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銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第二章「アスカ様の覇権国家建国道」

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第三十二話「お願い、お母様!」①

「……まぁ、そうだな……リンカのそれはこちらの切り札だからな。切り札は最後まで取っておくべきだ。何もそんな事まで敵を見習う必要もなかろう? 今回の戦……お主の力を頼るとすれば、それは最終局面だ。そう思っておくが良いぞ!」


 それだけ告げると、リンカも解ってくれたようで押し黙る。


「解りました。では、仮にゴーレムはなんとかなるとしても、地竜はどうするんですか! 地竜の防御力とその生命力は桁外れで、アレをまともに倒せたような事例はここ数百年まったく聞かないほどなんですよ! あれは間違いなくこの大陸最強の生物なんです!」


「まぁ、確かに大きくて重たいは、普通に強いからのう。ゴーレムについては、建物を破壊するようなものだと思うのだがな。そう考えれば、そこまでの脅威ではなかろう。ドラゴンについても同様だな。良いか……? この世に無敵不滅の存在なぞ、あり得んのだ。形あるものならば、必ず破壊できるし、生き物ならば絶対に殺せる……そう言うものだ。故に私は地竜ごとき、我が脅威ではないと考えている」


「……アスカ様は知らないのでしょうが、冒険者達から聞いた話だと、ロックゴーレム一体倒すのに、Aクラスの上級冒険者30人がかりでかろうじて討ち取ったようですが、その半数以上が死んだそうです。それが12体も居るとなると、もはや犠牲なくして、倒せるような相手ではありません。地竜に至っては近年百年単位で討伐できた試しがない……バーソロミュー伯爵が大貴族たちに一目置かれ、近隣で誰も逆らえない程の権勢を持っているのは、その地竜を使役しているが故に……なのですよ?」


 まぁ、軍事力とは力であるからな。

 力ある者こそが、権力を握り、自らの意思を押し通す事が出来る。

 それもまた真理ではあるのだ。


 もっとも、そう言う事なら、バーソロミュー伯爵を潰せば、もはやこっちの物と言えるだろう……やはり、ここはなんとしても地竜を仕留めるべきであろうな。


 うむ! 戦略がまとまってきたな! 実に解りやすく、それでいて私好みだ。


「うむ、そう言うことか。だが、討伐出来た例がないだけで、ドラゴンとの交戦事例などはあるのだろう? その辺りはどうなのだ。すまんが、お主の言うように、私はこの惑星の過去の出来事については疎いのだ。むしろ、知っていることを教えてもらえると私も助かる」


「はい……あくまで僕が聞いた話ではあるのですが……。以前、南方山脈の火山に住み着きかけた炎龍については、腕利きの騎士やAクラス冒険者、導師クラスの上級魔術師、それら100人で編成された冒険者ギルドの最高精鋭部隊でも追い払うのがやっとだったとか……。そして、その炎龍との戦いでの生き残りは10人にも満たなかった。竜種と戦うのは、そう言うものなんですよ……」


 追い払うのがやっとで、生存率一桁以下……確かにそれは厳しすぎる戦いと言えよう。

 炎龍がどんなものかはよく解らんが、恐らく地竜と同格の生き物なのだろう。

 

 だが、生身の人間をそんな巨大クリーチャーとの戦いに、ろくな装備もまともなバックアップもなく無策で投入した時点で、それはそんな指示を出した軍事指導者が愚かだといえよう。


 そもそも、わざわざ敵の住処に乗り込む……アウェー戦を挑むとか、その時点で間違っておる。

 

 そして、生還率一割と言うのは、無策でマトモな指揮官もおかずに挑ませた結果なのだろう。


 普通に戦って、まともな指揮官が率いていれば、そんな9割もの損害を出して、戦い続けるなど普通にありえん。

 

 もっとも、それしか選択肢がなかったのかもしれんし、この世界の軍事事情は紀元前の古代地球にも劣る程に低レベル……そう言う事なのかもしれん。


 いずれにせよ、その時点で準備不足以外の何物でもないし、まずは威力偵察を行い、勝てないと判断したならその時点で逃げ帰って、時間をかけて確実な攻略法を用意すると言う選択肢もあったであろうに……。


