表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第二章「アスカ様の覇権国家建国道」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/312

第三十三話「アスカ様、出陣ッ!」④

 もっとも、宇宙環境では船体がいくら大きくなっても、宇宙のスケールからすると芥子粒サイズには違いがないので、さほど大きな問題は起きないのだ。

 

 問題が起きるのは、宇宙港への接舷時くらいで、超大型の亜光速星系間航行船などの建造は、軌道ドックでの建造は、始めから諦めて宇宙空間で吹きさらし状態で建造されるのが常だった。

 

 4kmもの大きさがあると、さすがに宇宙港に接舷させることも諦めざるをえないので、寄港の際も宇宙港の遥か沖合……惑星重力圏外に重力アンカーで固定して、物資の搬入や乗組員の搭乗は、艦載挺や小型ランチでピストン輸送する事になる。


 まぁ、さすがにこれは大きすぎる故の弊害ではあるのだが。

 どのみち、そんな超大型艦艇なぞ、大量生産するものではないので、それでも別に大きな問題ではないのだ。


 まぁ、いずれにせよ……デカいに越したことはないと言うのは、宇宙兵器の常識なのだ。

 

 もっとも、人型兵器ともなると、何よりも思ったように動くことが重要なので、大型重質量化してレスポンスが悪くなると、その利点がスポイルされてしまうことになる上に、必然的に起こる正面投影面積の増大は、構造上防御力に難がある人型機動兵器にとっては、かなり大きな問題となる。


 そして、何よりも機動兵器は宇宙戦艦などと違って、それ単独での運用は基本的に行わない。

 

 母艦に搭載して艦載機として運用するのが常である以上、大型化は全く歓迎されないのは言うまでもない。


 この辺の事情は宇宙空間もエーテル空間も全く同じで、惑星大気圏内での運用でもそこは全く変わりない。


 だからこそ、人型機動兵器は、重厚長大ではなく、軽薄短小とすべきと言うのは、もはや長年の研究の末の結論と言え、かと言って5mだの8mくらいと小さくしすぎると火力も防御力も半端な代物となってしまい、これなら3m級の重パワードスーツでも良くないか? となってしまう……。


 つまり、人型機動兵器は大きすぎても、小さすぎても駄目。

 航続距離や機動力、生存性や火力……様々な要素からの最適バランスを、帝国軍も長年模索し続けており、現在の人型機動兵器の最適バランスと言える大きさは、10m以上15m以下……だと言われている。


 まぁ、このあたりは我が帝国のナイトボーダー開発史を紐解くとよく分かる。


 時代時代で徐々に大型化し、ある程度のところで唐突に小型化し、またじりじりと大型化していくのを幾度となく繰り返し、近年になって落ち着いた……と言うのが、ナイトボーダーの歴史だった。


 この辺りは、パーソナルコミューター。

 古くは自動車とも呼ばれていた二人乗り程度の個人用地上車両なども似たような傾向があって、これも大きくなったり、小さくなったりを繰り返している。


 この辺りは民生品故に商業的な理由もあり、同じ大きさのままで改良しましたと言っても、目新しさがなくて、あまり売れないらしく、数年置きに見た目を大幅に変えるモデルチェンジを行うのが、半ば慣習となっている。


 モデルチェンジで前のモデルと見るからに大差ないのでは、誰も買わないので、大きく広くより便利になりましたと言うセールスコピーと共に売り出す。

 それを繰り返すうちに、段々と巨大化して元のベース車両よりも遥かに大きくなってしまう。


 もっとも、道路や駐機場は車両側に合わせて広くなったりはしないので、ある程度の大きさになると今度は車体が大きすぎる事が問題になってしまう。

 

 取り回しの問題は、今どきのパーソナルコミューターは持ち主が自分で運転することはないので、あまり問題にならないのだが。

 

 駐機場の問題は結構切実で、操縦AIも駐車場の枠線に収まらないと他の駐機場に止めますと言い出して、目的地から遠く離れた場所で降ろされるとか、そんな事が起きるし、この道は法規上通れませんとか言い出してやたら遠回りする羽目になったりもする。


 そもそも、二人乗りコミューターは、自ら所有することでお手軽に乗り回せる事がその最大の利点なので、無人タクシーと変わらない大きさになってしまって、足代わりにも満足に使えないようでは、もはや本末転倒と言える。


 そうなると、メーカー側も我に返ったように、モデルチェンジで一気にコンパクト化したものを販売する……不思議とこの巨大化傾向はどこのメーカーも足並みを揃えているように、揃って似たようなサイズになるのが、通例だった。

 そんな中、真っ先にコンパクト化したものは、目新しさがあるようで、それなりに売れる。

 

 そして、本来のお手軽簡単が戻ってきて、一度は皆、満足するのだが。

 今度は、狭いし小さいと文句を言い出す……そして、次のモデルチェンジでは小さくて狭いというユーザーの声にお応えして、微妙に大きくなる。


 かくして、パーソナルコミューターは10年単位くらいで、大きくなったり小さくなったりを繰り返しているのだ……。


 ナイトボーダーの大きさ問題も、これと似たような図式ではある。

 

 今は、50年ほど前に25mほどの大きさにまで巨大化し、いい加減大型化の問題が次々と出てしまい、当然のように使い勝手が悪すぎると言う現場よりのクレームが数多く発生した。


