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銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第三章「銀河帝国の逆襲」

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閑話休題1「ユリコとアスカ様の異世界海浜リゾートなう」①

 ユリコ帰還の少し前。

 惑星アスカ……ルペハマ近郊海浜地帯にて


「うぉおおおっ! アスカちゃん! 海、海だよ! 海っ! おおおおおおおっ! うーみーっ!」


 はっちゃけ気味のハイテンションで飛び上がりながら絶叫する長く伸ばした緑髪の幼い少女……としか言いようない人物がそこにいた。


 なお、そのとなりには同じくらいの背丈で、やはり緑色の髪のツインテールの似たような顔立ちの少女がげんなりと疲れたような顔をしながら、一歩下がったところで、その声に合わせるように「うみだー」等と感情の籠もっていない声をあげながら、ヘロヘローと腕を掲げていた。

 

 ……ユリコとアスカの二人だった。

 ちなみに、ユリコの身体は神樹様が特別に作ってくれたヴィルデフラウ体ではあったのだが。

 

 ユリコに合わせた特注なら時間もかかるが、アスカの分身体ならアスカとお揃いになってしまうが、すぐに出来るという事で、ユリコに選択の提案がなされたのだが。


 ユリコは一時滞在のつもりであったし、後者で問題ないと言う事で、二つ返事で了解してしまい……めでたく、アスカ二号の爆誕となってしまったのだ。


 別に、アスカが二人に増えたからと言って、なにか不都合があった訳ではなく、アスカですら頭が上がらない銀河帝国の重鎮と言う事で紹介され、他の者達も相応の敬意とユリコの独特の人懐っこさにほだされて、すっかりなじんでしまっていたのだが……。


 当然ながら、この惑星を楽しむ気満々のユリコにアスカは盛大に振り回され、その底の見えないバイタリティでの二四時間体制でのハイテンションなはしゃぎっぷりに、流石に心身両面での疲労は隠せないようで、この有様だった。


 そして、二人はこの一週間ほどで戦後処理と、飛行船を使った各地の視察の旅を行い、その最終目的地……ルペハマ港に隣接するタラスタ大海浜と呼ばれる広大な砂浜にやってきていたのだった。


 ……照りつける太陽。

 青く清浄なる海……熱く焼けた白い砂浜。

 果てしない水平線。


 21世紀の地球の海浜リゾート地のような光景が二人の前に広がっていた。


「う、うむ、確かに海であるな! いやはや、まずは海との連絡線をと思っていたが。ようやっとここまで来れたか……。なんとも感慨深いな……! それにしても天然の海か……あれが水平線! 実物を見るとこの惑星が丸いのだと実感出来るな」


「そうだよ! これが海だよ! 海っ! そして天然の砂浜に、青い海! はっ! もしかしたら、伝説級のスーパーグルメ……生魚介類のお刺身とかもあったりする? なんか、どこからともなく、香ばしいいい匂いとかもするしっ! ううっ! なんだか、よだれとおなかの虫がだねーっ!」


 こちらの世界での身体を手に入れて以来、ユリコは終始こんな調子のハイテンションではしゃぎっぱなしだった。


 海浜リゾートくらいならば、惑星エスクロンには、観光用の人工浜辺があるし、アスカ程の身分であれば、いつでも最高級の接待を受けることが出来た。

 

 その辺りは、ユリコも同様のはずで、かつて惑星エスクロンでの休暇の際に最高レベルの接待を受けたという記録もあって、海に来るのも初めてではないはずなのだが。


 ユリコにとっては、この世界の自然は全て作り物ではない本物と言う事で、まるで別格ということらしかった。


 もちろん、そこはアスカも認めるところであったが。

 いい加減、疲れてきているのも事実であり、ユリコの底抜けのバイタリティと、飽くなき探究心を目にしたことで、曲がりなりにもクローン体にも関わらず、その差は埋めようがない……そんな事を思ったりもしていた。


「なんと言うか、海に来るなり食べ物の話とは、ユリコ殿は食いしん坊なのであるなぁ。だが、確かにわたしもエスクロンの海と砂浜を見たことあるのだが……ここまで美しくはなかったな。もちろん、エスクロンの海が駄目だったのではなく、あれはあくまで作り物だったのだな……と」


 なお、惑星エスクロンは潮汐の激しさでも有名で、そんな環境では自然の浜辺もあるにはあるのだが。

 

 年に数回だけ、盛大に潮が引いた結果顔を出す砂浜が数か所あった程度で、基本的に浮島に人工海砂を積み上げて、砂浜っぽく見えるようにした人工海浜であり、アスカの言うことはもっともな話だった。


「うんうんっ! 解るっ! アスカちゃん、本来……大自然ってのは手加減無用なのよ。アレ見て! すっごい波……アレは普通に殺しに来てるねぇ……」


 そう言って、ユリコが指差す先には2m近くの高さとなって、砕け散る大波と、その波に追われるように一気に浜に上陸した小舟が見えていた。


 なお、この海浜地帯は砂浜になってはいるのだが、波打ち際は急深な地形となっており、波も荒く遊泳などには適さないのだが……。


 小型の船の上陸地点としては悪くなく、砂が撹拌されることで、普段は海の底に潜っているような甲殻類や微生物が波に揉まれて波間を漂っていたりで、餌が多いことで魚も多く集まるようになっていることで、優良な漁場でもあり、もっぱら小舟による地引網漁が盛んに行われていた。


