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銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第二章「アスカ様の覇権国家建国道」

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第二十九話「バーソロミュー伯爵」④

「そ、そうだな……。なにぶん、貴殿らの軍勢は歩兵ばかりで、肝心要の装甲騎兵がほとんどおらず、戦力的には弱小と言わざるを得ない。神樹の森に得体の知れない化け物が降り立ったと言う噂もある。故に我が居城と城下町の守りも外せない、いざという時は、子爵殿の軍勢を頼みとさせて頂く……それでよいな?」


 オズワルド子爵とカザリエ男爵は実のところ、親戚関係にあり、いわゆる叔父と甥と言う間柄だった。

 

 バーソロミュー伯爵領の東側に、オズワルド子爵領とカザリエ男爵領があるという位置関係上、彼らが今回の戦で得るものは何一つとしてない。

 

 その上、どちらも熱心な神樹教徒としても有名であり、神樹の精霊率いる神樹帝国へ弓引くなど論外のはずで、だからこそバーソロミュー伯爵もオズワルド子爵達は、むしろ敵対すると見ていたのだ。


 実のところ、バーソロミュー伯爵も神樹帝国については、当面の脅威とはみなしておらず、本命としては自らの後背を脅かし、潜在的な敵対関係でもあるオズワルド子爵を討ち取るべく、この度の戦を画策していたのだ。


 それは、オズワルドが神樹教徒であるゆえに、自らが神樹帝国と敵対することで当然のように挙兵する……そう考えていたからだった。


 もしそうなってしまえば、かつてのアースター公同様……逆賊の汚名を被せた上で、大義名分の名において、蹂躙し、その上でルペハマも手中に納める……そんな算段だった。

 

 だが、彼らは意外にも伯爵を支持すると表明した上で、兵をも出し、行動でもってその立場を示すと言う伯爵も思っても居なかった行動に出たのだ。


 それ故に、伯爵も振り上げた拳の振り降ろし先として、神樹帝国を選択する他なくなり、その思惑はまんまと外されてしまっていたのだった。


 もっとも、彼らの軍勢については、装甲騎士もほとんど居ない時点で、戦力的にも全く当てにならない……そうも認識されていた。


 バーソロミュー伯爵も、この戦で彼らにあまり手柄を与えたくないと言う思惑もあり、オズワルド子爵も好き好んで最前線に出て矢面に立つつもりもなく、両者の思惑が一致した結果、彼らは後詰……予備兵力扱いとされていた。


 その軍勢も装甲騎士については皆無で、軽装騎兵が50騎あまりと圧倒的に少なく、その代わりに歩兵戦力は合計で500ほどと、数だけはそれなりの規模の軍勢ではあった。


 もっとも、アスカが指摘したように、少数精鋭で金食い虫の装甲騎士を無理して揃えるよりも、軽装歩兵中心で頭数を重視した軍勢の方が何かと扱いやすく、特に防衛戦に関しては、装甲騎兵はまるで使い物にならず、むしろ歩兵だけでも問題ないと言うのが実情だった。


 これは、貴族たちはともかく、王国の軍事関係者の間では半ば常識とされつつあり、装甲騎士の無敵神話を信じているのは、貴族達と当の装甲騎士達くらいで、まともな前線指揮官は歩兵中心の部隊の方がコスパもよく、その使い勝手の良さも高く評価しており、故にオズワルド軍は決してあなどれないと認識していた。


 そのため、バーソロミュー伯爵配下の歴戦の前線指揮官達は、むしろオズワルド子爵軍を後詰に置くのは、危険だと認識しており、むしろ領地に追い返した上で、手出し無用とさせるか、いっそ最前線にでも送り込んで、その戦力をすり潰させるべきと言う意見もあったのだが。


 ここでオズワルド子爵の軍勢を自由にさせてしまうと、かえって厄介な事に成りかねないし、最前線で下手に手柄を立てられたり、神樹帝国軍と呼応されると、手に負えなくなる事が予想された。


 そして、軍勢だけを追い返したところで、オズワルド軍が伯爵領の後背を脅かす脅威となる事には変わりなく、やはり危険な存在となる。

 

 バーソロミューも、そんな風に配下の者達から進言されており、結局、最前線へ送るのも追い返すのも危険と言う事で、折衷案として、自分の目に届く範囲に配置し、その動向を常に監視し、友軍で取り囲んだ上でその行動の自由を奪うと言う……なんとも微妙な対応に落ち着いた。


 バーソロミュー本人は、オズワルド子爵軍を侮っていたのだが、その部下たちはそうでもなかったのだ。

 何よりも、いつ裏切るかわからない味方ほど、タチの悪いものはなかった。

 

 その編成にしても、長槍とクロスボウで武装した歩兵ばかりだったのだが、ひと目見るだけで練度も高く、その装備も洗練されており、その軍勢を目にした前線指揮官達も内心では、この軍勢だけは敵には回したくない……そんな風に思っていた。


 要するに、装甲騎士については、その無敵神話はすでに過去のものとなりつつあり、最前線に近い者達ほど、割りと使えない兵種だという事は誰もが口にしないだけで、とっくに気付いていたのだ。

 

 それでも、貴族達……各地の領主達は装甲騎士の無敵神話に信仰に近い思いを抱いており、歩兵を削減したり、徴用兵にするといった愚策に走った事で、どこの前線指揮官も装甲騎士については持て余し気味で、中には歩兵のように戦えるように、馬も鎧も捨てた下馬戦闘訓練を熱心に行っているような部隊もあったくらいだった。


 オズワルド子爵は元々貴族らしからぬところがあって、若い頃は冒険者稼業に明け暮れていたと言う経歴の持ち主で、それ故に実践的な思想の持ち主でもあり、先代の急死により爵位を継承しなければ、気楽な冒険者稼業を続けていたかったと言うのは、本人の弁でもあった。

 

 もっとも、限りなく謀殺と言う先代の死に対し、色々と思うところがあったようで、先代の葬儀の当日まで爵位継承の意思を示さずにいたのだが。


 ギリギリになってその葬儀に参列すると、その場で一族と家臣団を集めた上で「いつか必ず先代の仇を取るので皆の力を貸して欲しい」……そう公言した上でその爵位を継いでいた。

 

 当然ながら、オズワルド子爵は軍事についても先進的な考えを持っており、領主として就任するなり、まずはオーカスにて名将としてその名を馳せていたドゥーク装甲騎士団長を軍事指南役として招聘し、実戦で装甲騎士が如何に使い物にならなかったかと言う話や、彼の理想とする歩兵中心の編成や、将来的な歩兵戦術などについても、事細かく話を聞いた上で、手始めに自国の領軍を徹底して再編成することにした。


 その上で、意図的に装甲騎士を全廃し、歩兵中心の常備軍編成の軍勢を構築し、連日の厳しい訓練を施した上で練度を高め、兵達の忠誠心についても、給与や衣食住を含めて待遇を良くし、自らも共に訓練に参加し、常日頃から兵達を言葉を交わし、労苦を共にすることで、信頼関係を構築しており、決して侮ってはならない強力な軍勢となっていたのだ……。


 もっとも、この国の貴族達には、装甲騎士の無敵神話が信仰レベルで根付いており、歩兵中心の軍勢については、はなから戦力外と決めつけており、オズワルド子爵達は完全に侮られていたと言うのが実情ではあった。


 それ故に、バーソロミュー伯爵も立場的に限りなく黒に近い灰色にして、戦力的には最強レベルと評されるようなオズワルド軍という危険な軍勢を、その本丸たるアイゼンベルグの間近に置くという、不用心な真似をして、平然としていたのだ。

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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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