表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第二章「アスカ様の覇権国家建国道」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/312

第三十四話「その名は巨神兵」③


 まぁ……どのみち、これは今考えても答えなど出ないし、今、考えるような事ではなさそうだった。


「うむ! この調子なら、ロックゴーレムが相手でもなんとでもなりそうだな……。イースはどうだ? 巨神兵に乗った状態で魔法は使えるか? この機体には、大型のマナストーン結晶が搭載されているのだ。上手く制御すれば、かなりの魔力を扱えるはずだぞ?」


「は、はいっ! 凄い……多分、生身の身体の時の10倍位の魔力を扱えてます。見てください! 『茨の監獄』!」


 棘の生えた蔦を地面から生やす……植物系魔法でも数少ない攻撃的な魔法らしいのだが。


 生えてきたのは、巨神兵を容易く拘束できそうなほどの太さで、数も凄まじい量だった。

 ヤブというよりも、もはや灌木の塊だった。


 聞いた話だと、この魔法を応用することで即席の防壁などを作ったり、地面を掘り返したりできるそうだが、確かに規模が遥かに大きくなっているし、一本一本の制御も出来ているようで、蔦も触手のようにグネグネと自在に動かせているようだった。


 なるほど、これなら十分戦力になるな。

 なによりも、イースが出したのは、ゴツくなった茨のような植物のようだが。

 

 イースは実際に、電磁草によるこの茨の監獄で、装甲騎士団を壊滅に追いやっている。

 あの植物の頑丈さを考えると、ロックゴーレムを拘束するのも容易そうだった。

 

 それに魔法の応用についても、私でも使える「成長促進」を応用すれば、機体が破損しても現地修理なども可能だろう。


 要するに、その場で自己修復が可能……という事だな。

 地味なようで、これはすごいぞ。

 

 さすがに、ナイトボーダーでもそこまでは出来ん。

 ナイトボーダーにも多用されているナノマシン装甲は、多少のヒビや装甲の融解破損程度なら、その場で応急修復できるのだが。

 

 重度損傷……フレームレベルの破損ともなると、もはや後方へ送ってのオーバーホール送りにするか、パーツ単位での総とっかえでしか対応も出来ない……それが常識だったのだが。


 この巨神兵……多分、手足がもげて、機体に大穴が空くくらいの大ダメージでも、前線基地どころかその場で修復が可能とみている。


 なにせ、イースは植物魔法で、枯れた樹を蘇らせたり、折れた枝を修復するくらいのことはやってのけていたし、私にもそれくらいは出来る。

 

 確かに、植物と言うのは、多少枝や葉が破損しても、それなりの時間はかかるものの再生するからな。

 

 植物は、真空に晒されても数分間程度なら、乾燥はするものの水を与えれば、あっさり復活するほどには高い生命力を持つのだ。


 そんな植物の自己修復能力を高速化出来るとなれば、巨神兵が戦闘中に負ったダメージもその場で即座に修復出来ると思っていいだろう。


 ……この点については、機械文明では絶対に及ばないと断言できる。

 

 機械は使えば使うほどに消耗するし、壊れたら自然には修復されない……これは人類が宇宙に進出して1000年もの時が過ぎても相変わらずだった。


 もちろん、ナノマシン補修やダメージコントロールシステムなどで、ある程度の損傷は戦場でも復旧出来るのだが、それも限度がある。


 機械はいつか壊れる。

 機械はどんなに技術が進んでも、所詮消耗品という事に変わりないのだ。


 この事実は、どうやっても動かせない。

 

 技術や素材の進歩と洗練化で、機械の消耗をある程度抑える事は可能にはなったが、機械の開発設計者は、常に機械はいつか必ず壊れるという想定で設計を行うし、絶対に壊れない機械と言うのは、現在の技術でも夢物語だと言われていた。

 

 だが、この植物文明由来の人型機動兵器は、その機械文明の宿命すらも覆しかねない。

 

 お母様にしても、高度な自己修復能力があるからこそ、過酷な宇宙空間を一万年単位での無補給単独航行を実現したのだ。


 同じ事が人類の技術で可能かと言えば、到底不可能だった。

 

 なにせ、先も言ったように、機械と言うものはいつか必ず壊れるのだ。

 一万年以上も何もない外宇宙空間を航行して、問題なく機能するような宇宙船なんぞ、簡単に作れてたまるか。


 そんな冗談のような真似を、当たり前のようにシレッとこなす時点で、地球起源人類の文明では、どう進化しようとも、とても及ばない……。

 

 そこは断定しても良かった。

 なにせ、文明としての年季が違うのだ……。


 ヴィルゼットの話だとヴィルアースの時点で一万年以上前に落着していたと言う話で……。

 億単位もの昔から存在する文明の可能性すらもあるのだ。

 

 まったく、恐るべき話だった。


「一応言っておくが、恐らくこの巨神兵。お主が普段使っている回復魔法や植物の成長促進の応用で、破損しても、その場で修復も可能だと思う。つまり、長期戦となれば、間違いなくお前が要となるぞ。アークも魔法の使い勝手についてはどうなのだ?」


「は、はいっ! 僕も神樹魔法についてはもちろんですが、一般的な元素魔法も中級クラスまでなら一通り使えます! そうか……この巨神兵……魔法の強化まで出来るのか! こ、これは凄いですよっ! アスカ様はとんでもないものを作り出した! ああ、いろいろ試したい所だけど、今は急がないといけない……ですよね?」