 そこで、色々と反省したのか、大幅に小型化し凡そ半分の12mくらいの大きさになり、比較的長い間この大きさが基準となっており、もはや規格化してしまっている。


 なにせ、別に軍用機は民生用コミューターと違って、何年も同じ形をしていても、売れ行きが悪くなるとか、そんな事はないからな。


 鉄板仕様というべき、最適バランスの仕様が固まれば、別に100年間延々と同じモデルを使っていても、戦時でもない限り、そこまで問題は起きない。


 戦場では信頼性が何よりも重要視されるのだ。

 枯れ切った兵器と言う物は、現場では歓迎こそされ、拒まれることはまずありえない。


 軍人という者たちは一般に思われている以上に保守的なのだ。

 

 もっとも、小さくて軽いことは、当然ながら欠点もあり、防御力や火力も制限されることになるし、10m程度の大きさの機体では、大型のジェネレーターは搭載できない為、稼働時間や最大出力の問題が出てくる事になる。


 ナイトボーダーのジェネレーターともなると、宇宙戦闘艦のような熱核融合炉ではなく、駆逐艦や警備艇と同様、小型軽量の常温型核融合炉と蓄電セルの組み合わせが定番なのだが。


 常温型小型核融合炉は、電力の出力特性がフラットで小型化が可能で扱いやすいという利点があるのだが、熱核融合炉のように緊急時にパワーを一気に増大させると言ったことは出来ない。

 

 およそ、七割から九割くらいの出力でダラダラとパワーを継続的に取り出す……そう言う使い方をするものなのだ。

 

 そして、出力を安定させるためや緊急出力用のバッファとして、蓄電セルを併用する。

 小型機動兵器用のジェネレーターとしては、その組み合わせがもはや長年の定番だった。


 もっとも、帝国で一般的に利用されているミューオン型小型常温核融合炉の性能向上については、もはや完全に頭打ちになっていて、この百年ほどでも、誤差レベル程度しか効率が上がらなくなっており、小型化もこれ以上は無理というところまで行っており、完全に枯れきった技術となっている。

 

 必然的に出力向上の為には、数を増やして複数並列運用……要は、複数のジェネレーターを並べて運用するしかないのだが、先に述べたようにジェネレーターの小型化に限界が訪れており、空間出力比……同じスペースから得られるエネルギー総量については、もはや性能向上の余地はないと言われて久しかった。


 そして、バッファとなる蓄電セルもとっくの昔に性能向上限界に達していて、重量出力比も固まっていて、何か画期的な新技術が誕生するか、未知の元素でも発見されない限り、進化が望めない……それが実情だった。


 当然ながら、核融合エネルギーや光発電と言った従来型エネルギーに替わる新たな高効率エネルギー源が求められてはいて、それらの開発研究は長年継続的に行われており、対消滅反応なども帝国ではかなり深いところまで研究されてはいたのだが。

 

 当然のように、その研究開発は難航していた。


 新技術などと言う物はそうそう完成しないものであり、長年利用されて、枯れきって安定しきった技術にとって変わるものとなると、なかなかにハードルが高いのだ。


 なにせ、蒸気タービンよる熱発電システム。

 これもまた……今の銀河人類における発電システムのスタンダードなのだが。

 

 これもやはり、長年変わらずに使い続けられているスーパー長寿技術の代名詞と言えた。

 一言で言えば、お湯を沸かしてその蒸気圧でタービンを回して発電する。

 

 こんなものは、100年どころか、1000年以上前から使われている技術であり、古代地球の大量輸送交通機関……蒸気機関車などとそう変わりないとも言える……。


 もっとも……水の気体化による体積膨張率はおよそ1700倍にも達するのだ。

 もちろん、水銀のように水よりも高い気化膨張率を持つ物質もいくつも存在するのだが。

 

 どれもこれも、水ほどにはありふれていない……それ故に、コストと言う高くて超えられない壁が存在するのだ。

 

 気体化による相転移の際に、ここまで爆発的に体積が増え、その上で宇宙にありふれているような物質は、31世紀になっても未だに見つかっておらず、蒸気圧を利用した蒸気タービンと言うものは、今のところ最も効率が良く、低コストで安定した熱発電システムだとされている。


 宇宙を自在に飛び交うような時代になっているのにも関わらず、1000年以上も延々同じ熱発電システムを使いづつけると言うのもおかしな話だと思うのだが。


 コスパと言う面を突き詰めていくと、結局蒸気タービン発電システムが一番安上がりで信頼性も高い熱発電システムと言うことになり、なら、それで良いじゃないかと言う話となり、このような化石のような技術が長々と使い続けられてしまっているのだ。


 この蒸気タービン発電システムについては、水を沸騰させるというプロセスを挟まず、熱エネルギーをダイレクトに高効率で直接電力に変換し、かつコストもかからない仕組みでも作られない限り、この技術は人類の基幹技術として使われ続けると思う。


 いかんせん、枯れきった技術と言うのは、枯れている故に信頼性も高く、コストも安く付くのでなぁ。

 わざわざ、信頼性が低くてコストが高く付く新方式など、余程の理由がない限り誰も使わない……これは、そう言う話でもあり、同じ理由で大昔からさっぱり進歩していないものなど、31世紀の世の中でもいくらでもあるのだ。


 実際、飛行船やら自転車のような、1000年前の物と大差ないようなものが、変わらず使われているのは、そう言う事なのだ……。

 

 ちなみに、余程の理由というのは、例を上げると、21世紀に人類が経験した化石燃料の枯渇によるエネルギー枯渇などがそれに該当するのだがな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