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銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第三章「銀河帝国の逆襲」

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第四十七話「その星の名は」⑥

「そうですね。私もその可能性は考えていましたが……。現状地球の上陸調査は、あまり現実的ではないようですし、「アースガード」より提示された最新の地球の記録情報では、それらしきものは確認出来ていないですね。もっとも「アースガード」が情報を隠蔽していたり、嘘をついているとも限らないので、そこはなんとも言えないですが……そもそも、こんな「アースガード」から情報を引き出すなんて、よく出来ましたね。「アースガード」は人類に対しいかなる交渉もしないと宣言していたのに……」


「「アースガード」と「エリダヌス」は旧知の仲らしいから、その線で情報提供をお願いしたんだよ。だからこそ「アースガード」の提示した地球の情報に嘘偽りはないと思うよ。基本的にAI同士は嘘をつけないからね。もっとも、アースガードも生命の樹の捜索に協力してくれた訳じゃなくて、地球の最新情報をよこしてくれたってだけだから、当然ながら抜けはあると思うけどね」


「……直接、現地での上陸調査が許可されれば、私であれば、その存在を衛星軌道上から目視するだけでも知覚出来る思うのですが……。結局、上陸許可どころか、地球の視察許可すら降りなかったようですからね」


「すまないね。地球上陸調査については、何人たりとも例外は認めないから却下ってことで、例え銀河帝国皇帝たる僕であってもそこは同様ってのが「アースガード」からの公式解答なんだ。まぁ……「アースガード」が硬直的な姿勢なのは概ね、地球崇拝者達のせいなんだけどね……」


「地球崇拝者……要するに地球教団ですか……。帝国にも幾度となくテロを仕掛けてきた事で、なんども本拠地を消し飛ばして、信者達も徹底して排除してきたようなのですが……。いつの間にか復活を遂げる……彼らは何故、ああもしぶといのでしょうね」


 地球教団……反帝国テロリスト団体の中でも、最も狂信的で過激な宗教団体だった。


 彼らの主張は一貫しており、人類は地球をないがしろせずに、聖地として崇めるべきだと……ここまでは割と平和的なのだが。

 

 この銀河は、地球人類の末裔によってこそ、統治されるべきで、地球を誰も住めない星にした悪しき人類統合体の末裔たる銀河帝国の支配など、断じて認めない……そんな風に主張していた。


 今の時代、銀河帝国が21世紀末に銀河連合より先行する形で、エーテル空間へ進出した反地球勢力……人類統合体の末裔でありことは、帝国自身の情報公開により、帝国関係者以外も知ることとなったのだが。

 

 それは、帝国自身がその事を公開した所で、今の銀河帝国に対抗したり、ケチを付けられるような勢力は一切なく「だから、どうした」の一言で片付けられると判断したからだった。


 もっとも、没落した銀河連合諸国の者達はそんな声明に歯噛みしつつ、沈黙せざるを得なくとも、地球教団のようなテロリストは別であり、むしろ一層の反発を強めており、帝国は水面下でこの手のテロリストたちと年中無休での戦いをくりひろげていた。

 

 その辺りの兼ね合いで、帝国は同じく地球教団との攻防を繰り広げているアースガードについては、むしろ支援する側でもあり、地球教団については、銀河連合諸国の者達は、正式な宗教団体と認める国もあったのだが……。

 

 帝国は、宗教団体と称するただのテロリスト団体だと名指しで批判、弾圧を繰り返し、過去に幾度となく地球教団の本拠地を探し出しては粉砕し、その度に信者達を一人残らず虐殺すると言う徹底的な対処を行っており、盛大に恨みを買っていた。


 元々、帝国は数多くのテロリスト団体や国内の反乱分子のような非対称戦を幾度となく経験していることで、テロリスト対策は徹底しており、死んだテロリストだけが良いテロリスト……等と言う帝国治安維持関係者の標語があるほどで、テロリスト認定された時点で、人間として扱われなくなる……その程度には過酷な徹底した対応を続けていたのだ。


 そして、地球教団やブルーアースのような地球至上主義テロリスト達は、自分達を地球に一歩たりとも近づけようとしないアースガードも猛烈に敵視しており、自爆特攻船によるエーテル空間の太陽系防衛艦隊や太陽系ゲートへのテロ攻撃は日常茶飯事であり、アースガードも、昔は観光や調査目的での太陽系への立ち入りを許可していたのだが……今では、何人たりとも立ち入りを禁ずると断言し、事実誰一人として立ち入らせていなかったのだ。


