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さいのかわらは夢河原  作者: ぎん
1/5

子供の無念とさや頭巾

目の前で、幼い少女が石を積んでいた。ゆっくりと1つずつ。


大きな石。小さな石。角ばった石に丸い石。


まるで1枚絵のように、その光景は妙にぴったりとしていて、少女を見る男はただ呆然としていた。


頭には、赤いリボンがついた大きな麦わら帽子。首の下が涼しそうな白いワンピースに、猫のキャラクターの顔を型どった赤と白のつやつやしたビニールサンダル。


手を伸ばせば触れられそうなくらい側に屈む石を積む少女のワンピースは、無理やり引きちぎられたようにところでどころがほつれ、破れていた。


肩まで伸びた髪の毛も、似つかわしくなくぼろぼろで、傷ついている。


腕や頬。そして足。目につくだけでもいくつか見える痛々しいアザのようなもの。


そんな少女がゆっくりと1つ1つ確実に、石を積んでいた。



「…………?」


少女が一瞬、見上げるようにして男を見た。


しかし、すぐに顔を下げ、また小さな手で石に手を伸ばし、1つ積む。


すると、すーっとささやくようなひんやりとした風が少女と男の間を吹いた。


少女のぼろぼろな髪の毛が少しだけ揺れるそんな風。


その風が止むと、男はゆっくりと少女の前にかがんだ。


少女の顔の高さに合わせるようにゴツゴツした石に満たされた、かわらにあぐらをかいた。


そしてまたしばらくの間、石を積む少女をじっと見つめる。



晴れでもない曇りでもない。暑くもない寒くもない。


そこはまるで現世ではないような。



そんな場所に流れる河原の側で、少女はゆっくりと石を積み続けていた。











変な夢を見た。


男をそう思いながら、使い古した布団からむっくりと起き上がる。


時刻は夜の9時。雨は降っていないかと確認したアパートの窓の向こう側はすっかり暗い。


雲で空に星は見えないが、雨はまだしばらく大丈夫そうだ。


男はそれを確認すると、テレビを点ける。


何の気なしに写し出されたテレビ画面に男は釘付けになった。


「こちらは栃木TV。視聴者多目的チャンネルです。先週から行方不明となっております、さくら市の大岸みなもちゃん6歳の情報提供を栃木TVでも募集しております。連絡先は………」



回したつもりのない地方局の放送。そこでは、行方が分からなくなっている隣町の女の子のニュースが繰り返し流れていた。


名前と一緒に、顔写真もテレビに出ていた。


大岸みなもちゃん。6歳。



まさに今、夢にいた石を積む少女によく似ていたのだ。


「繰り返しお伝え致します。さくら市の大岸みなもちゃん、6歳。行方不明の服装は、夏物の白い丈の長いワンピースに、ネコのキャラクターの形をした赤と白のビーチサンダル。赤いリボンが巻かれた麦わら帽子も身につけていた可能性もあるとのこと。心当たりのある方は、どんな些細なことでも構いません。最寄りの交番、警察署、またはこの栃木TVでも受付ており………」



男はテレビの電源ボタンを押して、そのままリモコンを強く握りしめた。


額に汗がじんわりと滲む。



夢に出てきた女の子。行方不明の女の子。


麦わら帽子、白いワンピース、ビニールサンダル。


年齢、髪型、そして顔。


全てが一致した。


男は指で親指以外の指で頭をかきながら、布団にリモコンを投げ付けた。


服を脱ぎ、シャワーを浴び、乱暴に歯磨きをして、部屋に戻り、窓を全開に開け放っても、1つも気味悪さが抜けなかった。



それでも、夜勤の仕事に向かわなければならない。


男は仕事着である、深い紺色のポロシャツを肌着の上から羽織り、下にグレーの丈夫な作業用ズボンを履く。機械油で全体がじんわりと汚れたズボン。少々の油臭さはあるがまだまだ十分に履ける。


左前ポケットに携帯、右後ろポケットにスースーするミント味の清涼菓子。


黒い革製の肩がけカバンを背負って、これも仕事用。青いメッシュ生地のキャップをかぶって、男はアパートの部屋を出て、仕事場となる工場へと歩いて向かった。



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