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銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第二章「アスカ様の覇権国家建国道」

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第四十四話「はるか遠い世界の星空に」①

 『白鳳Ⅱ』がシールドの重力機関の出力を上げ、ゆっくりと上昇していく。


 やがて、成層圏を超えて、熱圏に突入。

 周辺気温は1000度を超えているはずだが、遮熱も完璧らしく、コクピット内の温度は適正範囲内。


 ちなみに、衛星軌道ダイブもさすがにこの熱圏あたりからだと、その高熱が問題となるので、遮熱服が必須となるそうで、その上で遮熱シールドと呼ばれる断熱素材に覆われた棺桶のような箱に詰め込まれて、投下されるらしい。


 魔法技術の飛行体の場合、この辺りで魔素不足で機能停止するはずだが……『白鳳Ⅱ』の重力機関は正常に動作中。

 

 やはり、この機体は純粋な科学テクノロジーの産物か……或いは、外部魔素に頼らずに、純粋にマナストーンが生成する魔素で動作しているのであろうな。


 ……いやはや、魔素を自前で生成するとか、つくづくとんでもない話だ。

 私が知り得るどんな魔法文明よりも、進んでいるな……これは。


 いや、ひとつだけ例外があったな。

 帝国に恭順することで、1000年分くらいの進化を遂げた地球外惑星文明……トラバーン王国。

 

 あの国の人間……特にその王族は、本来使えるはずのない宇宙空間で、平然と魔法を行使してのけた……その理由は当時の時点ではまるで解らず、何らかの方法で自前で魔素を生成しているのだろうと言う結論に達したのだが。


 そもそも、トラバーン人は内臓器官や身体構造が地球人類とはかけ離れており、遺伝子サンプルの提供やCTスキャンなどでの生体検査にも快くご協力いただけたのだが……。


 生物学的にも謎の臓器や器官だらけで、向こうもその理由はまるで解っておらず、これ以上のことは非人道的な生体解剖でもしないと解らないと言う事で、棚上げになった。

 

 今から、考えるとあの国の王族は、マナストーンを自前で持っていた可能性が高い……。 

 だとすれば、案外……トラバーンにもラースシンドローム対策の切り札足り得る何かが存在する可能性もあったのだが。

 

 片道7年、往復15年と言う物理的な距離がどうやっても問題になる……。


 いかんせん、それだけの時間があれば、人類がラースシンドロームで滅びるほうが先であっただろうし、向こうも半ば強引に惑星国家化した弊害で、元々弱小国家だった事もあって、その統治に四苦八苦していると聞いている。


 同じ統治者としては、その苦労が垣間見えるだけに、今はそっとしておくのが良いだろう……当時は、そう思ったのだがな。


 マナストーン……案外、これはこの宇宙の文明にとって、その存亡すらも左右しかねない重要なファクターだという可能性もあった。


 まぁ……今となってはと言った所だったが、この考察についても一応ユリコ殿に託すとするか。

 

 それにしても、この『白鳳Ⅱ』……さすがに、マナストーンをタンデム搭載しているだけに外部魔素がゼロになっているにも関わらず、パワー減衰の気配すらないし、まだまだガス欠には程遠いらしい。

 

 どうやら、この世界で初の本格的な宇宙機までも作り上げてしまったのかもしれんな。


 惑星自然重力をほぼリスクゼロで中和できる精密制御重力機関の完成品がすでにここにある以上、その気になれば、km級の宇宙戦艦を建造して、宇宙に上げるのも容易なことであろう。

 

 そして『白鳳Ⅱ』は熱圏を超え……宇宙と大気圏の境界線……カーマン・ラインを超えて、宇宙空間へ到達する。

 

 ……完全なる真空の世界……視界を埋め尽くす星空の海が広がっていた……。

 眼下には青き惑星……先程まで、ジリジリと動いていたのだが、唐突にピタッと静止する。


「……ふむ、どうやらこの惑星の衛星軌道に乗ったようだ……。相対速度も自転速度と完全同期……相対停止状態になった。さすがにこれはお母様も初挑戦のようだが、帝国から提供された各地でのシュミレーションデータを早速応用しているようだな。重力干渉もこれならば、ほとんど気にならんし、大気屈折もない……理想的な天体観測速度と言えるだろうな」


「いやぁ、マジで凄いねーっ! 未知の惑星で、出来立ての機体を宇宙に上げて、一発で衛星軌道に乗せるとか……。いやぁ、わたし……なんもしてないよ!」


「確かに……帝国はこの手のデータを豊富に持っているからこそ、無造作に惑星衛星軌道への宇宙機投入をやってのけていたが。リアルタイムで最適値を算出して、無造作にやってのけるとなると容易ではない……」


