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境界異常観測録《Re:Genesis》  作者: マチフクとーる
File3 失楽園の少女

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呪われた子

 名取は過去を振り返る。


 祟り神より与えられしその邪悪な力は少年の人生を狂わせるには十分過ぎた代物であった。


 神の使い……神子……そんな生易しいものではない。


 邪眼を持ったあの日、少年は「呪われた子」と呼ばれるようになる。

 ――あの日から俺は《《常人》》として生きられなくなった。


 7年前の冬、当時中学生だった名取は流行りの感染症にかかってしまい、家の布団の中で療養していた。


 名取の出身は東北地方のとある辺境の人口が500人にも満たない小さな村であり、病院は無く、隣町へ片道1時間以上かけて移動する必要がある。風邪程度なら病院に頼らず治療するのだが感染症となると村中に広まると大変である事からあまりに症状が酷い場合にのみ隣町の病院に行く必要がある。


 そんな少年名取は病院で正式に感染症の診断を受けてから薬を貰い、村まで戻ってきた少年名取はただ布団の中で感染症と闘っていた。


 他の人間に感染うつしてしまうと大変なので見舞いも受けず、ただ横になって過ごす。体調は一向に回復せず、止まらぬ咳と高熱、吐き気に億劫になっていた。


 丁度その時期、村ではとある行事が控えていた。

 それは100年に一度、村には「五体様」と呼ばれる祟り神が村にやってきて、村の子供に呪いを振り撒き、呪われた子供は体の一部が変異し、一生の不幸が訪れるという呪いであった。

 その為、村では100年周期に村の山奥にある神社で神主から代々伝わる厄除けの加護を受ける儀式をする必要があった。

 しかしそれが重要視されていたのも昔の話。今の時代、そんな仕来しきたりも時代の流れと共に廃れていくものだ。科学の進歩によって非科学的なものは否定され、もはや現代にもなれば年明けの初詣くらいの認識となっていた。


 どこか村人達の間では「神様なんか居ない」と思いながら軽い厄除け程度に代々伝わる一種の「祭事」のようなものとして扱われていった。


 儀式の当日、勿論村人達は加護を受けに我が子を神社へと連れていき、儀式へと参加するのだが、病床に伏していた少年名取は儀式に参加することは無かった。


「母ちゃん、今日村の儀式なんだろ? 俺、行かなくていいのかな?」


「久代、病人のアンタが行ったら周りの子達に感染っちまうじゃないか。人様に迷惑はかけられないよ。お祓いなんて元気になってから行けばいいんだから。久代の仕事は1日でも早く元気になることでしょ?」


 少年名取は「それもそっか」と天井を見上げる。元より人口が少なく静かな村だが村人が儀式に出向いている事もあってか更に静けさを感じる家の中で、ゴホゴホと咳込みながら目を瞑る。


 頭が痛い……喉も痛い……吐き気がする……。

 感染症の症状は酷く辛かった。もはやこれが祟り神の呪いなのではないか思うほどに。

 眠れずに嘔吐を繰り返しては高熱にうなされてを繰り返す。

 そんな夜を過ごし、いつの間にか眠りについていた頃――



 ――ある夢を見た。



 気が付くと少年名取は山の中で一人たたずんでいた。

 それは村の子供達の間では川遊びや虫取りなど遊びの場としてよく使われる裏山。

 だが目の前に広がる見慣れた光景に感じる違和感、それは目の前に薄く霧がかかっている様に少し視界が悪かった。

 だがその奥に薄っすらと人影のようなものも見えた。


 少年名取はその人影に惹かれるようにその後を追いかけた。

 追いかけた先で見たのはその人影は村に住む小学校の子供だった。

 村は人口も少ないが故に大抵の人間の顔はお互いに知っている。

 当時中学生の名取でも小学生と遊んだり小学生時代に中学生と遊ぶ機会もよくあった。

 子供は少年名取の方へとゆっくりと振り返る。


 その両目は真っ黒になるまでグチャグチャに抉られ涙を流すように血が目の位置から流れている。


「アッ……アッ……助……ケデ……」


 ガクガクと口を震わせながら少年名取に助けを乞う子供の背後に大きな影がうっすらと浮かび上がる。

 やがてその姿を目撃した時、少年名取は声を失った。



 目の前に現れたのは大きな顔だった。



 無数の人間の頭部が一箇所に集まり塊となって1つの顔を形造り、まるで福笑いのように目や鼻、口の位置にバラバラな顔のパーツがついた奇妙な顔に後頭部から蟹のように手足が伸びていた。


