18・アキバアンダーグラウンド
冷凍ポテトをたっぷりの油でバチバチ揚げて、油を切ったら、すぐさまタンブラーにたっぷりの氷とコーラを注ぎ入れて机に持っていく。
サクッ、ほわっ。それだけで上手い。
冷え冷えコーラを流し込めば最高である。ついでにケチャップの味が強烈なチーズバーガーでもと元にあればいうことがなかった。
いっそのことこのチープな味に酔いしれながら、ヒロイックな映画でも観て爽快に楽しみたいところだが、本日はゲームを心行くまで楽しむとしよう。
コントローラーが油で汚れないように、割りばしでも使うかな。うむ。
アキバエリアとは一体どんなところ何だろうか? クエストを受けた私はよくわからないが、しかしワクワクしながらアキバエリアに行ってみることにした。
アキバと言えば、有名なところだとオタクの聖地なんて言われている場所を思い浮かべる。
最近はそれも過去のことになりつつあるというけれど、まぁフィクションだし。
要するにこのファンタジーコミューンは、サブカルチャーに明るい場所だと言うことのようである。
ファンタジーコミューンはエリアが複数あって、様々なエリアを楽しむことが出来ると言うわけだ。
私はアキバエリアと様々な言語が入り乱れる看板を脇目に見つつ、その場所にやって来た。
「え? ナニコレ?」
私の発した第一声がこれだった。
高低差がバラバラな建物が立ち並び、やたら多い階段が地下に続いている。
一方で看板やらはやたら多くにぎやかである。
想像していたアキバとは違うアニマペット版アキバはまさにダンジョン。
アンダーグラウンドとか言った方がいい場所だった。
「そこのあんた……改造パーツあるよ? ひぇっへっへっへ!」
露店のNPC一つとってもこの始末。しょっぱなからとんでもねえ露天商がいたもんである。
さて怪しい露天商の洗礼はともかく、中に入るとそこは意外にもとても健全で、巨大なお店の集合体だった。
売っている内容は、お決まりの武器 服 アクセサリーなわけだがその傾向は明らかに今までとは違う。
ファンタジーなどで定番の鎧やブーツは元より、古今東西様々なデザインのドレスや杖なんかも売っている。
あれ? 杖なんて武器あったかな?と確認してみると、どうやら杖は銃扱いになるらしい。
モーションは杖仕様になるがスキルは銃と共通の様だ。
おや? あのバニーガール姿のAペットが客寄せをしているお店は何かな?
うーむ、なるほど。まんまバニーガール衣裳やらちょっときわどいビキニアーマーなんかのアレか。
人だかりでちらっとしか確認できなかったが、記憶の端に入れておくとしよう。
お店の傾向はやはりファンタジーモチーフのデザインが主で、中世ヨーロッパ風の衣装や、体の周囲に浮かせることが出来るアクセサリー。発光ギミックがこれでもかと詰め込まれたちょっとSFに片足を突っ込んだ感じのものまで幅が広い。
面白い物では着ぐるみなんてものもあるようだ。
さらに奥へ私が進むと、そこはオンラインゾーン。
そんな場所にふみ込めばまさにカオスである。
最初のエリアが公式の商店だとすれば、こちらは個人商店か。
極めて特殊な自主制作のデータが無秩序に自分の店を構えている。
それはデータを改造した手の込んだものもあれば、既存のデータを組み合わせたオリジナルコーディネートデータを売っているものもある。
ただこちらは、実物を販売出来るわけではないらしい。
あくまでデータのみで、金銭のやり取りもゲーム内通貨オンリーの様だ。
既存のデータをうまくアレンジしているから、気軽にやれるんだなと納得して見て回っていると面白いものを見つけて、私は足を止めてしまった。
こ、これは! 聖剣エクスカリバー(ビーム仕様)……だと!
刀身が光る!
特殊スキルで超強力な一撃を!
ほほう……いいな。何がいいって、刀身が光ってるのがいい。
そして売り物なのに台座に刺さっているのがげいこまである。
スキルの方は使ってみないとわからないが、強力というざっくりとした書き方が妙に興味を誘う。
店員は美形の男性型Aペットなのに、どこか胡散臭い魔術師ローブ。
そして店員はこちらの内心を見透かしたように、その剣を私に指し示す。
私に抜いてみろと?……いいだろう。ならば私は挑戦しよう。
私は剣に手を駆け、引き抜きにかかった。
最初抵抗があった剣だったが、うっすらと燐光を発しゆっくりと抜けていった。
おお、これが聖剣の光……私は選ばれたというのか?
店主はにっこりと微笑み、その手を差し出すとアイコンが飛び出した。
2万3000Bコアです。
あ、はい。
気に入ったので買わせていただきます。