「神樹ちゃんの演算力……。多分軽く超AIクラスなんじゃないかな。いやぁ、味方でホント良かったよ」


「確かにな……。それより、早いところ観測データを収集してくれ。なにせ、この星系の状況が全く解らんのだからな。さすがに衛星軌道ともなると宇宙側からも一目瞭然だ……おそらく、何らかの形で敵対文明からの接触があるはずだ。長居は無用であるぞ」


「解ってるって! まぁ、やる気の敵がいるなら見られただけで解るから、大丈夫だよ! でも……こりゃまた、とんでもない密度の星空だわ……明るい星も多いみたいだし……。ねぇねぇ、これって、やっぱり銀河中心部なのかなぁ? あの辺ってエーテルロードも全然繋がってないから、どうなってるのか、未だによく解んないんだよねぇ……」


 確かに、見慣れた銀河帝国のスッカスカな星空と比較すると、凄まじい密度の星空だった。


 ちなみに、ユリコ殿が言っているのは本当の話で、銀河の中心域は銀河進出より1000年も経っているのに、未だに人跡未踏の地だった。


 なにせ、銀河中心部に位置するであろうエーテルロードの中心域……セントラルストリームは、その真ん中に巨大な空白域があるのだ。

 

 もっとも、セントラルストリームの内側の空白域の中心部になにかが隠されており、帰還者達はそれを目指していた……そんな話もあるのだがな。


 事実、帰還者達も銀河外周部の帝国の領域自体はほぼ素通りして、まっすぐに銀河連合の領域を蹂躙したのだ。

 

 明らかに、奴らの目的地はセントラルストリームであり、結局あの戦いもセントラルストリームが最大の激戦区となっていたのだ。

 

 とは言え、この辺りは、部外者である帝国には伺い知れない話なので、噂レベルでしかその実体は解っていなかったし、向こうもそもそもごく一部の者たち以外、何も解っていないようで、諜報員による情報収集活動も芳しく無く、長年謎に包まれていた。


 なお、エーテルロードの中心、セントラルストリームは、ドーナツ状になっていて、外周側は至るところから、サブストリームがつながっているのだが……。

 

 セントラルストリーム自体には、通常宇宙に繋がるゲートが一つも発見されておらず、ゲートがあるならば、それは銀河系の中心部の恒星集中地帯につながっているだろうと言われてはいたのだ……。

 

 もっとも、そんなものは長年の調査でも一切見つかっておらず、銀河人類は銀河系の中心部については、未だ到達しておらず、中央諸国の銀河中心に限りなく近い星系から、その星の塊のように見える星域を遠くから眺める程度にとどまっていた。


 もっとも、そこからの観測情報では、古来から言われていたように、銀河のど真ん中に、超巨大なブラックホールが存在し、密集部の恒星間の距離も1000天文単位程度ととてつもなく近く、重力偏差についても入り乱れたカオス状態であり、超空間ゲートを繋げるにはあまりにも危険な場所であり、先史文明も接続ゲートを作ろうにも作れなかった……そんな風にも言われていた。


 故に、セントラルストリームについては、もっぱら連絡通路として使ったり、幅も広く流速も低いことから、あちこちに浮島を作った上で、銀河連合の中核施設などが設置されており、文字通りの銀河の中枢として機能していたのだ。


 もっとも、それも今は昔の話で、銀河連合評議会の議事堂や、銀河ネットワークの中枢データセンターのような主要施設はいまだに残っているようだが。

 

 それ以外の施設や付随都市などについては、帰還者との戦闘に巻き込まれたことで破壊され、廃墟同然となったまま、朽ちるに任される……そんな状態らしかった。


 まぁ、盛者必衰の理をあらわす……と言った所かな。

 

 ……それはさておき。

 モノのついでに私自身の目でも、惑星の全景を見ておくとしよう。


 見たところ、惑星表面の大半は、海が広がっていて、先程まで居たロドゴア大陸が一際大きな陸地のようで、他に周囲にまばらに群島が点在しており、少し離れた西の方に小さめの大陸が見えていた。

 

 それに惑星の裏側にも大きめの大陸がありそうで、こちらは惑星の夜の領域の東の果てにその端っこが見えていた。


 もっとも、ロゴドア大陸の北半分は緑に包まれているのに、山脈で区切られた南半分は砂漠と荒れ地ばかりのようで赤茶けたように見えているし、西の大陸も茶色い土地ばかりが目立つ……なんと言うか、全体で見るとなんとも貧相な世界だった。