「ワレ……ナンジ……メ……オロシ……ヒトリ……フタリ……」


 目の前の顔は鼻の位置にある口からブツブツと呟き後頭部の無数の手がゆっくりと少年名取を指差す。

 明らかにこの世のものとは思えない奇妙で恐ろしい姿に手足は震え、額からは冷や汗が滝のように流れ出す。あまりの恐怖に声も上げることもできず、ただ茫然自失ぼうぜんじしつに陥ってしまっていた。


 大きな顔が少しずつ少年名取に近づき、ゆっくりと手が名取少年に向かって伸びていく。

 そのまま抵抗もできず名取少年の顔を無数の手が包み込み、視界は真っ暗になった。


「うわぁぁぁぁぁ!!!」


 叫び声と共に名取少年が飛び起きると外はすっかり朝日が昇っており、雀がチュンチュンと鳴いているいつも通りの朝を迎えていた。


 悪夢による恐怖心に動悸と冷や汗が止まらない。呼吸も過呼吸気味になっており、気持ちを落ち着かせようと深呼吸をしていると勢いよく部屋の引き戸が開かれ、大慌ての母親が部屋に入ってきた。


「久代! どうかしたの!? 大丈夫!? アンタその汗……具合は? 辛かったら病院に行く?」


 どうやら母親は飛び起きた際の叫び声に驚いたようだ。

 冷や汗に塗れる名取少年の姿を見た母親は容態が悪化したと思ったのか酷く心配しているようだ。


 そこで自分が病人である事を思い出し、自身の体調を確認した時、不思議な事に気がついた。


「あれ? なんだか今日、調子がいい」


 それは昨晩まで高熱と吐き気に襲われていた時と違い、ほぼ健康体というまでに体調が回復していた。

 冷や汗をタオルで拭いて立ち上がり、鏡を確認すると分かる、名取少年の顔色は良好だった。


「母ちゃん、なんだか俺、元気になったみたい」


 すると「へ?」と不思議そうな顔をする母親、にわかに疑うような視線で名取少年の顔色を伺うとやはり健康そうな名取少年を見て嘘でないことを確認する。


「顔色も悪く無さそうだし、久代がそういうなら元気になったのかねぇ? でもアンタ元気になったのは良いけどお医者さんからもらった薬は一応飲むんだよ? あと体調が良さそうなら神社に厄払いしてもらいにいってきな、昨日行けなかったんだから」


 母親から薬を受け取り神社へと向かおうと家を出た少年名取は見渡す限り畑の村の道路を歩き、自然豊かな村の澄んだ空気を肌で感じる。畑仕事中やすれ違う村人達から心配されるも元気な姿でそれに応え、少年名取は悪夢の事などすっかり忘れていた。


 そんな中、夢に出てきた裏山の近くまで来た所で小学生の集団を見かける。

 小学生達は何やら不安そうな顔付きをしており、少年名取を見つけると子供達は駆け寄ってくる。


「あっ久代お兄ちゃん、病気は治ったの?」


「ああ、すっかり治ったよ。しかしどうした? お前達揃ってなんだか浮かない顔して」


「それが……カケルが見つからないんだ。さっきまで裏山で追いかけっこしてたんだけど……気付いたら居なくなっちゃって……」


「カケル、昨日の儀式の日は具合悪くして儀式に来てなかったしもしかして呪われたとか?」


 子供達の話を聞いていると、少年名取の脳内でフラッシュバックする昨晩の夢、裏山で怪物に目玉を抉り取られる子供の姿、カケルとはその夢に出てきた子供と顔と名前が一致していた。


 夢に見た状況、カケルと名取の共通点、村に伝わる「五体様」の伝承。

 名取は昨晩見た夢の内容がとても偶然に思えなくなり、焦りが一気に込み上げてきた。


(やっぱりおかしい……とてもただの夢に思えない……もし夢に見たあれが本当に起こるのだったら考えてる暇なんか無い……手遅れになる前に……!)


