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クラージュ・イストワール  作者: はんな
第Ⅰ章 森と戦士の国 アルスター 編 ―紅棘の死の魔槍―
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第13節 この手に正義を

 勝負が始まった‼勝つのは、どちらの正義か?

 マリアンが彼の名を叫んだ直後、焔は天高く舞って弓を構える。魔術で作った爆弾矢を一つ、ロビンの後ろにある城壁に放った。轟音と共に壁は吹っ飛ばされ、民衆は混乱する。そして、もう一つを反対側の城壁に放った。

 見事に二つ命中する事が出来た。焔は、覚悟を決めてアーサーにフードを外す様に言う。


「キュ‼」


 アーサーはフードを手放して、焔は見事に城壁の上に着地した。ノーディンは、彼女の服を見て思い出す。


「あの小娘‼」


 震えて立ち上がれないようにした彼女がここにいる事に驚いた。エマは、直ぐにジョンと共に処刑台の方へ向かい、タックと共に処刑人を殴って仲間たちを救った。


「父さん‼母さん‼」


「マッチ!」


 ジョンとエマは息子を抱きしめた。そして、ブランドはノーディンの指示で進撃する兵士たちを塞ぐべく、門のロープを切って城門を閉じて成功させる。

 (レイ)は、もっと援軍が必要だと感じて旗を召喚して、それを手に拡散魔術で民衆に訴える。


「皆の者!聞いて欲しい。」


 彼女の言葉に、混乱する民衆は何だと鎮まる。


「私は、新米騎士の式守焔です‼もし、明るい未来を望むなら、より良い明日を望むのなら‼我らの英雄ロビンに続け‼立ち上がれ‼立ち上がる事を望むなら、共に戦いましょう‼」


 焔は旗を掲げてそう言う。彼女は、聞いてくれても望み通りになるとは思えなかった。しかし、彼女の言葉に頷く者が多く、身近な物を武器として手にして立ち向かっていった。


『おぉぉぉぉぉぉぉ‼』


 焔は予想外だったが、これで多少の援護にもなっている。彼女は旗をしまって城へ向かいたいが、城門は閉じられている。周囲を見渡すと、森に火を放った投石機があった。ノーディンは、強引にマリアンを連れて城の内部へと連れて行く。


 “マリアン‼アレを、使ってみる?”と焔、

 “いい方法かもしれない。イチかバチかやってみろ”とエフ、

 “大ジャンプか‼滾るぜぇ!”とホムラは思う。


 焔は走って行き、ジョン、ウィル、タックにお願いをした。ロビンは生き残っている敵兵を矢で討伐し、城に乗り込もうと考えていた。


「ロビン‼コレに乗って!」


 投石機に乗っていた焔を見て、ロビンはニッと笑って投石機をジョン、ウィル、タック、民衆たちと共に運んで、焔の隣に座る。ウィルは投石機を操作して、準備は良いかと尋ねる。ロビンは、焔の手を優しく強く握って―


「上げてくれ‼」


 と言った。ウィルは、操作をして投石機を動かした。焔とロビンは見事に城門よりも上へと打ち上がった。焔は、余りに勢いに荒々しい高音で叫んでしまう。ロビンは、空中で彼女を自分の方へ寄せる。二人は、藁の山に無事に着地した。藁がクッションになった事で、無傷に済んだ。


 “はぁぁぁっ‼怖かったよぉぉぉぉ‼”と焔、

 “そうなのは山々だけど、敵が来るぞ!”とユウ、

 “焔。一緒に戦いましょう!”とレイは思う。


 直ぐに立ち上がって焔は脇差を抜いて構える。ロビンは、兵士が落とした剣と傍にあった斧を拾って、斧を城門を閉ざしている重りを繋ぐ鎖に向かって投げて破壊した。


「行くぞ、焔。」


「あぁ。マリアンを助けてやるぜ‼」


「キュウ!」


 (ホムラ)は先陣を切って斬りかかる兵士を倒して行き、アーサーは火炎放射で援護する。ロビンは、彼女を案内しながらマリアンの元へと向かった。


 “マリアン、今、行くからな‼”


