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銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第二章「アスカ様の覇権国家建国道」

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第三十四話「その名は巨神兵」①

「却下であるな! なぁに、私はこの手の兵器の運用には慣れておるし、最前線も手慣れたものだ。心配は無用であるし……むしろ、お主らに人型兵器の運用を教えるつもりで来たのだぞ? 何も解っとらん奴らに物だけ渡して、さぁ、行って来いなどと無責任な事を言うつもりはないっ! なにより、この巨神兵……この時点で、相当なものだと解っているからな……。その上で、何処までの物か実戦で確かめたいのだ。である以上、人任せにはするつもりはないな」


「そうか、まぁ……今さらってとこだったか。すまん、すまん。だが、なるほどなぁ……。例の星の世界の銀河帝国軍の兵器……ってヤツか。なぁ、星の世界ってのは、人間がこんな兵器に乗り込まないと戦えない。そんなところだったのか?」


 確かに、宇宙スケールの戦いともなると生身の人間では、あまりに小さく脆弱だからな。

 

 故に、ソルヴァ殿の問いに対する答えは、むしろ当然の話だと言う回答となる。


 では、銀河帝国軍の戦場とは如何なるものか?

 ……銀河帝国は一言で言えば、凡そ人類が存在するあらゆる環境での戦いを想定していた。

 

 地上に、空に、宇宙空間……微細重力の小惑星や大型艦艇内部へ突入しての白兵戦も想定のうちだった。


 そして、何よりも一番重要で人類の最上級レイヤーと言えるエーテル空間については、我々は主戦場のひとつとして考えていた。

 

 つまり、ありとあらゆる環境を我が銀河帝国軍の戦場として想定していたのだ。

 そんな多種多様にして、複雑な環境にすべからず対応すべく誕生した兵器が「ナイトボーダー」なのだ。

 

 そして、このナイトボーダーに極めて、高い汎用性を与えたのは、それが持つ「ボーダーシールド」と呼ばれるシールドモジュールだった。


 このボーダーシールドは、正面に構えることで本来の用途……盾として運用するのが基本なのだが。

 

 盾を裏返してその上に乗る事で、マリンスポーツのサーフィンのようにして、エーテル流体面や海洋惑星の海上を船舶のように高い機動力で長時間自在に動けるようになっており、それ自体を機動モジュールとして、大気中や宇宙空間の高速移動をも実現していたのだ。


 結果的に、航空機並みの戦略機動力を併せ持ちながら、航空機の欠点……長時間滞留することが出来ず、防御力も低いという問題点を克服したある種のハイブリット兵器として発展していった。

 この辺りは、エーテル空間と言う重力圏下で、艦艇が主力兵器となってしまった事が主な原因なのだが、主戦場に特化した兵器が主力兵器となる事は、別段珍しいことではないのだ。


 そして、このボーダーシールドについても、用途や任務によって交換することで、本体については最低限の調整で済ませることで、ありとあらゆる環境や任務に対応でき、高い汎用性を持つ事へつながっていた。


 ちなみに、シールドモジュールの種類としては……。


 まず機動力を捨てて、盾としての機能に特化した防御特化型の「ヘビィシールド」

 そして、空力翼などを装備した大気圏内機動力特化大型シールド……「フライングシールド」

 

 エーテル空間仕様の「ボードシールド」に、ゼロG空間専用の重力機関内蔵型の「グラビディシールド」

 代表的なものはこのあたりになるかな。

 

 どうみても盾の形をしていないものもあったり、弾薬やら燃料を満載していて盾として使うのは自殺行為……そんな仕様のものもあったのだが。


 もともと、機動力強化モジュールの面が強いため、防御力などは二の次に考えられており、なによりも帝国軍のドクトリンは昔から防御よりも機動力なので、むしろまっとうなシールドとして使われるケースの方が少なかった。


 なお、先に挙げた中でも「ヘビィシールド」は特に使われないボードモジュールの代表格だった。

 理由は、安定のいつも通りの機動力至上主義。


 ユーリィ卿の負の遺産と言ったところではあるのだが、皇帝と言えども帝国軍の兵達の前では間違っても、そんな事は言えないのだ。 


 他にも、シールド自体が持つ支援火力の増強と搭載火器の予備弾薬パッケージを満載した「アーセナルシールド」や、空飛ぶスリッパのような形をした突破侵攻戦用の正面防御と空間速力特化型の「アサルトシールド」と言った派生系もあり、電子戦や強行偵察用モジュールのような細々とした局地戦用モジュールや、個人用カスタムなども入れたら、もはや数百種類くらいはあると思われる。


 実際問題、ナイトボーダーについては、どちらかと言うと、シールドモジュールがメインであり、その上に乗る人型兵器についても、別に人型である必要もないのではないかと言う意見も確かにあったのだが……。


 ……帝国軍が人型兵器に拘った理由は、自分の体を動かすように、思った通りに動かせる点や、兵器の防御力の低さを問題視しないと言う風潮もあったのだが。

 