 少年名取は血相を変えて子供達にすぐに神社の神主を裏山へ連れてくるように言い、少年名取は裏山へと一目散に走り出した。

 夢に見た情報を頼りに散々見慣れた裏山の山道を駆け上がっていく。

 すると周りが段々と霧がかかったように視界が悪化していく。

 それは先程まで雲1つ無い晴れだった光景からは到底考えられないものであった。


 その時少年名取は確信に至る。


(やっぱりあの時見た夢はただの夢じゃない、ここから近いはずだ)


 霧が濃くなってきた時、近くから子供の泣き声のようなものが聞こえてきた。

 それがカケルのものだと確信した少年名取は即座に泣き声の元へと走る。


 そこで少年名取はカケルを見つけた。

 カケルは泣きながらその場で蹲っている。

 名取少年はすぐに声を掛けカケルを顔を確認した。


「カケル、大丈夫か! 俺だ! 久代だ! 助けに来たぞ、帰ろう!」


「ひっぐ……久代兄ちゃん? 助けに来てくれたの?」


 カケルの目は泣き腫らした跡こそあるもののしっかりとその目は2つ付いていた。

 少年名取はホッ胸をなで下ろし直ぐ様カケルと下山しようとカケルの手を取ろうとしたその時――



 ゾッと凍りつくように背筋を走る怖気。

 徐々に近づく圧倒的な恐怖、今振り返って《《それ》》を見てしまうと恐らく固まって動けなくなってしまう。

 少年名取にはその姿を想像するのは容易だった。

 ゆっくりと近づく《《それ》》は恐らく……いや、間違いなく夢に見た《《ヤツ》》である。


「カケル、お前は先に下山しろ。絶対に振り返るな、ただひたすらに真っすぐに全力で逃げるんだ。いいな?」


 少年名取はカケルにそう言うとカケルは「うん」と頷き、それを見た少年名取は「さぁ行け!」とカケルを後押しし下山させた。


 霧のかかる山道を一直線に下山していくカケルを見送った少年名取は後ろを振り返りついに《《ヤツ》》と対面する。


 それは夢に見たその姿と全く同じ、幾つもの顔が塊となって1つの顔を形造り、福笑いのように顔パーツがバラバラに付いており後頭部からは蟹のように無数の手足が伸び蠢いている。