 同時刻。マリアンはノーディンに強制に連れられ、祭壇のある部屋へと連れて行かれる。


「嫌‼離して‼」


「来い‼」


 マリアンは必死に抵抗するも、ノーディンは力で離さずに連れて行く。祭壇のある部屋に行くと、マリアンは垂桂髻の髪型をした女が立っていた。そして、隣には司祭がいた。


「うん。良い顔をしたお嬢さんだ。」


 “男の声なのに、女の顔?どういう事?!”


 マリアンは女の謎に困惑する。


「さぁ、早く婚礼の儀をすませよ。」


「は、はい…。」


 司教は聖書を開いて、婚礼の儀式の文を読み始める。ノーディンは、省略するように指示する。


「えぇ、汝、マリアンとジョンを夫婦とし善き時も、悪き時も、共に歩み、愛を誓い、神聖なる婚姻とします。」


 司教は退けながらそう言い終えて、部屋を立ち去った。女は、ニッと微笑んで、ドアに開けぬ様に魔術を施した。ノーディンは、マリアンを力強く床へ押し倒し、ドレスの外装を外して行く。危機感を募らせたマリアンは、愛しい人の名を呼ぶ。

 一方、(ホムラ)は、ロビンに案内されつつ、先陣を切って敵を斬り伏せていた。一瞬だけ、敵の声が消えた時、二人はマリアンの叫び声を聞いてその部屋へと向かう。


「マリアン‼」


 焔は扉を刀で斬りかかるが、ビクともしない。扉には、魔法陣が施されている。


「クソ!魔術か。ロビン。ここは時間がかかる。他の侵入経路があるか?」


「いや、隠し通路があったとしてもどこかは分からん。……待てよ。外から行けるかもしれない。ここは、任せたぞ!」


「はい‼……マリアンさん、待っててくださいね‼ロビンが来るから‼」


「フォォォォォォォッ‼」


 アーサーは体当たりで扉を攻撃し、焔は刀で攻撃を続ける。その音は、向こうの部屋に勢いよく届く。ノーディンは、その音が邪魔だったので、女に指示をする。


「あの音を出す奴を始末しろ‼」


「御意。」


 女は、そう言って魔術で部屋を去った。ノーディンは、マリアンに言う。


「俺の物になれ‼」


「誰が、貴方の物になりますか‼」


 マリアンは必死の抵抗だが、ノーディンはそれ以上の力で彼女を伏せる。その間に、ロビンは急いで城の屋上へ行き、垂れ幕の一番長い布を引き上げる。上が縄で固定されている事と幕はマリアンのいる部屋まで届く事を確認し―


「いっけぇぇぇぇぇぇぇッ‼」


 と叫んで、垂れ幕を縄代わりにして飛び込んで、マリアンと仇敵のノーディンの部屋の窓を突き破って入った。奴は、ロビンが予想外の速さで来るとは思わなかったが、直ぐに自分の剣を取って構えた。マリアンは部屋の端へと急いで移動する。

 ロビンは剣を構えたが、奴の持つ剣に見覚えがあった。


「貴様、その剣は!」


「覚えていたか。そうだ。これは、お前の親父の剣だ。」


「チッ‼ここで、決着をつけるぞ!」


 ロビンはそう言って、ノーディンと騎士の決闘である一騎打ちに入った。

 焔は窓ガラスの割れる音と剣の刃がぶつかる音と物音で、決闘に入った事を知る。すると、アーサーが後ろを向いて火炎放射をして威嚇をする。焔は振り返ると、そこには神殿で遭遇した女の魔術師だった。


