2話。プロローグのような何か(2)
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そもそも神城という人間は特別な人間ではない。
それこそ石を投げれば当たる。と言われるような、どこにでもいる普通の営業マンである。
一応、遥か昔には『物語の主役になりたい』と思ったことが無いとは言わない。しかし社会人として生きていく中で現実と向き合ううちに、そのような願望は完全に風化していた。
若さ故に持ち得る冒険心は鳴りを潜め、残っているのは『どれだけ日々を穏当に過ごしていくか』という山も谷も求めぬ安全第一思考。
ついでに言えば、独身のために養う妻子がいるわけでもなかったし、彼女もいなかった。食事は専ら外食で、大体はコンビニで済ませたし、贅沢といえば給料日にちょっと良いものを食べたり、余裕があるときには発泡酒ではなくビールを買って、少し高めのつまみを付ける程度の贅沢で十分以上に満足を覚えることができていた。
結局神城大輔という男は、それなりに働いて、それなりに貯金をして、それなりに暮らす。そんな、どこにでもいる36歳の独身男性だったのだ。
そんな『穏やかな日々を送ることこそ幸せ』という価値観を持つ神城が、女神からこの中世ヨーロッパ風な世界に飛ばされることを知った際、最初に考えたのは『どうやって安全な立場を得るか』ということであった。
なにせ中世ヨーロッパと言っても、その幅は広い。
政治体系だけでも、専制君主制なのか絶対王政なのか帝政なのか宗教至上主義国家なのかはたまた議員議会制等々様々な形があるのだ。
加えて召喚の目的が『戦争に利用するため』と知らされていたのだから余裕などあるはずもないし、加えて呼び出されるのが『中世』だ。人権などといった概念がない(もしくは極めて薄い)時代に在って、専門知識や技術を持たない兵士がどんな扱いになるか想像に難くはなかった。
また、万が一にも戦争で生き残り、あまつさえ功績を上げることができた場合の扱いも怖いところだ。
なにせ向かうのは『中世』である。
(戦に利用するために呼び出した存在に恩情を与えるような価値観があるのか? 狡兎を狩り尽くした後、走狗は走狗のままでいられるのか? 正当な評価をもらって称賛されるか? 隠居ができるか? ……ありえない。『騙して悪いが』と切り捨てられるのが関の山だ)
神城はそう考えた。
(少なくともどこの馬の骨とも知らぬ相手に「よくやった。ほうびにひめをめとらせよう」とはならないだろう。ならば必要なのは……)
ゲームや小説でしか知らないが、貴族の選民思考を軽く見ることができなかった神城は、これから飛ばされる世界に於いて自身の安全確保のために何が必要なのかを考え、真っ先に『特殊な技術』と『貴族の立場』を得る必要があると考えたのである。
そんな下心もあって、神城は自分に謝罪をする女神から【薬剤師】という職業をもらったうえに、召喚初日から色々と小細工を弄してお偉いさん(ラインハルト)との交渉に臨み、向こうの情報不足を突きつつ、T山薬品の成功例を基にしたプレゼンによるごり押しで、準男爵という最低限の立場を得ることに成功した。
また、偶然ながら薬剤師という特殊な職業に付随していた特殊なスキルを使用した結果、自分しか作れない薬(化粧品)の製造ができることが発覚。
それを以て、王国上層部に対して『自分は替えの利かない存在である』とアピールし、今ではそれなりの扱いを受ける立場となることができたのである。
……まぁ、王国上層部が化粧品の存在を知る切っ掛けとなったのは、神城を探るために派遣された侍女長の暴走によるところが大であるが、それについて言及しても誰も得をしないので、この場では省略させていただく。
とりあえず、立場を得た数ヶ月後には自分より化粧品に詳しく、さらに『付与』という保存向きのスキルを持つ同輩の女子高生キョウコを確保したことで、神城印の化粧品は一定の品質と数量を保ったままでの生産が可能となった。
これらの事情により「ようやく一息吐けた。あとは少しずつ足元を固めていこう」と、張りつめていた気をやや緩めた神城であったが、残念ながら世界はそう簡単に神城を楽にはしてくれなかった。
静かに暮らしたい。それだけを願う神城の前に現れた世の不条理の権化。
それは勇者を探るために王都に侵入してきたヴァリエールとアテナイスという魔族の幹部(実際は幹部どころではない)だ。
その二人は、見た目だけなら風変わりな貴族のお嬢さんであった。そのため、このとき神城が何もしなければ、なんの問題もなくやり過ごすことができたのかもしれない。
しかし、残念というかなんというか、二人に違和感を覚えた神城は自身の持つスキルをヴァリエールに使用してしまい、彼女がアンデッドであることを看破してしまったのである。
もしこのとき神城がヴァリエールを指して「あいつはアンデッドだ!」などと騒ぎ立てていたなら、二人はその場で神城を殺して王都を去っていたであろう。
だが、幸運にもそうはならなかった。
それは、神城が魔族を敵として認識していなかったことや、魔族の情報を集めることの重要性に気が付いていたため、二人に交渉を持ち掛けたからだ。
結果だけ言えば、このときの神城の判断は間違っていなかった。
その場で殺されなかったことはもちろんのこと、両者との会談(ヴァリエールとアテナイスは茶飲み話程度にしか認識していないが)によって、これまで王国上層部すら掴んでいなかった情報を多々得ることができたし、向こうがそれを明かしてないにせよ『魔族との交渉を成功させた』という実績を作ることができたからだ。
(まさか口から出任せのつもりだった外交官が本当のことになるなんてな。想定外も良いところだ)
……当の本人が今以上の役目を抱えることを良しとしているかどうかはさておくとしても、少なくとも神城が自分で主張した『外交官』としての実績を積んだのは事実である。
しかしそれは同時に向こうからも神城が外交官として、交渉の窓口扱いされることを意味していた。
(魔族に目を付けられたとも言うが、まぁ今更だな)
仕事が増えることに内心でうんざりしつつ、交渉に失敗すれば死ぬことになりかねない、否、なんなら茶飲み話の最中に向こうを不快にさせただけで死んでしまう可能性がある以上、情報と知識の取得は必要不可欠であると割りきる神城。
(怠けたらリアルに死ぬ。怠けなくても気を抜いたら死ぬ。気分はデスマーチというよりスペランカーだな。死亡フラグが多すぎる。……あれ? いや、これってもしかして)
まるで2ヶ月目に『新しい契約を取ってこい。取ってくるまで戻ってくるな』と言われて東京のコンクリートジャングルに放り出されたときに匹敵する孤独と恐怖を感じながら異世界の常識や慣例を学ぶ中、神城はふとしたことから一つの可能性に気が付いてしまう。
(うん。間違いない。これ、魔族が本気を出したら詰むんじゃね?)
その発見は、これまで自身が掲げてきた『いのちだいじに』という方針を、根本から覆すものであった。
プロローグというか前章までのあらすじって感じですかね?
ある意味正しいプロローグかも?
神城は何に気が付いたのかってお話
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ドーモ。親戚一同に身バレした作者=デス。
姪っ子の同級生もなろう小説書いてるらしいっすよ。 いや、まじ、こんな作者で申し訳ない。
身バレするとこれまで普通に投稿していたアホなネタや下ネタが書き辛くなりますので、皆さんも身バレには注意しましょう。
え? 宣伝? うん、まぁ、あれですよ。
書籍版買って下さい!よろしくお願いします! (素直)
なんでもしますん!(素……素直?)
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