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Ideal Crossing 異世界で後輩ハーレム!?~かなんさん今何してんの?後輩と世界平和してる~  作者: 伝説の黒猫
第2章 緋桜舞い散る地プリセラ~思いの果てに~
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第31話 交錯する悲劇の前奏曲

お久しぶりです。伝説の黒猫です。なんとか投稿できました!よろしくお願いしますっ!

「姉さん、どうして、そっち側にいるの?」

「……決まっているでしょう? あなたをとめるため……よ」

「くっ。……くくっ。くくくくうっ」


レグスは姉の言葉を受け笑い出す。


「姉さんは、いや、フィーアも、あなたも、貴女も、お前も、貴様も、てめぇもッ! 僕たちの敵なんだね? 敵なんだ、敵なんだよ、敵なんだね敵なの敵だ敵だろ敵敵敵敵ッ!! 分かった。それじゃあ、こいつの餌食に、糧になるといいヨォ!」

「レグスっ!」


姉の悲痛な叫びも彼には届かない。

そこにいたのは、もうただの怪物が二体だった。

俺は問う。


「お前たち姉弟は、カインズさんに恨みがあるのか?」

「もちロんアルに決まっテいるダろォぉ!」

「……っ!」

「オマエに面白イことヲ教えテやロォう。そコのフィーアと僕ハ人ジャアなイんだヨ!」

「っ! どういうことだ」

「簡単ナ話ダろ。作ラれタンだヨ。あイつラニナァ!」


すぐに話が飲み込めない。

作られた?

誰に? 何を? レグスとフィーアが?

あいつらっていうことはカインズさんたちにか?

俺たちが混乱していることなど気にも留めずにレグスは独白する。


「高イ知能とエルフに匹敵スル魔法力。ソれヲ与えラレて作ラレタのガ僕タちダ! 最初ハ違イなンテなカッた。僕タチは、すごく喜ばれた。大事に大事に育てられた。実験ノ成功だト言ッテネェ。それデモ、僕たチハ彼らノコトが好キダっタ。きット親だトデモ思ってシマッタんダロう。紛イ物の癖ニ人間みタイだロウ? くクくク。そシテ、アル時彼らハ気付いタ。僕らノ欠陥ニ。ナンダカワカルカ? 」


欠陥? 何が欠陥だって言うんだ?

フィーネなんて、学園祭とは言えかわいいランキング一番だぞ?

こんなにファンが多いことが何よりの証拠だろうに。


「ボクタチはエルフとハ寿命の長サガ違っタンだヨ。たったソンなコトだケで、僕たチは失敗ノ烙印を押さレ扱ワレタ。今までノことガまるで嘘ダッタようニ! 違うな!! 全て嘘だった。本当のことなんて何一つなかったんだ。この世界には愛も、平和も、幸福も、すべてが、何もかもが虚構なんだ! だから僕は復讐することにした。僕たちを生み出した奴等を、その関係者も含めてみんな不幸にしてやるってネェェェ!」


それはよくないっ!

考えるより先に声が出ていた。


「よくないッ!」

「先輩……」

「確かに、寿命のことで失敗の烙印を押されたのはおかしい。でも、お前のやってることは人として間違っている。俺のかわいい後輩たちを悲しませて、それはダメだろ。考えればわかるだろ? 人を作り出すのは倫理的に良くないだろう。なぜ、倫理的に良くないかと言えば、まず、道徳心について考える必要があって、道徳心は人の良心に恥じないようにしようってことじゃん? ということはお前のしでかしてしまったことも良心に恥じるよね。ということはよくない。お前の考え方は間違っている!」

「……? えーと、ボクノ両親に恥じるコトはナイ。僕は、僕ハぁ謝っテ欲しカッタだけナンだヨ。タダ、それだけでよかったんだ。もう遅イ。何モカモもう遅インだ。クくッ」

「待て待て。まだ遅くない。だってさ、謝って済むなら警察いらないじゃん? 俺にはわかるけど、カインズさんはきっと行動で返そうとしてたんだよ。絶対そうなんだよ。だから、レグスがもう少し辛抱強く待ってたら、謝るなりなんなり、誠意を持った対応をしてくれるはずだよ? だって、カインズさんはしっかりとした大人だから、過ちを、罪を犯してしまったんなら謝るだけじゃダメだってちゃんとわかってる。だから、カインズさんは必ずどうにかしてくれるはずだった」

「じゃあ、僕にどうしろっテイウンダヨォぉ!」

「だから―――

「もういいッ!僕はセカイをリセットすルンだ!この腐ったセカイヲォ!」


レグスは、止める間もなく怪物と一体になり、怪物はさらなる高みへと至る。

もうやるしかない。

ここで退くことはできない。

あれは、あの怪物は、世界の脅威だ。

ここで止めなければならない。


「フィーア、いいか?」

「……うん」


フィーアに確認するのは仕方ない。

返事がどうであってもやるしかないのだが聞かないよりはましだろう。


「ナナ、フィーアいこうぜ!」

「はい、先輩」

「うん!」


ナナが苦しそうに、フィーアは無理して、声を出す。


戦闘開始だ。

俺は一心不乱にバイオリンを弾く。

思いのままに。

ハイポジのみで奏でる。

バイオリンにはポジションがある。

右手で弓を持ち、左手で弦を押さえる。

倍音なら聞いたことがあるだろうか?

