8話。外交官のお仕事①
文章修正の可能性有り
……一人称ってこんな感じでしたっけ?
白昼堂々王都の貴族街でお茶を飲むアンデッドってなんぞ?
『警備はどうなってるんだ!』とか『対アンデッド用の結界はどうした?』とか言いたいところだが、実際にこうして茶を飲んでいるところを見つけてしまった以上、今更騒いでもしょうがない。
……まさかここでこれを放置して、王都でアンデッドによる大破壊が引き起こされても困るぞ。
あ、その騒動で勇者が活躍してモ〇ン様みたいに注目を集めるイベントになる分には良いのか? あぁ駄目だ。そもそもアンデッドと戦わせないために小細工した意味が無くなるじゃないか。
大体、現状では向こうの狙いもわからなければ、勇者たちが対処できるかどうかも分からないんだから、放置は悪手。
少なくともなんのために王都で茶を飲んでるのかを確認しないことには、怖くて夜を迎えることができん。
「失礼。私こういう者ですが、少しお時間よろしいでしょうか?」
取り敢えず接触だ。
話している言葉の内容が理解できるくらいだから、会話はできるんだろ?
いや、あの会話が何かの暗号や、彼らの中でのみ通用するスラングだったらお手上げだけど。
そう思って名刺を差し出してみると、向こうは突然話しかけてきた俺に対して怪訝そうな顔を向けながらも、俺が差し出した向こうの言葉が書かれている名刺を受け取り、その内容を確認しようとする。
名刺を机の真ん中に置いて、そこに書かれた内容を見る二人の女性を見る俺の図である。
二人を観察していると、空色の髪をした女性は?マークを浮かべたような表情で写真と俺を見比べる。それに対して白い少女は、名刺を一瞥してから「ほぅ」と声を出して頷いた後、お茶を一口飲み、更にもう一度名刺を確認している。
(これは、当たりか?)
そう思った時期が俺にもありました。
「……やっぱり読めない」
「えぇぇぇぇ。この一連の思わせぶりな態度はなんだったのぉ?」
「いや、読めない紙を渡されて反応に困っただけ」
「えぇぇぇぇぇ」
空色の髪をした女性がツッコミを入れ、周囲も似たような空気を放つが、少女は何処吹く風と言わんばかりにお茶とお菓子を食べ始める。
俺としても一瞬、日本語が書かれた名刺に反応された? と思って警戒をしたが、さっきから二人が話していた会話から、彼女が所謂『不思議ちゃんタイプ』である可能性も考慮していたので、そこまで驚きはしない。
ただ無駄に疲れただけだ。
「あぁ、失礼しました。では、こちらならどうでしょうか?」
とにかく、気を取りなおしてフェイル=アスト王国で使われている文字で書かれた名刺を差し出すと、今度は両者共に書かれている文字を理解できたようで、俺を見る目が『不審者』から『そこそこ有益な情報を持っていそうな相手』へと変わるのが分かった。
いや、白い少女のほうが何を考えているかはさっぱりわからないが、もう一人の方がそんな感じだからきっとそうだと思う。多分。きっと。
「ふぅん『秋津洲連合皇国所属外交大使・神城男爵家当主神城大輔』ねぇ。この場合は神城サマって呼ぶべきかしら? それとも男爵サマのほうが良いかしら?」
徐々に自信を無くしていく俺に、空色の髪の女性が声を掛けてくる。
危ない危ない不思議ちゃんの思考なんか考えるだけ無駄。
交渉に向いたほうと交渉をすれば良いんだ。
営業の鉄則その① 時間と労力は有限につき、交渉相手は選べ。ってな。
「いえ、外交大使とは言え、この国ではただの食い詰めものですからね。普通に『神城さん』でも、あぁなんなら呼び捨てでも構いませんよ」
「そう。じゃあ神城に聞きたい」
「「「「えぇぇぇぇ。そこで呼び捨てにするの(かい)?」」」」
「なんでしょう?」
「「「「えぇぇぇぇぇ。それでいいの(かい)?」」」」
空色の髪の女性やマルレーンやマルグリットが声を上げるが、何を驚いているんだ? それでいいも何も、元々男爵なんてのは身分を保証するために貰っただけだし、互いの年齢や力で言えば恐らく白い少女のほうが圧倒的に上なんだぞ?