「…っ‼貴様‼ノーディンの手を貸していたのか…。」


「理解が早い()だ。それにしても、赤き竜を連れているとはね。」


 赤き竜。アーサーの事を指している。焔は不思議に思ったが、今はそれ所では無い。


「お前の目的は?それに、女の身なりで、何故男の声なんだ?」


 (エフ)は、切っ先を魔術師に向けて尋ねる。ローブの中の服装を見えなかったが、女はどことなく宗教的な洋服、まるでSFに出て来るような恰好だった。女は静かに答えた。


「体は別だよ。声はとある場所から話をしているだけさ。……奴に協力、と言うよりは導きを示しただけだ。そして、この世界に悪が満ちる時、黄金たる終焉(しゅくふく)が訪れる。」


「黄金たるしゅくふく?祝福とは何だ?」


「それを教えるなら、君を贄とするしかないけどね。」


 魔術師はそう言って手を翳す。焔は危機を感じた時、ジュヌヴィエの言葉が脳裏に浮かんだ。


 『もし、貴女が最大の危機を感じた時に使用するのが得策でしょう』


 彼女は刀を納めて、ある武器を召喚して手にする。それと同時に、密かに彼女へかかっていた呪いが弾き飛ばされる。


「何だ?……ッ‼君の持つ武器は!」


「せやぁ‼」

「キュウ!」


 焔とアーサーは同時に、女へと斬りかかった。女はサッと避けて、片手に透明な黒水晶を持って魔術による攻撃を始める。焔は、聖槍で魔法を弾き飛ばして突き技の攻撃をして、槍を床に突き刺して―


「ちぇいやぁぁぁぁぁぁっ‼」


 右足の見事な蹴りと身体強化で女を壁に打ち付ける。壁には罅が入り、少しだけ崩れた。女は、よろめきながら立ち上がる。


「侮っていたよ。でも、ここで引くわけにはッ!」


「させるかぁ‼」


 焔は、女の魔術攻撃を避けると同時にドアにかけられている魔術が弱まっているのが見えた。

 一方、ロビンはノーディンとの一騎打ちが続いていた。マリアンは端に避難していたが、ロビンを死なせないと言う思いで周りにある長椅子を蹴ってノーディンの邪魔をする。

 ロビンは、ノーディンへ攻撃する。しかし、奴は直ぐに剣を構えて反撃する。互いにかすり傷を負い、どちらが勝つかは分からない互角の戦いだ。

 そうとは言えど、体力の限界もあった。


 “クソ……もっと体力があれば…‼”


 ロビンは必死に戦い、鋼をぶつける。その時、彼の持っていた剣が折れてしまい、瀬戸際となる。マリアンは、その隙を見て近くの蝋燭をノーディンに向けて投げ、背中を火傷させた。


「イッ‼……悪くない攻撃だ。だが、コイツはもう終わりさ。それを、その目に焼き付かせよう。」


「嫌っ‼」


 マリアンは止めようと一歩踏み出した時、ノーディンは心臓に何かが刺さった感覚が走って振り返る。なんと、ロビンは隠してあった弓で心臓に向けて放っていた。彼は、ノーディンが剣を手から放したのを見て、勢いよく奴を窓の外へと蹴飛ばして体にもう一本の矢を打ち込む。


「弔いの樹、毒の樹、奪われた悲しみを穿ち、牙をむく。……櫟の弔いの矢(イチイ・ボウ)‼」


 ロビンは呪文を唱えると、落ちて行くノーディンの体が毒に侵されて内臓が爆発した。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 焔:勝ったんだもんね、あの時。


 ロビン:あぁ。シルフが暮れた櫟の弓、大いに役に立った。


 焔:ロ、ロビン‼……でも、マリアンを助けられて良かったな。


 ロビン:ま、まぁな。


 焔:何照れているの?あ、私邪魔だった。あとはよろしくね。…二人きりにしないと…。


 ロビン:お、俺だけ?…じ、次回。『第14節 勝利と帰還』。何を緊張してんだ?俺…。

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