 帝国軍の戦術ドクトリンの出どころの大半が、かのユーリィ卿で彼女が人型兵器のナイトボーダーをエラく気に入り、大変に拘っており、彼女の信奉者しかいない帝国軍の主力機動兵器として、完全に伝統となってしまった……と言うのが大きい。


 そして、必然的に、帝国を仮想敵とする側……銀河連合側も対抗兵器として似たようなエーテル空間用の人型兵器を用意して……スターシスターズ空母なども、従来の旧時代の骨董品のような見かけのレシプロ機だけではなく、フライングモジュールを装備した人型機動兵器が群れをなして並んでいる……一時期はそんな調子になってしまったらしい。

 

 かくして、気がつけば銀河宇宙の機動兵器と言えば、人型機動兵器……みたいになってしまったのだ。


 もちろん、人型機動兵器へ対抗するのに人型である必然性はなかったのだが。

 人型兵器ならではの近接白兵戦を想定し、マン・マシーン・インターフェイスにも思考制御を採用するとなると人間同様に手足がある人型兵器は、その対抗手段としても最適解となるのだ。


 かくして、本来ならば、非効率極まりないロマン兵器の代名詞とされ、アニメの中にしか存在しないとまで言われていた人型機動兵器は、様々な事情や紆余曲折を得て、いつしか銀河各国における主力機動兵器と言う位置づけとなって、結構な年月が経ってしまった訳だが。

 

 ……概ね、我が帝国のせいと言うのは否定しようがなかった。


 もっとも、軍事強国と言うのは、得てしてそう言うもので、軍事強国を仮想敵として追う側の立場の国々の兵器も意図せず確実にその軍事強国の影響を受けてしまうのだ……。


 そんな訳で、我が銀河帝国は別に悪くないと思う……。

 それに、スターシスターズなども途中で我に返ったのか、普通の旧型レシプロ機ベースに戻すとかやっていたしな。

 

 向こうは向こうで、頑迷と言っていいほどのレシプロ機へのこだわりがあるようで、かつて帝国黎明期に彼女達と共に戦っていた頃は、補給や整備担当者から「こいつら兵器バリエーション多すぎるから、誰かなんとかしてやってくれ……」と言った現場の愚痴のような記録もいくつも残っていたようだし、実際私達が戦った銀河守護艦隊の戦闘機も対空戦闘機だけでも、およそ数十種類は確認されていた。


 なんで、そんなにバリエーションが多いのかは、何とも言えないが。

 情報分析担当官の話だと、スターシスターズの空母は、国籍や時代によってそれぞれの好みのようなものがあるようで、どうも各艦個別にそれぞれ微妙なバリエーション違いがあるようだった。


 当然ながら、言ってみれば消耗品の戦闘機がそんな調子で、銀河守護艦隊の各艦艇については本気でワンオフ艦艇が数百隻いる……そんな編成だと言うことが解っていた。


 これは、要するに各艦の弾薬や武装の使い回しや共有化がまるで出来ていないと言う事で、補給については相当苦労するはずだった。


 まぁ、そこら辺を含めて、向こうの補給拠点のひとつを吹っ飛ばすとかやったのだが……今更私の知ったことではないな。


 さて、銀河帝国の戦場が生身では厳しい戦場だという事についてだったな。


「まぁ……そんなところだな。宇宙も星々を繋げるエーテル空間も……人が生身で戦えるような世界では無かったのだからな……。そして、我が銀河帝国の敵もまた人間が生身で戦えるような相手ではなかったのだ」


 いかんせん、ドラゴンにせよ黒船にせよ、生身の人間が戦うにはちとばかり、デカすぎるのだ。

 

 最低50m、最大km級……そんな超巨大生物相手に、落ちたら即死する海モドキの上で戦うとか、さすがに過酷に過ぎるであろう。


「前にちょっと聞いた感じだと、超でかい化物が何百匹も群れて来たり、超でかい船が大砲打ち合ったりだの、なんとも凄まじい戦いばかりだったらしいなぁ……。だが、確かにロックゴーレムも地竜も、正面から生身で戦っていいような相手じゃねぇからな……。だからこそ……巨神兵だっけかな? こいつに俺らが乗り込んで戦う……そう言うことなんだな!」


「そう言うことだな。この巨神兵も出来れば空を飛ぶ……飛行機能くらい付けたかったのだが。さすがに、そこまでやると慣れるのも一苦労であろうからな。とりあえず、地上を歩くだけの陸戦歩行兵器……いわば入門編と言ったところだ。もっとも、これを自在に使えるようになれば、この地上世界にもはや敵は居ない……そこは断言してもいいと思うぞ」