そんな相手に初見で名前を憶えてもらえたなら、営業としては十分な成果じゃないか。
営業の鉄則② 関係者も神様(の一員)です。交渉相手ではない相手でも、不快な思いをさせてはならない。とことん謙るべし。
「む? 何か失礼なことを考えられてる?」
「いやいや、失礼なのはアンタだから」
「私は失礼じゃない。神城が『呼び捨てでいい』って言ったから呼び捨てにしただけ」
「そこは遠慮とかあるでしょう?」
「あぁ、別に私としては問題ありませんので、そのくらいで」
「そう? 神城サンが言うならそれでいいけどさぁ」
「ふふん」
「……なんかムカつくわね」
俺が歳のことを考えたのを察したのか、白い少女が一瞬剣呑な雰囲気を出してきたが……完全に桁が違う。あのままだと殺されていた、な。やはり王都に乗り込む実力者は格が違う。
「それで、話の続きなんだけど」
「えぇ、はい。なんでしょう?」
争っても勝てないなら争わない。向こうもここで暴れる気は無いようだし、交渉で済むならそうするべきだろうよ。
ただ、今回は情報交換ではなく、一方的に渡すことになりそうだがな。
……どこまで情報を開示するかを考える俺に、白い少女が話しかけてくる。
「秋津洲連合皇国なんて聞いたこと無い。何処にある国?」
「あ、それは私も気になってたのよね。失礼だけど聞いたこと無い国だし、てっきり大陸の外の国かなぁって思ってたんだけど、実際のところどうなの?」
「あぁ。そうですねぇ。わかりませんよねぇ」
普通に聞けば空色の髪をした女性の言葉は『お前の国なんか知らねぇよ』と取れる言葉だ。さらに挑発などではなく、自然体から出された本心なのは彼女のことを知らなくても分かることなので、何も知らなければ(こいつも大概失礼だな)と思うかも知れん。
だが白い少女の正体と、その実力を垣間見た今、そんな感想を抱くことすら自殺行為だ。
俺の目の前に居るのは圧倒的な実力を持った、それこそ片手で俺を殺せる実力者だということを忘れてはいけない。
それにまぁ、実際この世界の人間に秋津洲連合皇国とか言っても分らんだろうし、なんなら勇者たちだってわからない可能性だってあるんだから、ここで『知らない』と言われたところで俺が怒るはずもない。
もしかしたら挑発して俺を怒らせるつもりなのかも知れないが、その手には乗らんよ。
営業の鉄則③ 頭を下げるのは恥ではない。お客さんを取られることが恥なのだ。故に、厭味ったらしいお客さんに「T山薬品? 知らないわねぇ」と言われた際でも、怒るのではなく『自社の製品を売り込む機会を得た』と思うべし。
「ん~。細かい位置の説明は難しいですし、下手をすれば国家の機密にも当たることですので、このような往来で色々とご説明するのは難しいところです」
「まだるっこしい。……つまり『秋津洲について知りたかったら神城の家までついてこい』ってこと?」
「……えぇ。そうなります」
「ふぅん。まぁどうせ暇だったから良いけどさ。つまらない話だったら怒るわよ?」
怒る、か。彼女の怒りの発露が王都にどれほどの被害を齎すか、そして王都に居る戦力でそれを止めることができるかどうかを見てみたいところではあるが、その場合俺の家が爆心地になるよな。
……よし、怒らせたり焦らしたりするのは却下だ。
「おそらくお嬢様方が望む情報を提供できるかと思いますよ?」
「その心は?」
「察するにお2人は、先だって召喚されたという勇者について知りたいのでしょう? 少なくとも私は立場上、その辺にいらっしゃる貴族の方々よりも事情に詳しいと自負しております」
「……へぇ」
「神城はなんでそう思った?」
両者から感じる視線が変わった。これは警戒? いや、違う。いつでも潰せる虫を警戒するような性格ではないだろうから、これは値踏みか。
交渉相手として考えれば、必要以上に高く見積もられても困るが、あまり安く見られても困る。つまり、ここは攻めるべきところだ。
「この時期に王都に来る他国の貴族の用向きはほとんどが勇者関連ですからね。きっと貴女方も同じかと思いまして。もしかして違いましたか?」
さて、どう出る?