 多分、これはお母様の力が及ぶ範囲と及ばない範囲の違いなのであろうな。

 まったく、緑が多いに越したことはない等と言うのは、宇宙の常識なのだがな。


 惑星の反対側……夜の部分はどうなっているのかは、現段階では不明。


 実際、大陸らしき影も見えているのだが、少なくとも光源が一つもない様子から、文明が存在しないか……或いはあったとしても原始文明レベルか。


 案外、植物が無くとも生存できる、珪素生物の楽園とかそんななのかも知れん。


 だが予想通り、その惑星表面の多くが海洋で大きさも程よく、理想惑星と言って良かった。

 

 まったくもって、青く美しい素晴らしい惑星だった。


 なるほど、ヴィルデフラウ文明と炎神文明。

 二つの星間文明がこの惑星の占有権をかけて、長い間戦い続けてきた……そう言う訳なのだな。


 こんなにも美しくも有用な惑星、宇宙広しといえ、滅多にないからな。

 そりゃ私だって、欲しくもなる。


 いや、ものすごく欲しいなっ! この惑星が私の自由になる……そう考えただけで、顔がニヤけてしまう。

 

 ……可能ならば、銀河帝国の次世代主星にしたいと思ってしまったほどには、この惑星は素晴らしい惑星だった。


 星間文明の統治者なら、この欲求は当然だと思うぞ?

 その程度には、宇宙という環境は何処に行っても不毛な惑星ばかりなのだ。


 ……こんな惑星、争奪戦になるのもむしろ、当然であろうよな。


「ねぇねぇ、アスカちゃん……。ここって、ヤケに赤い星が多くない? いくら星間密度の高い銀河の中心部でも、こんな赤くて大きな星ばっかりが、軽く千個以上あるとか……。わたしも銀河中央諸国の星空くらい見たことあるけど、こんな赤い星がびっしりとたくさんあるなんて……。もしかして、ここってやっぱり系外銀河なのかなぁ……」


 確かに……銀河系は、宇宙でも比較的若い部類に入るという話は聞いたことがあった。

 そして、文字通り星の数ほどある系外銀河には、その大半が老齢の赤色化した恒星ばかりのものもあるらしいのだが……。

 

「いや、ユリコ殿……。あのやたらめったらあって目立つ赤い星々なのだが……。私もてっきり、恒星だとばかり思っていたのだが……そうとも言い切れないようだ。ここだ……この惑星と赤い星が重なっている部分を目一杯拡大してみてくれ」


 私がそう言うと、ユリコ殿が私が指示した場所を一気にクローズアップしてくれる。


 ひときわ目立つ黄色の光を拡大していくと、巨大なガスジャイアント惑星の姿が明らかになる……。

 この手のガスジャイアント惑星は、大抵の恒星系に存在する為、別に珍しいものではない。

 

 だが、その手前に巨大な火の玉がかかっているのが見えていた。

ちょっと補足。


宇宙駆け世界のエーテルロードは、言ってみれば銀河を縮小化したような構造です。


多少の上下差があるものの、年輪みたいに50層くらいの環状構造が連続してて、それぞれが細道で繋がってる……。

だいたいこんな感じです。


直径は、凡そ1万5千キロ……地球の直径よりちょっと大きいくらいです。


構造自体は、例えるときしめんみたいな幅広なチューブ状のエーテル流体の上に、やはり半円球状の大気層が乗っかってるって感じなのが一般的なエーテル空間の構造です。

で、そのきしめんがぐるぐる長々と平面で繋がってる……そんな感じです。


で、思い出したように重力均衡点みたいなのがあって、ゲートシステムで通常宇宙へ繋がるんですが、要はエーテル空間を拡大した時に重なった位置に来る星系にしか行けないってのが、エーテル空間航法の問題点で、行き先がすごく限定されてます。


ちなみに、今回の話にもあるように、セントラルストリームには、その重力均衡点が一つもなく、構造上は更にその内側にエーテルロードなり、重力均衡点があるんじゃないかとは言われてました。


もっとも、さしもの帝国もコテンパンにやられて、為す術もなく突破されて、セントラルストリームが蹂躙されてるのを見て、悪いしたと思ったらしく、敢えて追求とかはしませんでした。

この辺、帝国らしいお人好しさ加減ってとこです。

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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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