 ちょうど、早朝から海に出ていた漁民たちが帰還する時間帯のようで、それまで沖にいた5mから10m程度の小舟が浜辺へ続々と上陸し、それぞれの船を陸に引き上げて、網を回収しつつ、本日の獲物を浜に並べながら、選別を始めているようだった。

 

 彼らは一様に上半身裸で、日に焼けた赤銅色の肌と鍛えられた肉体を持つ荒くれ者揃いで海賊と言われても納得できる……見た目については、そんな調子だった。

 

 そんな荒くれ者たちがドヤドヤと行き交う中、海に向かって並んで突っ立っている幼女ニ名……そんなアスカとユリコは場違い感いっぱいなのだったが。


 二人共、そんな事に気後れするようなタチではなく、揃ってこの惑星の天然の海を堪能しているようだった。


「……おおう、飛沫がここまで飛んできたぞ。それに心なしか空気が塩っ辛いような……」


「そ、そだねっ! んっと、念のために成分分析するね。えっと……H2O……水がおよそ95%……塩分5%。塩分は8割が塩化ナトリウム、次点が塩化マグネシウム……その他、何がなんだかわかんないくらい多種多用なミネラル分を含有……。おおおっ! 地球の海とほとんど同じ組成だってさ! ってことはわたし達は地球の海と限りなく同じものを……っ! ぶわっ!」


 ちょうど跳ね上がった大きめの飛沫がユリコの顔を直撃する。


 もっとも、二人共服装はヴィルデフラウの流儀に合わせて、露出度の高いビキニ水着のような服装で、多少濡れても問題にはならず、アスカも同じように飛沫をかぶっているのだが、まるで気にしていないようだった。


 どうもこのヴィルデフラウの体に馴染むと、肌の露出についてもだが、体が濡れる事もまるで気にならなくなるらしく、そこはユリコも同様のようだった。


「なんと、それは本当か! 惑星の海といえば、極端に濃いか、海洋惑星のようにほぼ純水かの両極端なのだが……。地球の海とほぼ同じ組成と言うのは凄いな!」


 本来、この惑星の海の多くは、亜硫酸ガスが多めに溶け込んだ死の海と言って良い海ばかりだったのだが……。

 

 神樹様の植物による惑星改造作用は海にまで及んでおり、亜硫酸ガスの分解吸収を行い無害化する海藻類が凄まじい勢いで繁殖することで、着々と海洋浄化が行われており、海洋汚染が進む前の地球の海に匹敵する豊かな海洋環境が形作られつつあったのだ。


 なお、塩分濃度も3-5%と地球の海と同様の組成となっており、その点についても理想的と言えたのだが。


 ヴィルデフラウ文明の惑星改造は、こんな風に海のある惑星では海水組成までも自分達に都合のいいように改良するものであり、ヴィルデフラウの播種船の落着した惑星の海については、概ね同じような塩分濃度で落ち着く。


 当然ながら、惑星固有の生態系などは文字通り蹂躙されるのだが、ヴィルデフラウ文明には、環境保護の概念などないので、当然の話ではあった。

  

「そうだ! アスカちゃん……あの波とおっかけっこしてみない? どっちがより深追いできるか勝負!」


 ……ジリジリと波打ち際に近づきながら、そんな提案をするユリコだったが、アスカも難しい顔をしつつ、たしなめる。


「いや、見たところ、浅いのは手前だけで急激に深くなっているようだから、さすがに波に飲まれたら、危険だと思うぞ。まぁ、この身体なら別に波に飲まれて海に沈んだ所で、死にはせんだろうが、あの波では陸に戻ってくるのもそれなりに苦労すると思うのでな」


 なお、ユリコは基本的に泳げない。 

 もちろん、水中活動の訓練も受けてはいるのだが。


 ユリコのような強化人間は、真空中でも活動できるようになっているので、呼吸の心配がいらないと言うだけで、強化人間はそもそも水に浮かぶ事を想定しておらず、水中ではウォータージェットパックのような水中移動装備の上でと言う前提での行動となるし、水の上に浮かぶとなるとフローター装備が必須だった……。


 ましてや、魚のように自力で水中泳ぐとなると、浮力調整機構付きの浮き袋が必要となる。


 要するに戦闘用=重量級ということで、基本的に浮かばない。

 むしろ、海底を歩いたほうが早いと言われるほどには、水中活動には向いていなかった。

 

 もっともヴィルデフラウの身体は植物由来の真水でも簡単に浮くほどには軽いもので、別にそこまで心配はいらないのだが。


 ユリコ自身は、宇宙遊泳ができるんだから、水中遊泳も楽勝とかお気楽に考えているようだった。


 要するに、わかってない。


 なお、アスカに至ってはそんな水中行動訓練の機会があった訳もなく、知識として人間は水の中では溺れるということを理解しているだけであったのだが。


 ドパーンと豪快に砕ける波を見て、その危険性を理解できる程度には危機管理と言うものを解っていたのだ。


 アスカ様、実はこう見えて、石橋叩きの性分なのだ。

今回から、しばらく描き下ろし外伝編です。

時系列はユリコ帰還前。


惑星アスカでのユリコ滞在中のドタバタ騒ぎを描く、短編です。

まぁ、10話は行かないと思います。たぶん。


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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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