表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第二章「アスカ様の覇権国家建国道」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

168/312

第四十三話「ナイトボーダー」④

「……確かに、噴火口からバンバン撃ってきてるって感じだねぇ……。と言うか、どんだけ撃ってきてるのよ。もう軽く100発は撃ち落としてるのに、まだ撃ってくるなんて……。いっそ、大気圏を突破して、こっちも衛星軌道上から、山の直上に回って、対地砲撃叩き込んでぶっ潰す?」


 ……こちらの飛行技術は、基本的に重力加速飛行。

 

 仮想重力点を任意の方向に設置することで、空を真上に落ちたり、真横に落ちる。

 ……そんな風に例えられる先進飛行技術だ。


 山自体はかなりの広範囲で、炎神教団の集落からもかなり離れていて、火口までの推定距離は約1000kmと言ったところだ。

 

 もっとも、その程度の距離ならば、10分もあれば山の直上までたどり着けるとは思う。

 

 だが、その間向こうは自由に標的を変えられるし、今の時点で結構な勢いで撃ってきているのだ。


 だが、高速移動しつつの狙撃ともなると、命中率は格段に落ちるし、射撃頻度も低下する。


 それに、イフリートがまだ活動している以上、こちらもここから迂闊に動けない。

 アイゼンブルクの城下町では、避難どころか未だに民衆が街中を右往左往しているような状況だ。


 この状況で、核融合弾攻撃が一発でも着弾したり、イフリートが無差別攻撃を始めたら、町の人々は確実に全滅するし、エイル殿達地上部隊も全滅は免れない。

 

 それを考えると、この場から動かずに出来る別の手段を考えるべきだった。


「いや、それでは時間がかかりそうだし、イフリートがまだ生きている以上、ここから動くわけにはいかん。お母様、リンカ機のγ線レーザーの最大出力で、あの山の岩盤を貫通することは可能か?」


(山自体を破壊するのか……? でも、あの山の麓には国もあるのだぞ。いっぱい人が死ぬのだ……。炎神は自らの眷属や洗脳した人々を集めて、自らの盾に使っているのだ……だから、これまでわたしも、あそこが炎神の住処だと解っていても、本気で反撃出来なかったのだ……)


 大出力γ線レーザーの地上放射。

 余波のγ線被爆だけで、射線近くにある山の麓の集落などは軽く全滅するだろうな。


 そう、壊滅ではなく全滅だ。

 γ線は地盤だろうが容赦なく貫通するので、至近距離での着弾だけで、遮蔽物があろうがほとんど意味をなさない。

 要するに、地下都市だろうが関係なく、時間の問題で周囲の生物は全滅する。


 お母様はとても優しい……。

 この世界の生きとし生きるものへの深い愛情を抱いているようなのだ。


 だからこそ、これは人質を取られているようなもので、反撃もままならないまま、好きなようにされてきたのだろう。


 だが、これはもう戦争なのだ。

 

 それも殲滅戦争と呼ばれる戦争で、どちらかが確実に全滅するまで止まらない……そう言う戦争なのだ。


 そして、それを選んだのは向こうなのだ。

 かつて、地球上で核兵器の地上使用が禁忌とされたのは、やったらやられるからだ。

  

 惑星地上で核兵器の応酬ともなれば、使った方も使われた方も等しく全滅する。

 だからこそ、核兵器はあっても使えない兵器の代名詞であり、純然たる戦争抑止装置だったのだ。

 

 相互確証破壊とも言われる概念。


 それ故に、宇宙時代でもたとえ戦争であっても、最低限のルールというものを設けるのが常識なのだ……。


 そして、それはこのような意思の疎通もままならない侵略者相手でも、その概念は通じるはずだった。

 

 やられて、やり返さない時点で、お母様の対応は甘い……だからこそ、舐められているのだ。


 やらねばやられる……これはそう言う状況なのだ。

 

