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10話。神城も考える

文章修正の可能性有り

エレナたちが「どうやって既成事実を作ろうか?」と議論をしているのと同じころ、彼女らから研究室に籠って薬を作っていると思われていた神城は、薬を作りながらも自分がダンジョンから帰還した後に受けた鑑定の結果についての考察を行いつつ、今後の自分の扱いに対して浮かんできた一つの懸念に頭を悩ませていた。


ちなみに、鑑定の結果は以下のとおりである。


名前:神城大輔 レベル5

職業:薬剤師  レベル27


スキル:薬術?(診断・成分摘出・成分分析・成分調整・製剤・投薬・薬品鑑定・毒無効・調剤)


見ての通り、非常にアンバランスなレベルとなっていた。


「……個人レベルが5で職業レベルが27、か。それにスキル『調剤』が追加されているな」


個人レベルに関してはエレン曰く『普通に成長していれば4にはなる』そうだから、一度のレベリングで5になってもそれほど違和感はなかった。そのため今ここで神城が問題とするなら、自分の予想以上に上がっている職業レベルのほうだろう。


「うーむ、このレベルの上がり具合は、アレか? 作った薬の難易度に応じた経験が入ってきた結果か?」


この時の神城がイメージしたのは、必要レベルが高い物品を作ることで、錬金レベルを上げる某アトリエゲームだが、実際のところその想像通りで間違ってはいない。


何せこれまで神城が簡単に製造しているように見える各種薬は、原材料から直接『成分摘出』を行い、摘出した成分を『成分分析』し、分析したモノを『成分調整』したうえで『製剤』するというスキルを駆使した結果出来上がった産物である。


このように、レアな職業のレアなスキルを駆使することが必要とされる薬の製造難易度が低いはずも無いし、更に言えば出来上がった薬品を『薬品鑑定』した後に『投薬』を行い『診断』で経過確認までしているのだ。ここまでスキルを使用して職業レベルが上がらないはずが無い。


なのでこの個人レベルと職業レベルの差は、当然発生して然るべきものであった。それに関して漠然とではあるが理解した神城の次の興味は、レベルそのものと後天的に生えてきたと思われるスキルの『調剤』であった。


と言っても、これに関しても悩むようなことではない。


「レベルは10が上限と聞いたような気もするが、あくまで『一次職は』って話なんだろうな。そんでもって『調剤』に関しては、職業レベルが10とか20を超えた時に生えたってところか?」


神城はそう考察するも、実際のところ『調剤』のスキルが生えたのは職業レベル云々ではなく、各スキルの熟練度がある一定以上のラインを越えたからなのだが……これに関しては、そもそもスキルの熟練度は職業レベルと比例するものだし、他の職業でもこういった勘違いは結構あったりするため、神城の勘違いとも言い切れないところである。


そんな神城の勘違いについてはさておくとして。今は新たなスキルについてである。


「しかし『調剤』か。そういえば今まで無かったんだなぁ。けど、こうして手に入れた以上、ようやく堂々と【薬剤師】って名乗れそうだな」


神城は自身のスキル欄を見てしみじみとひとりごちる。


そもそも『調剤』と言えば『製剤』に並ぶ薬剤師の代表的な職務だ。


その内容を簡単に言うなら、


・処方箋に基づいて医薬品を揃え患者に交付すること。

・医師らが発行した処方箋が正しいかを確認し、薬剤の計数・計量を行い患者に薬剤を交付するまでの一連の流れのこと。


の二点を指す。


つまりこのスキルは【薬剤師】を名乗る以上は絶対に必要なスキルであると同時に、単体で効果が出るようなタイプのスキルではなく、他のスキル、具体的には『製剤』と『投薬』そして『診断』といった『既存のスキルの効率を向上させるような効果が見込めそうなスキル』だと思われる。


「……自分で考察しておきながらかなり曖昧なところに一言ツッコミを入れたくもなるが、まぁあれだ。実際、効果は使ってみなければわからないし、今のところは仮説のままでも仕方ないよな」


何に言い訳をしているかは不明だが、とりあえず神城は自身のスキルについては「要経過確認(人体実験)」という形で纏めることにして、次の考察に移ることにした。


その考察とは『自分はどのくらい強いのか?』ということである。


勿論神城とて、この世界に来るまで戦闘を経験したことが無い自分に戦闘技術が皆無であることは重々承知しているし、職業による後天的な補正があっても、所詮は微々たるモノであることを自覚している。


