四地蔵
このお地蔵様を数えてはいけない。
四体のお地蔵様は『四地蔵』と呼ばれている。
お地蔵様は道に迷った者を救う役目だと聞いたことがある。
数えてはいけない理由は、年寄り達に聞いても教えてくれない。
「いち、にー、さん、し
なんだ普通に四体じゃん
数えたら増えた減ったがあるのがこう言う話のていばんじゃんか」
数えるなと言われたら数えたくなるのが人間という者だ。
好奇心から俺は地蔵を数えたが、結果は何もおもしろくなかった。
雰囲気作りのために、夜中に懐中電灯を持って数えに来たが、あっけないものだな、と心の中で文句を垂れる。
「そこのお兄さん」
どこからともなく地蔵の隣に立つ女性に声をかけられ、びくりと肩が上がる。
「地蔵は五体だよ
一人足りてない」
ごくり。何を言っているのだろう。
白のワンピースから覗く色白な肌に魅入られつつ、答えた。
「地蔵は四体だよ
四地蔵って名前が着いてるんだから」
「ううん
一人足りない」
瞬間懐中電灯がカチリともいわずに切れた。
やばい、逃げなきゃ。
走ろうにも足が石のように固い。
どうなってるんだ!
薄れ行く意識の中で自分が地蔵になっているのだと悟った。
「ほら、やっぱり五体だった」
------
翌朝四地蔵は五地蔵になっていた。
年寄り達は、新たに置かれた苔の生さない地蔵に、丁寧に手を合わせた。
四地蔵は五地蔵になり、今も数えてはいけないと、語り継がれている。