 目には目を……大量破壊兵器には大量破壊兵器でもって、教訓を与える……それが最善の対応なのだ。


 何よりも奴らの弱点は恐怖なのだ……敵国民でもある信者達をまとめて恐怖に叩き込む。

 それこそが、今ここで成すべきことであろう。


 ならば、私もこれまでやって来た通りにやるまでだった。


(……構うものかっ! あんな恒星爆弾なんぞを乱発されて、このまま黙って見過ごすわけにはいかん! なにせ、一発でも撃ち漏らしたら、もっと死ぬのだからな。あんな物を地上に気軽に撃ち込んだらどうなるか……ここらで、そろそろ奴らに教訓を与えるべきであろう? なぁに、今更虐殺など……私は気にも止めんよ……。お母様も含めて、全ての業はこの私が引き受けるまでのこと! リンカもそれでよいな?)


(……わかったのだ。わたしも他にいい選択肢を与えられない。炎神はわたしの世界の敵なのだ……。その信者達も世界の敵……そう言うことだな?)


(そうだ。敵に情けや思い入れなど不要だ。あれはもはや、お母様を信仰する民ではなく、炎神文明の民なのだ。似て非なるもの……決して相容れることもないだろう。故に炎神と共に滅びようとも、こちらが気にすることではないのだ)


 敵国民の生き死になど、戦争の当事者が気にすることではないのだ。

 なるべく、狙って撃たないとか、戦闘に巻き込まないくらいの配慮はするが、総本山が攻撃された際に、巻き込まれるような所に住んでいる……或いは意図的にそうしているなら、同情の余地などない。


(……すまんな。むすめが決断した以上、わたしも最善を尽くすまでだ。と言うか、色々と気を使ってもらって悪いな……むすめよ)


 お母様も納得してくれたようだった。


 気を使う……か。

 AI相手ならば、そんなもの無用なのだがな。

 

 なにせ、連中は単純な損得勘定と確率論や数式で判断するのだからな。


 連中の判断基準だと、ここは迷わず敵を殲滅せよと提案してくるところだ。

 情勢は一見有利のように見えて、実のところ……こちらが圧倒的に不利なのであるからな。


 向こうは好きなだけ、いくらでも恒星爆弾を放り込めて、こちらはタイムリミットがある。

 もっと早くにこれをやられていたら、こちらも為す術もなかっただろう。


 だが、次の機会はない……いや、与えるべきでは無かった。


 だからこそ……。

 今ここで敵を確実に滅ぼす決断をせねばならないのだ!


 死なば諸共の覚悟と決意、そして何よりも敵にとっての恐怖の対象となることが、この状況の突破口になるのだ!

 

「アスカちゃん……。君、やっぱ凄いねぇ……大を活かすために、迷わず小を切り捨てる……か。わたしもそう言うのって経験あるけど、そう言う容赦ない決断や責任って、わたしの場合、ゼロ陛下が何もかもを引き取ってくれてたんだけど……。君はたった一人……誰にも預けることもなく、全ての責任と業を背負う覚悟で……。それを当たり前のようにこなす。……断言しても良いよ! 君はゼロ陛下に並び立てる……それくらいの皇帝の中の皇帝だよ!」


 ……皇帝の中の皇帝。

 それもユリコ殿から言われると何とも嬉しいものだな。


「ユリコ殿、それが……我が銀河帝国の皇帝というものなのだ。我々はあなた方の作り上げた理念の元に、その後継者として、私のような生まれながらの皇帝を作り出し、全てを背負わせ、全てを託すという選択を行ったのだ。たとえ、死して生まれ変わろうが、私は銀河帝国の皇帝であるのだ! いかなる業も責任もすべて、この私が背負う……それで一向に構わぬっ!」


「……了解。その心意気やよし! 大丈夫……そう言う事なら、このわたしも肩代わりするだけの話だよ……。我こそは皇帝の剣なり……これってわたしの決め台詞って事になってるらしいね!」