「なるほど。私たちが他国の貴族と気付いたのは何故?」
そこからか? 引っ掛けでもするつもり……ではないな。これは素でそう考えてるっぽい顔だ。もう片方も疑問に思っているみたいだし。
「お嬢さん方のような目立つ方を知らないはずがない。というのもありますが」
「「ありますが?」」
「少なくとも私が知る貴族のお嬢さんは、カフェで出されたお茶やお茶菓子の値段についての品評はしませんね」
「むぅ」
「あ~そう言われると弱いわねぇ」
護衛が居ないのも有り得んが、それは指摘しないでおこうか。
「ご理解いただければ幸いです。それで、どうします?」
できたらここで交渉の糸口をつかんでおきたいところだが、どう出る? 俺がそう考えていると、二人は互いで目を合わせながら意思疎通っぽいことをし始めた。
念話ってやつか、それとも魔族の技術かは知らないが、深くは突っ込まないでおこう。
「(どうする?)」
「(行くべき)」
「(罠の可能性は?)」
「(あったとしても踏みつぶせば良いだけ)」
「(まぁそうか)」
「(だいたい、なにかあっても情報だけもらって逃げれば良いだけの話)」
「(それなら勝手に戦闘をしたことにもならないし、魔皇様にも怒られない、かな?)」
「(うん。極論すれば私たちが魔王軍だと思われなければ良い)」
「(面倒だけど、今回の私たちの仕事はあくまで『偵察』だもんねぇ)」
「(そう。ゲームはルールを守ってやるからおもしろい)」
「(所詮は暇つぶし、か。なら誘いに乗ってあげましょうか)」
「(それが良い。ついでに言えば、最悪でも秋津洲連合皇国っていう聞いたことが無い国の情報は得られるから)」
「(未知、ね。魔皇様が喜ばれそう)」
「(そう。それじゃ神城に返事をしようか)」
「(りょーかい)」
「神城。よろしく」
「はい? あぁ、もしかして『ついていってやるから情報よろしく。ついでにお茶とお菓子もよろしく』ということでしょうか」
「そう。良く分かった。偉い」
「いや、なんで分かるのよ」
「勘、ですかね」
良かった。いきなり白い少女のほうから『よろしく』と言われて混乱しそうになったが、なんとか正解したようだ。
「マルグリット」
「は、はい」
「聞いたな? 屋敷に連絡を頼む。ルイーザに今用意できる一番良い茶と茶菓子を用意するように伝えてくれ。大至急、最優先で、な」
「はい! 畏まりました!」
屋敷に向かってマルグリットが走り出す。
「さて、誘っておきながら恐縮なのですが、御二方を歓待するために多少のお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「私はかまわない」
「えぇ。突然だから仕方ないわよねぇ」
「ありがとうございます。それで、恐縮ついでに一つよろしいですか?」
「何かしら?」
「内容による」
「よろしければ、御二方のお名前を教えていただけますか?」
「おぉ。それは盲点」
「あぁ~名乗ってなかったわね」
侯爵の時もそうだったが、相手が自分の名を知っていることが常識ってのがなぁ。
いや、この場合は人間に対して名乗る気がなかっただけかも知れんけど。
どちらにせよ二人とも自分が高位の存在であることを疑っていないってことは、他者にそれを強要できるだけの立場だってことでもある。
……厄介な相手と接触してしまったことは確実だな。
内心で自分の運の悪さを嘆いている俺に、両者は名乗りを上げてくる。
「私はヴァリエール。家名はお忍びだから言えない」
「私はアテナイス。家名は同じく言えないわ」
白い少女がお忍びであることを堂々と口にしながら名乗れば、空色の髪をした女性もそれに便乗して名乗りを上げる。
(お忍びなのも嘘ではないでしょうが、実際は違いますよねぇ)
「む? 何か、失礼なこと考えてる?」
「いや、お忍びなのを堂々と言われても反応に困るなぁ、と」
「あ~それはそうかも? ごめんなさいねぇ」
「それは気付かなかった。やるな、神城」
「アハハハハ。恐縮です」
……名前を聞くだけで疲れた。
そんなこんなで交渉開始
神城君は日本国出身です。秋津洲連合皇国については、まぁ色々な思惑があってこのように名乗っているもよう。
神城君のキャラ崩壊? 小物は準備や予備知識が有ってはじめてまともにプレゼンが出来るのです。
まぁ、徐々に小物からは逸脱し始めているんですけど、その辺はおいおいってお話
―――
三人称ばっかり書いてて、ただでさえ下手な一人称描写がますます微妙に……
訓練された読者の方々なら、きっと行間を読み取ってくれる筈!
そんな読者様に丸投げな拙作をよろしくお願いします!
え? 歴史に間違えて投稿? ハハッ。なんのことやら?(ΦωΦ)?
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