 むしろ、情報提供に応じてくれただけ、協力的と言え、ゼロ皇帝もあまり無理を言える立場でもなく、素直に引き下がったのだった。


「彼らは、地球文明の敵……人類統合体の末裔たる僕らがこの銀河を支配していると言う現実を認めたくないのさ。そして、地球を聖地として崇める地球教は、地球が存在する限り……決して無くならない。何度も本拠地を潰しても、何処からともなくその思想を受け継ぐ連中が現れて、新たに地球教団を名乗る……その繰り返しなんだよ。連中との戦いもなかなか終わりそうもない。まぁ、僕らとしては地球とか、心底どうでもいいんで、いい迷惑な話なんだけどねぇ」


 そのどうでもいいと言う態度すらも気に食わないらしいので、帝国と地球教団はどうやっても相容れないと言っても過言ではない。


 歴代皇帝達の間でも、いっそ地球なんて木端微塵に爆破してしまえば、半端に未練を持つ連中も居なくなるから、やってしまおうか……等と言う物騒な議論がなされたこともあったくらいで、地球の存在と言うのは、帝国にとっては面倒くさいだけのまさに厄ネタでもあったのだ。


「……そうなると、実力で「アースガード」を排除して、強引に上陸調査する……。これは、論外と言えますね……」


「そうだねぇ……。この上僕らが太陽系を接収なんてやっちゃったら、帝国各地でテロリスト相手の泥沼の戦いが始まりそうだ。何より、さすがに外聞が悪すぎて、今の時点でやるような事じゃないよ」


「確かに太陽系防衛艦隊も軽く数万隻ととんでもない数がいる以上、戦っても少々分が悪い上に、結局、痕跡が見つかるとかその程度の可能性が高いですからね。本音を言うと、学術的な興味はあるんですが、それを戦争の理由とするのは、さすがに問題あり……ですね」


「そう言うことさ……戦争をするにしても、それは常に正しい戦争であるべきだ。でも、地球人類がヴィルデフラウ文明の派生文明って仮定すると、確かに敵対どころか、お仲間みたいなものだよね」


「ええ、帝国傘下の地球外惑星文明も似たような傾向があり、ヴィルデフラウ文明は銀河系のかなり多くの惑星文明の誕生に関わっている可能性が高く、未発見ながら、その派生惑星文明もかなりの数に及ぶのではないかと予想しています」


 現時点で、帝国が発見し交流を持っている地球外惑星文明は、すでに名前の出てきたトラバーンとヴィルアースを入れて、7つほどの惑星文明と接触し、帝国はその全てと同盟と言う形で傘下においていた。


 トラバーンのように、水棲生物から進化した知的生命体が代表種族となっている惑星もあれば、猫に酷似した猫型知的生命体が住む砂の惑星もあり、それらはどこもかしこも個性に溢れる惑星文明だったのだが。


 どの惑星も何故か、酸素濃度は20ー25%と地球環境に酷似していて、その植生についてもいずれも炭素系植物で、形状や遺伝的にも地球原産種と似通っており、始めは収斂進化や偶然と考えられていたのだが。


 各惑星から持ち帰られた植物サンプルや土壌サンプルについて、ヴィルゼットが詳細に分析した結果、いずれの惑星も明らかに、過去に環境調整を受けていた可能性が高く、地球同様、原住民の伝承などで巨大樹の存在に触れられているケースが数多くあったのだ。


 もちろん、それらの惑星については、過去に衛星軌道上からの外観調査や、現地調査なども行われており、生命の樹やそれに類するものの存在はいずれも確認されていないのだが。


 ヴィルゼットは、惑星アスカと言う生命の樹が現存する実例から、自らの仮説……地球人類を含め、数多くの知的生命体文明がヴィルデフラウ文明の派生文明であると確信を得るに至っていた。


「ふむ、人類は先史文明たる帰還者の系譜に連なる文明……木星にエーテル空間ゲートが存在していた事から、そう言う見方が多かったのだけど、実際はアレとは異質の文明……ヴィルデフラウ文明の系譜の可能性が高いということか」


「はい、地球人類の末裔としては、自分達が広域星間文明ヴィルデフラウ文明の枝葉と言える派生文明だと言うのは、受け入れがたい話かもしれませんが……。私なりに調査した結果、そう言う結論に達しています」


「いや、ごもっともな話だよ。地球の自然環境も地球人類文明も、まったくのゼロの原始惑星から発生したにしては、明らかに色々すっ飛ばしてるし、地球外惑星で発見された植物と、地球原産植物の共通性とかも、割りと昔から言われてたんだけど……。収斂進化とか言って無理やり納得してたんだよね」


「ああ、あれですよね? ユグドラシル仮説と呼ばれる学説……300年前も、原生植物があるような惑星の植生が地球原産植物と何故かそっくりって話はあちこちで聞く話でしたよ」