「はい! さすがアスカ様……お見事な覚悟ですね……。僭越ながら、私もアスカ様と共に業を背負う覚悟です……」


「ふふっ。リンカちゃんもカッコいいよ? ホント、君はよく出来た弟子だよ。さて、状況は? 少し静かになってるね……。これはむしろ嵐の前の静けさ……かな?」


「はい、第十五波の迎撃後、敵火点は沈黙中……恐らく、インターバルが発生中の様子。こちらもレーザーキャノンの砲身加熱でアラートが出っぱなしだったので助かりましたよ」


 実際、アレだけの勢いで撃ち出していたのに、炎神は沈黙中だった。

 まぁ、ユリコ殿の言うように、嵐の前の静けさだろうと思うがな……。


「ふむ、敵の攻撃が止んでいるのか……。これはむしろ、溜めの最中なのかもしれんな。案外、ここから大技でも仕掛けて来るかも知れん。お母様、どうだ? こういったケースの前例はあるか?」


(火山の奥深くで、一際大きな熱反応の上昇を確認している。これは……はるか昔、この大陸を焼き尽くした……「滅火の星」の前兆だ。恐らく、これまでとは比べ物にならない飽和集中攻撃が来るぞ! あれをやらせてはならぬぞ!)


 ……やはり、大技の準備中か。

 当時の再現フィルムみたいなのが、視界に表示されているのだが。


 どうも、衛星軌道上にkm級の巨大衛星クラスのミニ恒星を出現させ、そこから雨のように核融合弾を落とす……もはや惑星殲滅兵器と言って良い大規模破壊兵器のようだった。


 さすがに、そこまでの飽和攻撃ともなると、お母様でも防ぎきれず、大陸のあちこちに火の玉が落ちて、至るところが吹き飛ばされているのが、再現映像でも解る。

 

 確かに、ここまでやられてしまっては、文明崩壊くらいはするだろう。

 むしろ、よく文明が残っていた……そう思えるほどだった。

 

 さすがに、こんなものを打ち上げられたら、さしものリンカでも撃ち落としきれんだろう。


 つまり、これが敵の最終攻撃……!

 地上を焼け野原にしてでも、敢えてそれを投入する……敵の不退転の覚悟が知れるようだった。


「なるほどな……ここで一気に勝負に出る……と言う事だな。だが、そう言うことなら、こちらもやることは単純明快だ。つまり、殺られる前に殺れ……だ! リンカ、皆まで言わずとももう解るな?」


 手段を選ばず、こちらを徹底的に粉砕すると言うのなら、こちらも不退転の決意の上で、必殺の心意気で応じるまでだ。


 覚悟を……決める時だな。


「はい、撃つなら今のうち……と言う事ですね! けど、神樹様のデータによると敵の推定位置は噴火口の直下……マグマ溜まりの中のようです! ……ちょっと直撃は厳しいかもしれません。確実にやるとすれば、直上まで飛んで、噴火口から反物質爆弾を投げ込んで、無制限解放させる……それくらいしか方法も無いかと思いますが……果たして間に合うでしょうか……?」


 さすがに、直に山肌を穿つのは無理か。

 リンカがそう言うのであれば、そうなのだろう。

 

 だが、マグマ溜まりに浸かっているのならば、良い手があるな。


「……了解したリンカ。そうだな……ならば、狙いは山の中腹にある煙を吹いている噴火口にしろ。そこなら、すぐにマグマだまりがあるようだ。それを最大出力のγ線レーザーで狙ってみろ。きっと向こうはエラいことになるぞ」


 火山と言っても、大抵その頂上は噴火口になっていて、噴火ともなるとそこからマグマが吹き出してくる……そう思われがちなのだが。

 

 実際は山の中腹や麓やらに、網の目のように火山のマグマ溜まりに通じる中小規模の噴火口があるものなのだ。


 ……候補数は凡そ100箇所。

 この辺りは、考えるだけで結果が表示されてくる。


 どうやら、思考制御マンマシンインターフェースも優秀なようだ。

 

 その中でも比較的熱反応が強く、リンカから赤いマグマだまりが直に見えている噴火口があった。

 それこそ、まさに活動中の噴火口だった。

 

 ……狙い目は……ここだっ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