 そう、ヤツこそが「五体様」だ。


 夢の中ではあまりの恐怖に何も出来なかったが一度目にしている今回は違う、恐怖心は持ちながらもその姿に臆する事なく対面する。


「ワレ……ナンジ……メ……オロシ……ヒトリ……フタリ……」


 夢の中で聞いたような言葉を五体様は呟くが五体様はその後ピタリと止まり、両頬にある目をギョロギョロと回しながら最後は両目を少年名取に向けて問いかけた。


「ワレ……ミコ……フタリ……ナニユエ……ナンジ……ヒトリ……?」


「お前に教えてやる義理は無い」


 少年名取は冷静に五体様に悟られないようゆっくりと後退りながら問いに答える。

 少しずつ距離を離し、一気に逃げ出すタイミングを伺う。

 五体様は依然として何かを探すように目をギョロギョロと動かしている。


 ジリジリと後退し五体様から10m程度離れた辺りから少年名取は意を決し振り返り一気に走り出し霧の中を疾走した。


 全く見えない程の濃霧の中を駆け抜け裏山からの脱出を目指して全力で走る。

 そして霧を切り抜け出た先は――


 ――五体様の目の前であった。


 一瞬目の前で起きたことが理解できず固まりそうになるが考えるよりも先に来た道を引き返しひたすらに走る。

 いち早く神社へ、神主の元へ、ただそれだけを考え霧の中を走り抜ける。


 しかし走り抜けた先は五体様の目の前であった。


 何度逃げても行き着く先は五体様の前。

 少年名取は少しずつ絶望と恐怖に蝕まれ、足取りが重くなっていく。

 やがて霧の範囲が狭くなっていき、五体様との距離も縮まっていく。


 すると五体様の無数の腕が少年名取に向かって伸び始め、少年名取は捕らえられてしまう。


「ミコ……フタリ……メ……フタツ……オロシ……ナンジ……ヒトリ……メ……フタツ……オロシ……」


 五体様はそう呟くと1本の手が伸び少年名取の顔を掴み固定し、もう1本の橙色に光る手が少年名取の目に向かい伸びていく。


「や、やめ……誰か……助け」


 少年名取は無数の腕に拘束され、抵抗する事も叶わず……五体様の光る手の指先が少年名取の両目へと入り込んでいく。


 ズズズ……グチュッグチュグチュ……


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」


 2本の指が少年名取の両目をグリグリと抉り始め、抉る度に目から血飛沫が吹き出し悲痛な叫び声が響き渡る。

 両目からほとばしる激痛に意識が飛びそうになる……いや意識をいち早く手放したかったが願えば願う程、意識は鮮明に保たれ激痛に晒される。

 五体様によって目玉を抉られ続け、たった数分間の出来事がまるで永遠のようにも感じ、生死問わず早くこの痛みから開放されたかった。


 ようやく目から指が離され、少年名取は血にまみれた顔面に目があった場所がどす黒く大穴が空き、人形のように力無くぐったりしている。

 そんな黒澄んだ穴の中心には微かに橙色の光が灯っていた。


 だがそれだけでは終わらなかった。


「フタツ……メ……オロシ……ナンジ……フタツメ……オロシ……」


 五体様は再び項垂れる少年名取の顔を掴むと今度は紫色に光る手が近づく。


「誰カ……助……ケデ……」


 抵抗する力も無く名取の橙色の光が灯る目があった穴に向けて紫色の手が伸びていき、指先から穴の中へと入っていく。


「ウ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛」


 グチャグチャと音を立て、血飛沫を撒き散らしながら五体様に目を抉られ続け、殺されることもなく生き地獄のような時間が再び訪れる。


 やがて悲鳴すらもあげる力も残らずピクピクと身体を痙攣させる事しか出来なかった。


 一度目と同じ様に暫くの間抉られた後、少年名取は開放され、死体のように地面に仰向けで倒れる。


「ダレガ……ゴロジデ……」


 死を懇願する少年名取を余所に五体様はゆっくりと霧の奥へと消えていき最後にある言葉を残していった。


「ミコ……ヒトリ……オロシ……アト……ヨンカイ……マタ……ヒャクネン……」


 五体様が去り霧が晴れた時、少年名取の意識も霧とともに消えていった……。




◇ ◆ ◇ ◆




 ――んな!? 久代が――っていうんですか!? ――



 ――に――からで――承は――世界を――念ですが――命――めてください――



(あれ? 俺……生きてる……? 上手く聞こえない……一体何を話しているんだ……? 母ちゃん、大きな声で何言ってるんだよ? それともう一人いるのは……)


 ぼやける視界が少しずつ鮮明になっていき、聴覚も正常に戻り始める。

 視界がハッキリして分かったのは、神棚のようなものが見え、恐らく自分は神社に運ばれたのだと言うことが分かった。


 だが気になるのはそこではない。

 問題は耳を突くような怒号を母親が神主に向かって飛ばしていることと神主と母親が複数人いるかのようにブレてよく視えないことだ。

 神主に怒りをぶつける母親の目には涙が流れているのだが、名取の目には上手く映らない。その上神主と母親の体内では、一つの枝分かれした線のようなものが血液の様に常に循環している様な不思議なものが見えた。

 会話の内容はまだ聴覚が完全に機能しておらず上手く聞き取れないが何やら誰かの命がどうやらというような内容であった。


「母ちゃん、一体何を怒ってんだよ?」


 少年名取の声に気が付いた神主と母親は名取の顔を見ると、安堵の表情を一切見せるかと思いきやそんな事は一切無く、神主は残念そうな面持ちで下を向き、母親は絶望した様な表情で涙を流しながらみるみるうちに顔を青ざめさせていた。


 神主と母親の目に映っていた少年名取の瞳は、普段通りの正常な瞳と橙色、紫色のそれぞれ不気味に光る瞳が両目の内にそれぞれ3つずつ持っていた。


 その日、その瞬間をもって名取久代は小さな村の少年として生きる事が出来なくなってしまい、「呪われた子」として生涯生きていく事となってしまう。

ミニコーナー企画!


第2回! 「パラアカ本音トーーク!」


ここはとある1室……そこでは生者も死者も関係なく奇妙な運命の導きによっていざなわれる。


そんな空間でこの世界を生きる、あるいは生きた者達が交わされる本音とは……


あのぉ……ココどこッスか……?


いつの間にか眠っていたらしく目が覚めるとどこかの教室で机に伏した状態で目が覚め、イマイチ状況が飲み込めないでいる一人の女性、志那内加奈子しなないかなこ


一人戸惑っているとガラガラと教室のドアが開き、そこから一人の女子高生くらいの若い女性が入ってくる。


ニ人はお互いの顔を見合うと同時に声を上げた。


ギャァァァ!! ゾンビィィィ!?