倍音とは、物理的に言えば、基本振動数の整数倍の節の部分を押さえる。

このように押さえる位置によって出す音を調節しているのだが押さえる位置の間隔が短くなっていく。ほんの少しずらすだけでも音が変わってしまう部分、それをハイポジと呼ぶ。

そのハイポジを駆使して、魔法を奏でていく。


魔法が完成するまでの間は二人が時間を稼いでくれてる。

確実に、着実に、ダメージを蓄積させていく。


怪物が咆哮する。

痛みのためか、もしかしたら、心の痛みか。


怪物も反撃はしているが、大振りで二人を捉えることはできない。

フィーアは撹乱しつつ攻撃。

そのフィーアを狙ってできた隙をナナが魔法で攻撃といった具合だ。

初めてコンビを組んだとは思えないような華麗な動きで怪物を翻弄している。

さすがに二人とも、もともとのポテンシャルが高いだけはある。


俺の魔法が完成し、それを解き放つ。

いつもの属性魔法ではない。

黒い塊のような。

ブラックホールのような魔法。

全てを飲み込み、無に帰す。


「ナナ、フィーア!」


その声に反応し、絶妙なタイミングで、俺と怪物の間に一直線の道ができる。

それを逃すことなく、怪物に向けて叩き込む。


怪物に直撃し、怪物は地に伏す。

今までの俺の魔法の中で最大級の一撃。

これなら、あの炎龍でも一撃で倒せるはずだ。

この魔法は、曲は俺が作ったものだ。

愛のことを経て、強くならければならないと切実に思った。

そして、マギアでの学園生活。

魔法に対しても、音楽に対しても今まで以上に造詣を深めることができた。

そんな俺の今の最高の一撃。

さすがにもう。


怪物がぴくっとする。

それに反応するが動く様子はない。

気のせいだろうか。

いや、こういう時は……


怪物が突然動き、地に手らしきものをたたきつける。

そうすると、何ということか。

地面が割れた。


ヒビが入っただけだろうか。

そこは見えない。

落ちたら確実に死ぬだろうということだけは確信できる。


そんな。

言葉を失う。

ナナは茫然とし、フィーアは苦々しい顔をしている。

俺は奥の手を使うことを決意する。


歌うのだ。

二人に声を掛けてから歌い始める。


「ナナ、フィーネ!」


それだけで意図を察してくれた二人は、俺の望みどおりに動いてくれる。

ナナは俺と一緒に歌い、フィーネは注意を引いて気をそらしてくれている。


一発でも食らえば命はない。

そんな絶望的な状況の中での一縷の希望。

そんな時。

声が聞こえた。

気のせいか。

そんなことはないか。

自嘲気味に乾いた笑いをこぼす。


「右手に宿りしは、強者の証。弱きものの尊厳を踏みつけ、わが身の糧とする」


世界が黒に塗りつぶされる。


「ヤミ!」

「マスター」

「色々聞きたいことはあるけどそれは後回しだ。助けてくれ!」

「そうですね、このままではあの世界は非常に危険な状態にあります。あの作られた少女の秘宝を使ってください、マイマスター。それで、最愛の彼女を」

「ちょっと待て、どういうことだ」

「時間がありません。三人で、先ほどの魔法を放つことができれば」


その次の瞬間には、再び世界が元に戻る。

とにかく急がなければ!


「フィーア、秘宝!」

「え? はいっ!」


フィーアが投げてよこした秘宝を使う。

が、まったく反応しない。

使う方法がわかるような気がしたのだが。

焦れば焦るほど思考が真っ白になっていく。

頭の中を埋め尽くすのは世界平和のことばかり。

違う、今はそれじゃない、この状況を覆すために必要なのはそれじゃない。


不意に恐ろしいほどの衝撃が身体を襲う。

イタイイタイイタイイタイッ!

こんなところでは止まれねぇんだよ!

意思とは反して身体は言うことを聞かない。

そのまま意識を刈り取られる。


「まだだっ……」


パッチワークの獣は日がかなり傾いた空に向かって咆哮をあげる。

悲しみの獣は止まらない、止められない。


前回のIFENDとの違いも楽しんでいただけると幸いです。

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