「まぁ……植物達の大本が存在するんじゃないかって説は、古代地球人の集合無意識として、巨大樹の存在が常にあったと言う仮説と並んで、昔から言われてた話だからね。地球の文明にしたって、元を辿れば、地球外星間文明の派生文明って可能性は十分ありでしょ。もっとも、全ては地球から始まり、他の星間文明は滅びているって事にしたい地球至上主義者達は発狂するかもしれないけど、少なくとも僕はそこは気にすることじゃないって思ってるよ」


「そうですね……。そう言う仮定の上でなら帝国傘下の近隣星系でいい感じの環境の惑星に限って、現地に行くと大抵見たことあるような植物があって、惑星文明が存在していたと言う事実にも説明が付きますね」


 帝国の非接続系近隣星系調査の結果は、そう言う結果だったのだ。


 帝国は100年ほど前から、亜光速航法でなんとか行き来できる10光年ほどまでの範囲に限定して、遠征調査隊を送り、その数はおよそ100箇所ほどにおよんだのだが。

 

 その大半は事故を起こして失敗したり、何とかたどり着けたものの役に立たない惑星しか存在せず、無駄足に終わったりと、散々な結果だったのだが。


 現時点で、惑星文明が確認された7つの惑星は、その中でも事前の超長距離光学調査でも優良環境惑星の可能性高いといずれも有力視されており、帝国関係者も相応の期待をしていたのだが。

 

 ……その尽くに先客がいた。

 そんな喜んで良いのか、嘆いて良いのか解らない結果となり、さりとて放置もできないと言う事で、半ば強引に惑星統一国家を作らせると言う手法で、傘下星系としていったのだ。


「まぁ、そう言う事だね。実際、ヴィルデフラウの生命の樹については、今現在、宇宙を当て所もなく彷徨ってる個体や過去に落着した痕跡がないか……かなり細かく洗い出しを進めてるところだからね。もしも、発見できたら、問答無用で保護するか、適当な惑星を提供した上で喜んで、我が帝国に迎え入れる方針だよ。むしろ、大歓迎でしょ……そんなの」


「ありがとうございます。ただ、ラース文明については、いかがされる方針でしょうか? あれは間違いなく敵対文明と言えるでしょうからね……」


「ラース文明か……。さすがにアレと共存できる気はしないなぁ。確かに、どう見ても敵にしかなりそうもないしねぇ……。なにより、向こうは惑星に住む僕らみたいな生物は生物としてみなしていない可能性もある。向こうにとっては、AI達や僕らみたいなデータ生命体こそ、生命体と定義してるかもしれないね」


「生命に対する概念自体が違う……という事ですか? 確かに、その可能性は高いですね……。そして、向こうにとっての生命体ではないとなると、デブリのような障害物やある種の災害と考えている可能性も高いと?」


「僕らが、当初精霊を自然現象と考えていたのも事実だしね。まぁ、この時点で話し合いもなにもないってのは容易に想像できるよ。なにより、アスカ星系自体はラースシンドロームの感染源となるこのエネルギー生命体と言える連中の巣窟……さしずめラース文明の拠点ってところだからねぇ。案外、今銀河にはびこってるラースシンドロームの出どころも、この星系って可能性もある……」


「そこは何とも言えませんが……。ただ、ユリコ様がアスカ様と情報共有したことで得た情報によると、こちらのラースシンドロームより大幅に進化している様子からして、確かに大本である可能性は高いですね……。いずれにせよ、繁殖地と言う事なら、ラース文明にとって、相当な重要拠点と考えていいでしょう」


「……つまり図らずもアスカくんは二つの星間文明の激戦区に放り込まれたようなものなのだろうな。しかも、情勢としては未だ圧倒的に不利……この状況からよくひっくり返せたものだよね……」


 アスカの戦いは第三者的な視点で見ると、驚嘆すべき戦いの連続だった。

 

 なにせ、その程度には炎国や貴族達は巧妙に立ち回っていて、情勢としてはほぼ詰んでいたと言うのが実情だった。


 もしも、アスカの介入が無かったら、神樹の森も炎神教団や貴族達に焼き討ちされ、灰燼に帰していたのは間違いなかった。


 もっとも、実際は追い込んでいたはずの炎国は火山噴火に巻き込まれて、その兵団も都市もまとめて壊滅し、全滅に近い被害を受けたのは確実だった。


 当然ながら、その後ろ盾を失ったエインヘリヤル化した貴族達の命運も決まったようなものだった。

 

 向こうにしてみれば、圧倒的優勢が一瞬でひっくり返されたようなもので、理不尽以外の何物でもないであろうことは容易に想像できた。

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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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