 そこまでかと問われると、そこまでだと言い切っても良いだろう。

 その程度には、ジェネレーター出力と言うものは、機動兵器の持つ戦闘力に直結するものなのだ。


 冗談抜きで一騎当千……たった一機で宇宙戦艦に匹敵する超兵器に進化するポテンシャルを秘めているのは間違いなかった。


 そして、そんな破格の超兵器をこの世界の文明に与えることについても、私は躊躇いを覚えない。


 宇宙生物や宇宙文明を相手取ることを想定すると、それくらいの備えをしていても、過剰だとは言い切れないのだ。


 今まで大丈夫だったから、これからも大丈夫……等と言うのは根拠のない楽観論に過ぎない。


 現実は、いつだって容易くそんな楽観想定を裏切る……そんなものなのだ。

 だからこそ、出来る最大限の武装をし、可能な限り最悪に備えるのだ。


「そこまでなのかよ……。でも確かに……ロックゴーレムもまともに戦うと、デカくて重いって時点で反則級だが。基本的に動きは鈍重だし、割りと頭は悪いからな。同じくらいの大きさになって、同じ土俵に立てるってのなら、確かにちょっと負ける気はしねぇな!」


「ああ、聞いた限りでは生身で戦うのは、いささか厳しい相手のようだが、この巨神兵なら、そんな石人形程度など……恐らく、敵にもならんであろうな。ひとまず、今のところ私から見ても特に大きな問題は見受けられない。故にソルヴァ殿達が乗っても問題はないと判断しているぞ……後は覚悟の問題であるな!」

 

 ……実際、特に問題点は感じない。

 あまりに違和感がなさすぎて、元々これが自分の体だったのだと錯覚しそうになるほどなのだ。


 もっとも、リンク深度5とはそう言うもので、要するに機動兵器の身体に順応しすぎてしまって、元の身体感覚に戻った際、そのギャップで様々な支障が出るのだが。

 

 ここまで違和感を感じていないとなると、そこはあまり問題にならないかもしれん。

 生身と機体の感覚的な差異に違和感を感じないと言うのは、要はシームレスに馴染んでいると言うことに他ならない。


 まぁ、実際にこの状態で数時間くらい戦ってからでないと何とも言えないし、リンク深度を下げて見て、身体の感覚との違和感をチェックする……そう言うのもありではあるのだが。


 もっとも、今はリンク深度を下げてみたり、機体リンクを解除する気にはならないし、そんな時間もない。


 問題が起きるとしてもそれは戦いが終わった後であろうから、今の時点では問題にはなるまい。


「……お手柔らかに頼むぜ? とりあえず、テメェの身体の延長って事になると……イース、お前はおまけってとこだな! 大方、無理言ってついてきたんだろうが、俺らの足手まといにはなるんじゃねぇぞ! ハッハーッ!」


「わ、私っ! お、おまけなんですかぁ……!」


 始めにそう言ったではないか……。

 確かに、イースは体術に関してはからっきしと言えた。


 本人は、何かというと腕力に訴えたがる傾向があるのだが。

 むしろ、相手の方が躊躇するくらいにはヘナチョコなのだ。

 

 その辺りはもともと支援役で、ちんまり女子なのだから仕方がないし、そんなものであろう。

 そもそも、イースが白兵戦を挑むような局面は、よほど追い詰められた時か、あるいは余興……その程度であろうからな。


 なお、私自身については、白兵戦はまったく問題ないと断じている。

 なにせ、リンカやソルヴァ殿と模擬戦を交えて、軽くいなしてしまったほどなのだからな。


 もともと、武術などもVRで訓練を重ねていたし……。

 「帝国総合白兵戦技」……通称「インペリアルアーツ」については、ユーリィ卿の再現人格プログラム相手に嫌になるほど、叩き込まれている上に、このヴィルデフラウの身体能力と反応速度はこの世界の人類種を軽く凌駕している。


 要するに、私自身がすでに化物なのだ。

 もっとも、実戦となると話は別なのは解っているのだがな。


 実際、ここ一番の瞬間に、頭の中が真っ白になって何も出来なくなってしまったのは事実ではあるのだ。

 全くもって、未熟だった。


 だが、それ故にイースについても、今の時点でも足手まとい扱いする気はなかった。


 ……現時点では推測なのだが。

 この巨神兵……恐らく魔力のブースト機能があると見た。


 常に身体に纏っていた魔力のオーラ……それが機体に行き渡った上で10mもの機体を軽く覆い尽くして、更に溢れかえっているのがなんとなく解る。


 私自身、魔力は桁違いに高いのは解っているのだが。

 巨神兵は明らかにそれを10倍以上に増幅している。


 確かに、事実EADは魔力の方向性の調整や増幅にマナストーンを触媒に使っているのだが……量が増えると、増幅率も桁違いに跳ね上がるということか。

  

 まったく……こんなデカいのも作れるなんて聞いていないし、魔力ブーストなんて事も実現するとは、いちいちデタラメがすぎるぞ。

 

 こんなものを無造作に大量に作り出す時点で、やはりお母様は色々おかしい。

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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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