「そう言う事だ! すまんが、検証や実験は後回しにしてくれ。まぁ、巨人の足なら人間よりも遥かに早く走れるはずだからな。些か様にはならんが、総員駆け足! 隠密性も今は気にする必要はない! とにかく、急ぐのだ! 皆の者……準備と覚悟はよいか!」


「ああ、いつでもいけるぜ!」


「俺っちも大丈夫だっぜ!」


「私もいつでも問題ありません……アスカ様、出陣の号令をお願いするであります!」


 これはリンカ。


 アークもイースも共に頷くのが解る。

 もはや、意思確認は十分だった。


「解った! 者共! 参るぞ! 我に続くが良い! 神樹帝国軍……巨神兵、出撃である!」


 何事かと思ったようで、様子を見に来た警備兵や野次馬の市民達を後目に順番に出撃していく。

 

 ……六体の巨神兵が縦列を作って、ズシンズシンと大地を揺るがしながら、森の街道を駆け抜けていくと言うのはシュールな光景だったが、今のところ歩くしか移動方法もないのだから致し方ない。

 

 街道の地面が派手に掘り返されているが、どのみちこのオーカスとシュバリエ間を結ぶ街道は拡張整備して、石造りにする予定だったので、そこはお構いなしで構わない。


 一般人の通行などについても、すでに街道自体が通行止めになっているようで、街道については誰も通らない前提で、お構いなしで進んでかまわないとエイル殿からも連絡があり、実際誰一人として見かけることもなかった。


 すでに伯爵軍の侵攻を想定して、街道の至る所が切り倒した丸太や灌木の茂みなどがあちこちに設置されていて、完全に封鎖されているようだった。


 実際、偵察部隊辺りが複数森に入り込んでいるようなのだが。

 エイル殿の配下のエルフ達が迎撃しているようで、そちらについてはさしたる問題になっていないようだった。


 戦闘というものは、銃砲弾を派手に撃ち合ったり、多数の兵同士が激突するよりも前にこのような偵察隊と警戒隊の地味な牽制合戦や、小規模激突から始まるのが定番ではあるのだ。


 もっとも、敵の戦略目標はオーカスの陥落であり、こちらに対しては牽制や威力偵察がいい所であろう。


 故に地上の戦いは、皆に一任する。


 現在の巨神兵の進軍速度としては、およそ30km程度。

 

 地上の不整地走行……道なき道を往く際は、浮揚式のホバー移動などでは、色々と問題が多く、これもまた枯れた技術の無限軌道車両辺りを使うのだが。

 

 それでも、平均時速は10ー20kmくらいが関の山だと言う事を考えると、地上兵器としてはなかなかに悪くない速度だった。


 道の破損や機体消耗もお構いなしでショートジャンプですっ飛んでいけば、もっと速度は出せるだろうが、さすがにそれはどうかと思うので、今はひとまず、普通に走らせる。


 まぁ、今の速度でも、恐らく一時間もあればオーカスに到着するだろうから、これで十分だった。


「ドゥーク殿! 間もなく、そちらに援軍が到着する! 状況はどうだ? 苦戦しているのは知っているが、簡潔に状況を知らせ!」


 ひとまず、ドゥーク殿に神樹経由での通信で連絡を取ってみる。

 いかんせん、オーカスが陥落してしまっては、援軍の意味がなくなってしまうからな。


 ドゥーク殿は、オーカス市にて陣頭指揮を取っていると聞いていたし、すでに強化を受け入れているので、直接通信も可能だった。


「……アスカ様ですか! まさかと思いますが、御身自ら援軍を率いているのですか?」


 早々と返答が返ってきた。

 向こうも余裕はないと思うのだが、どうやら最優先で対応してくれるつもりのようだった。


「うむ、私も現在の戦況は理解している。状況としてはかなり不利と言える。この状況を打破するとなると、生半可な戦力ではかなわないのでな……。お母様より、チート兵器……新たなる力を授かり、それをフル活用することにしたのだ」


「チート兵器がどんなものか、俺には良く解りませんが……。神樹様の与えし奇跡の力という事ですね。それは実に頼りになりそうですね。して、増援の規模はどの程度ですか? おっしゃる通り、さすがにロックゴーレム相手に生半可な戦力では太刀打ちできません。現状、こちらも四方の城壁は崩されましたが、崩された場所に瓦礫の山が出来ているので、装甲騎士の突撃もロックゴーレムも瓦礫に足を取られて、思ったように市内に進めない状況です。向こうもゴーレムを一体潰されたのと、それ以前の無謀な平攻めで、歩兵部隊が消耗していたことで、思ったように攻めれないようで、些か及び腰になって来ているようですね」


 ……もっと、切迫していると思ったのだが。

 意外と余裕があるような返事が返ってきた。


 なるほど。

 敵も無計画に力任せで城壁を崩した結果、即席バリケードが出来てしまったようなものなのだろうな。

 

 ロックゴーレムで、城壁を崩すのは簡単だったようだが、瓦礫の山ともなると簡単には撤去できんだろう。


 そして、ドゥーク殿も役立たずの装甲騎士は始めから無視して、接近してくる工兵や歩兵を集中して仕留めることで、上手く足止めしているようだった。


 籠城戦で城壁をまとめて崩されたとなれば、もはや総崩れになってもおかしくないのに、良く統制し、敵の動きにも対応出来ているようだった。


 まぁ、この手の拠点防衛戦では、最後にものを言うのは、他ならぬ歩兵戦力であるからな。

 

 その歩兵を軽視して、攻城戦に引き込まれてしまった時点で、如何にゴーレムやら装甲騎兵が居ても、攻めあぐねることになる……どうやら、そう言うことのようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