また、戦闘力は身体能力と技術の掛け算だと思っているので、戦闘技術が拙い今の自分は、一人前と言われる戦士と比べれば未熟に過ぎるということも分かっているのだ。


しかしながら、ゴブリンだのオークを一撃で爆発四散させる自分は最早一般人とは一線を画す力があるということも確かだろう。


そもそも単純なステータスを考えればわかることだ。


一次職である【戦士】のステータスに於いて、力はDであるとされている。

この場合一度のレベルアップで向上する数値は6-10。


対して神城の【薬剤師】の場合力はBで、向上する数値は16-20となる。


つまり一度のレベルアップで、最低でも6。最大で14の差が生まれることになるわけだ。これは職業レベルだけでなく、個人レベルが上がった際も同じだけ差が生まれてしまう。


つまり今の神城の力のステータスを数値化した場合、最大で20 (上昇値)×5 (個人レベル)=100に20 (上昇値)×27 (職業レベル)=540を足した640になる。


この数値は、もし天職の無い者がここに至るには、最も単純に考えても【戦士】を10レベルにした他に、もう一つなんらかの戦闘系の一次職を10レベルに上げ、さらに二次職の戦闘職を10前後にしたうえで、30強の個人レベルが必要となる数値である。


一応、職業に関しては一次職と二次職では同じDというランクであっても、数値の平均上昇値に違いが出るといった研究もあるらしいので、細かいところはさて置くとしても、個人レベル30以上ともなれば、一般的な兵士や冒険者の中では十分中堅どころと言っても良いレベルであろう。


無論のこと、最前線に赴く兵士や決戦兵力として期待されている【勇者】たちはこの程度で満足するわけにはいかないのだろうが、神城は前線に赴くことを期待された戦闘職ではなく、後方で国家を潤すことを期待されている生産職。


更に言えば上記に挙げたのは単純な力のステータスでしかない。


基本的に神城のステータスは知力・魔力・精神がAで器用さがSという後方特化型なのだ。このことを考えれば、現在の神城は『中堅どころの力を持つ後方支援職』という、見る人が見れば「チーターや!」と言われても仕方が無いほどのチートを宿した存在と言えよう。


そんなチートの持ち主である神城が懸念していることとは何か? と言うと。


「これ、もしかして俺も前線に送られるんじゃね?」


という心配であった。


元々自分たちはそのために召喚された存在なのだ。それを知るからこそ、神城は初日からなんとかして戦争から逃れるための方策を練った。


そして自分が貴族になるよう交渉したり、自分しか製造できない薬を作ることで己の価値を高め、着実に足場を固めてきたつもりだし、特に野心が無いことを証明すると同時に貸し借りを発生させないようにするため、侯爵や王家に対して何かを求めるようなことをしてこなかった。


こうして神城は王国側が『生産職に過ぎない神城を前線に出そう』などとは考えないようにするために動いてきたのだ。


しかし、ここで神城も予想しなかった事実が判明してしまう。

そう。神城は、他でもない自分自身で『単独でも魔物と戦えることを証明してしまった』のである。


現在のフェイル=アスト王国は、神城に対して屋敷を与えたり、自由気ままに研究やレベルアップをさせる余裕があるように見える。しかし、だ。所詮この国は異世界から子供を誘拐してまで戦力を求めるほどに戦力に窮している国でしかない。


そんなところに突如として現れた即戦力を見逃すなんてことがあるだろうか? 


答えは否。


戦時中の国家である以上、美容に良い薬などよりも戦を重視するのが普通だろう。


ここまで考えた神城は「さて、どうやって戦役から逃れるか……」と、これから近いうちに来るであろう『赤紙(徴用令状)』に対し、どのように抵抗するかを真剣に思い悩むことになる。


……このとき寄親である侯爵家では『神城を戦場に出すことは無い』という思惑で一致していたのだが、それは神ならぬ身では与り知らぬことであった。







好き勝手やっているようで、色々と考えている神城君の巻。

え? 王国の為に戦場に行く? (ヾノ・∀・`)ナイナイ

え? 勇者(子供)たちの為に戦場に行く? ( ゜д゜)、


あくまで自分第一ですってお話。



―――


今回もクレクレのネタが無いので素直に行きます。


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