 だが、竜種だかなんだか知らんが、そんなトカゲモドキ程度に惑星最強の生物ヅラをされるなど、まったくもって気に食わんな。


 しかし、ドラゴンを殺せる兵器か……。

 まぁ、その程度の心当たりならいくらでもある。


 過去、帝国軍と死闘を繰り広げた竜騎族は、超空間ゲートを超えて通常宇宙空間にもチラホラ進出してきて、宇宙駆逐艦を一撃で沈める程度には、強力だったそうだが……。

 

 万単位のkm級宇宙戦艦相手となると、さすがに塵芥同然だったらしいからな。


 要するに、ドラゴンは無敵の生物でもなんでも無いのだ。

 

 大口径レールガンで身体を風穴だらけにすれば死ぬし、重核融合弾が直撃すれば消し飛ぶ……所詮はそんなものなのだ。

 

 何より我が帝国軍にはドラゴンに限らず大型生物の確殺法が確立されていたのだからな……。


「そうか……。確かに、生身で戦えばそんなものであろうな……。その程度にはドラゴンは強い……それは私も認めるところだ」


 実際、ドラゴン相手に生身で戦う。

 過去の戦いでは、そう言う機会もあったようだが。

 それはつまり、蹂躙戦の蹂躙される側と言う状況でもあったのだ。


 実際、歩兵用携行火器程度ではまるで効果がなかったと言う話も聞いているので、詮無きことだな。


「……そ、そうです! 相手があまりに強すぎます……だから……ここはいっそ、オーカスを見捨てる選択もありかと。そして、ドゥーク達を犠牲にした上で『滅私奉光』も考慮に入れて、全員で死ぬ気で戦いを挑むしか……」


「まぁ、待て待て……。そんな死なば諸共のような戦い方なぞ、私は好かぬ。そもそも、聞いた限りではロックゴーレムなんぞ、使い捨ての石人形のようなものであろう? そんな物のために人命を損ねるなど、バカバカしい。要するに、デカくて重いのが相手なら、こちらも同様に大きくて重たい兵器を用意すれば良いのだ。ここは素直にお母様に助力をお願いする! ……であろう? 別にこの世界の軍事的な常識や過去の事例などにとらわれて、くだらん自己犠牲を前提にするなど、それこそありえん」


 人間よりも強大な敵に対抗する……その為の知恵……それが兵器であり、戦略なのだ。


 別に個人の持つ力に拘る必要などないし、互角の条件で戦う必要もない。

 どうやっても勝てない程の脅威があるなら、それに対抗出来る力を用意した上で立ち向かう……それだけの話なのだ。


「……お伺いしている限りだと、アスカ様は、ドラゴンをずいぶん軽く見ているようですが、まさか実際に戦い勝った経験がおありなのですか?」


「そうだな……私自身は直接奴らと戦った訳ではないのだが、我が銀河帝国は過去にドラゴンを百匹どころか、万単位で虐殺して、最終的に皆殺しにして尽く宇宙の塵にしているのだ……。良いか? ドラゴンなんぞ、ただデカくて頑丈な爬虫類モドキにすぎんのだ。つまり、恐れるに足らず……なのである!」


 そもそも、10mもある巨大人型機動兵器やらドラゴン相手に、生身の人間が挑むのは無茶も良いところなのだ。

 

 もちろん、歩兵用の携行プラズマランチャーや、大口径ハイパーレールガンなどがあれば、歩兵が機動兵器を撃破することも不可能ではないし、ドラゴンにしてもパワードスーツ兵一体で撃破した事例だってある。


 だが、そんなものはあくまで例外なのだ。

 歩兵の扱える程度の火器では、巨大な怪物相手ではあまりにも分が悪い。

 

 だが、対抗手段がなければ作れば良い。

 無敵の生物なぞ、ありえんのだ。


 帝国軍の歩兵用の携行対機動兵器を再現するのも悪くはないが。

 その手の兵器を再現しても、銃火器も知らない兵に習熟させるとなると並大抵のことではない。

 

 一番良さそうなのは、同じくらいの大きさの人型機動兵器を以って対抗する!

 ……これであろう?