お互いがお互いを指差し大声を上げるが、おかしいと思ったのかお互いをまじまじと見合いながら加奈子が女性に問いかけた。


あの……もしかしてゾンビになって死んだ自覚とかって……ある?


その問いに女性はこくりと頷く。

すると加奈子はなぁ〜んだと席を立ち、机と机を対面になるようにくっつけ、座席に座る。


だったらさ、ちょっと話そうよ。ホラ、あそこの黒板にも書いてあるしさ?


加奈子が指差す先には黒板があり、そこには大きく「互いの共通点を見つけ本音で話せ」と書いてあった。


女性はそれを見るとそっかぁとさっさと席についた。


あの……共通点ってその顔を見る限り渋谷の事件に関係してますよね?


そうだね。恐らくそうだとは思うけど名前は? 私、志那内加奈子。加奈子でいいよ!


私は玉井優子たまいゆうこ、友達からはユッコって呼ばれてました。


ユッコ! 可愛いじゃん! よろしくねユッコちゃん!


うん、よろしく加奈子ちゃん!

ところで加奈子ちゃんは渋谷で死んじゃったのかな? 私はゾンビウィルスに感染しちゃって死んじゃったんだけど。


あぁ〜……まぁ……死んだと言えば死んだのかな? まぁ色んな意味で死んだって感じかな……?


そうなんだ。加奈子ちゃんは渋谷ではどうだったの?


そりゃあハリウッド映画顔負けのアクション展開で渋谷の犯人を追い詰めたり相棒を逃がすための涙の別れだったりよ? 


何それカッコいい! 私なんて逃げてたら普通に咬まれちゃった。でも友達がスッゴイ優しい子でね? 死ぬギリギリまで「諦めないで」って励ましてくれたんだよ? 最後は黒い服の銃を持った人にゾンビになる前に殺してもらったんだけど……。


ユッコちゃんの友達スッゴイ良い子じゃん! まるで相棒そっくりだな〜。あとその黒い奴、私も知ってる気がするな……?


加奈子ちゃん、その相棒の子ってさ? もしかして金髪で長い髪で運動神経が良かったりする?


うん、そうだけど……いや待てよ? もしかしてユッコちゃんのお友達って……「荒谷杏奈あらたにあんなって名前だったりしない?


……うん。


やっぱり! なんだかそんな気がしてたよ!

アンちゃんってホンっトあの子良い子でさ! なのに心はちょっと脆いからなんだか放っておけないんだよね!


そうそう! 分かる〜! 学校でもクールな雰囲気出してるけど案外そういう訳でも無くてさ! 私が構ってしたら満更でも無さそうに構ってくれるし意外とあの子涙脆かったりさ? 可愛いところいっぱいあるんだよね〜!


アンちゃん学校ではそんな感じなの? ヤダ可愛い〜♡ アンちゃんってそれなのに運動神経良いし私がピンチになると必死になって助けようとしたり勇敢な一面もあるよね〜。


そうなの! 渋谷でも杏奈が居なかったら私絶対に怖い思いをしたまま死んでた。でも杏奈が居たから最期の死ぬ瞬間まで幸せだったんだ!


それ私も同じ! いろいろ走馬灯みたいなの頭の中グルグルしてたけど何故かアンちゃんが浮かび上がってきたんだよね〜!


そうそう! 他にも――


そうして本音トーク……もとい荒谷杏奈トークはその後も長く続き、途中で出口の扉が開いている事にも気付かず暫く続いたそう。


トークも落ち着き、加奈子が出口に向かう際、振り返ってユッコと別れの言葉を交わす。


ありがとうね、ユッコちゃん! おしゃべり沢山できて楽しかった! また今回みたいな機会があったらアンちゃんの事もっと教えてよ!


うん、ありがとう加奈子ちゃん! 次はアンちゃんの話もそうだけど加奈子の事ももっと知りたいな? 次も会えるよね? その時はもっといっぱいおしゃべりしよう! 約束だよ!


うん! 約束!


こうして志那内加奈子と玉井優子、共に荒谷杏奈を通じて深まった仲は生死問わず交わる空間によって実現された死人同士? の会合を終え、ふと加奈子は思うのだった。


ユッコちゃん、きっとまた会えるよね。それにアンちゃんは元気にしてるかな? フフっ♪ なんだか楽しみが増えちゃったなぁ……。

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