。


それ以上。


神聖力。


暴走寸前。


リリアの意識が揺れる。


必死に抵抗する。


「違う……」


絞り出すように。


否定する。


自分の見たものを信じる。


だが。


神託は止まらない。


繰り返される。


容赦なく。


『悪を討て』


『悪を討て』


『悪を討て』


重なる。


重圧。


押し潰される。


思考が崩れる。


価値観が揺らぐ。


何が正しいのか。


分からなくなる。


リリアの手が震える。


地面を掴む。


必死に。


自分を保つために。


だが。


限界が近い。


神の命令。


絶対。


それに逆らうことは。


存在の否定。


リリアの呼吸が荒くなる。


視界が歪む。


そして。


ゆっくりと。


顔を上げる。


瞳。


光が宿る。


意思ではない。


命令による動き。


騎士たちが息を呑む。


「聖女様……?」


呼びかけ。


届かない。


リリアは立ち上がる。


ゆっくりと。


だが。


確実に。


その姿。


先ほどまでとは違う。


何かが。


変わっている。


内側から。


書き換えられるように。


リリアの視線が前を向く。


都市の奥。


中心。


そこにいる存在。


レオナ。


対象が定まる。


神託が。


示している。


リリアの唇が動く。


無意識に。


「……討つ」


小さく。


だが。


はっきりと。


その言葉。


騎士たちの背筋が凍る。


止めるべきか。


だが。


動けない。


圧が強すぎる。


近づけない。


リリアの周囲の空気が震える。


力が溢れる。


制御されていない。


危険。


極めて。


そして。


一歩。


踏み出す。


都市の中心へ。


その存在へ。


この瞬間。


均衡が崩れる。


理想と。


信仰が。


衝突する。


避けられない形で。


そして。


その衝突は。


この都市を巻き込み。


世界へと広がる。


その始まりが。


今。


ここにある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