 

 人型機動兵器の最大の利点は、パワードスーツ同様複雑な操作が不要なことなのだ。

 特に最近のハイエンド機ともなると、操縦者はレバーだのパネル操作をする必要もなかった。


 パイロットシートにて固定着座の上で、全感覚同期を行い自分の体を動かす感覚で操作するだけで良いのだ。

 

 つまり、我が帝国のナイトボーダーの再現。

 どこまで出来るかは解らないが、それが出来れば、最低限の訓練でロックゴーレムすらも容易く叩き潰せる兵器となるだろう。


「ま、まさか! アスカ様の帝国の兵器を作れとでも言うのですか! さすがに、そんな事が出来るとは……」


「ああ……さすがの私もそこまでは出来んし、そんな時間もない。だが、お母様……神樹の奇跡なら話は別であろう。お前達はアレの本当の力をまだ解っていないようだからな……」


「神樹様の……本当の力……? ですか……」


「ああ、それについてはこの私ですら、完全には把握できておらんのでな……。実のところ、この私ですらお母様の底が全く測れんのだ……。まぁ、とにかくそこで待っておれ……今回の件について、私が直々にお母様に相談してみるとしよう」


 そんな訳で、お母様に問い合わせっ!

 他力本願だが、どうせお母様なら、その程度の代物を用意することなど造作もない……そんな気がするのだ。


(……そんな訳で、全長30mの地を這うドラゴンと、ダース単位の10mの巨大ロックゴーレムがオーカスに差し向けられているようなのだ。さすがに、そうもデカいのを相手にするとなると生身で挑むのは厳しい。お母様の用意できる兵器で、何か対抗できるモノはないのか? シンプルにウッドゴーレムのデカい版でも良いのだがな)


 お母様へのお願いのコツ。

 とりあえず、直球でこんなのが欲しいとリクエストする。

 実のところ、これが一番早い。


 無茶かもしれないとか、さすがに無理かもしれないとか、そんな事をこちらが気にする必要など無いのだ。

 遠慮なく、無茶振りをする……向こうは、なんだかんでなんとかしてくれる。

 これで今までも結構なんとかなってきたのだ。、


 ウッドゴーレムと言うのは、今もシュバリエの拡張工事などに導入している植物製ゴーレムの事だ。

 

 神樹教会の者達の使う神樹魔法のひとつに「樹人生成クリエイトウッドゴーレム」と言う魔法があり、それを用いているのだが。


 本来は、1m程度のもの小さな木人形だったのだが、それでは明らかにパワー不足ということで、イースがお母様と相談しつつ作った新型ウッドゴーレムは全長3mほどあって、単純作業しか出来ないと言う欠点があるのだが、割りとパワフルで、重機代わりに使うなら十分に実用的で、お母様はそれも割と無造作に大量生産してくれた。


 具体的には、マナストーンをバッサバッサと土に撒いて、お母様へのお願いの祈りを捧げつつ、水を注げば、地面からニョキニョキと生えてくる。

 

 文字通り、いくらでも畑から取れるのだから、笑い話にもならん。


 軍事用途でも、弾除け代わりにはなるとソルヴァ殿も評価しており、オーカスの籠城戦にも新型の中型ウッドゴーレムは投入されており、それなりに役に立っているとのことだった。


(10mのロックゴーレムに対抗する兵器が欲しいのか? えっと……ロックゴーレム……ああ、あの土人形か! 確かに同じくらい大きさのウッドゴーレムなら作れなくもないのだ。実際、中型くらいなら、神樹協会の者達から頼まれて作っているしな……あれのもっと大きいヤツ……そう言うことか?)


(ああ、私も知っておるぞ。だからこそ、お母様なら出来ると踏んで、こうやって頼みこんでいるのだ)


(なるほど、解ったぞ! だが、ウッドゴーレムではいくら大きくでもロックゴーレムの相手は厳しいぞ。むこうは石、こっちは樹……素材と質量の差でちょっとキツイ。数を作って押しつぶすか、もっともっと大きな物を作れという事か?)


 確かにそれも手ではあろうが、消耗戦は趣味ではない。

 そもそも、お母様が本気で作れば、その程度ではないと思うのだがな。

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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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