表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/35

第34話 気になること

◇◇


 ――朝。

 アルカはいつも通り、食堂でリューンと会った。

 リューンは、再びオジイサマに戻っていた。

 顔艶も良く、元気そうで、昨夜の乱れた様子は微塵もなく、穏やかだった。

 領主として、やむを得ず人に会う時だけ、若者姿で応対するらしい。


(何にしても、性格が変わらなかったのは、良かったわよね)


 内心、それを心配していたアルカは、ほっと胸を撫で下ろし、仕事場に向かったのだが……。


 一難去ってまた一難。


 始業前のアルカのもとに、従者の手を借りて、叔父が訪ねて来たのだ。


「朗報だ。ドリスとヒルデが、今日にでもミスレルに戻るそうだよ。良かったな。アルカ」

「良かったって…………」

「本当のことだろう」


 執務室の応接用の長椅子に、やっと座ることのできた叔父は得意げだった。

 

 なんでも、昨夜二人はリューンのことを散々罵ったが、誰も取り合ってくれず、居心地が悪くなってしまったらしい。


(これ以上の騒ぎはごめんだったし、好都合ではあるけど。でも、随分と急な)


 腑に落ちない。

 何より、そのことを嬉々として話す叔父の無神経さが怖かった。


(そもそも、昨夜のことは、叔父様のせいじゃない?)


 この人が金を積まれて、宴会に二人を手引きしたから、大事になってしまったのだ。


(今までは諦めの境地だったけど、これからはそんな私じゃ駄目よね)


 この機に、しっかり言わなければ……と、アルカは気合いを入れて、深呼吸した。


「……叔父様」

「何だ? 急に改まって」

「こんなことをお伝えするのは、私も嫌なのですが、叔父様は、いらぬことをして、みんなを引っ掻き回しています」

「どういう意味かな? ちなみに青白祭の宴にドリスとヒルデを行かせたのは、行きたいと泣いて懇願されたからだよ」


 先回りして、痛々しい弁解をするのは、自分がまずいことをしているという、自覚があるからだろう。

 しかし、アルカが腹を立てているのは、それだけではないのだ。


「叔父様は、いろんな人に……特に、リューン様に私のことを喋りすぎです」


 まず、このことを思いついた。

 アルカの痛ましい歴史を自分の口からではなく、リューンが知っているのが恥ずかしいのだ。

 今後、いらぬことを喋らないように、釘だけはさしておきたい。


 ……けど。


「へっ?」

「え?」


 叔父は間抜けなくらい、大口を開けて、ぽかんとしていた。


「何のことかな? リューベルン様に、お前のことなんて何も話してないよ。大体、私は一回しかリューベルン殿とは会ったこともないし……」

「嘘……?」

「この程度のことで、嘘は言わないさ」


 それは、そうだ。

 いつも、嘘の芝居が得意な人だが、利がないことに労力は割かない人だ。

 ……つまり。

 本当に叔父は、リューンとは一回しか会ったことがないのだ。


(え、じゃあ、何? あのリューン様の小さなお弟子さんが、私の情報を集めたってこと?)


 仮にそうだとして……。

 リューンは、アルカに対して、一体何がしたいのだろう?

 どうして、隠すのだろう?


(そうだわ。昨夜のリューンさまは、まるで、昔から私のことを知っているような口ぶりだったわ)


 饒舌だったのは、疲れていたせいか?


 それとも、青白花祭で飲んだ酒に酔っていたのか?

 アルカにはさっぱり、分からなかった。


 ――そうして。


 悶々としながら、アルカは昼休憩を迎えた。


 執務室に、お茶を運んできたマリンに、すべてを話したら、軽く笑い飛ばされてしまった。


「何だ、そんなこと……。だって、お嬢様。相手は魔法使いでしょう? 不可解なことこそ、普通じゃないですか?」

「……だ、だけど、なんかこう……。私の預かり知らないところで、上手くいきすぎているような気がするのよ。今日だって、昨夜の宴を抜け出したこと、誰も何も言わないのよ。領主なのに責任感がないとか無言の圧くらい、ありそうじゃない?」


 弟妹の唐突な帰国だけではない。

 死にかけていた老人が美青年に若返って、自らをサウランの領主だと名乗ったのだ。

 訝る人間が一人もいないのも、変ではないか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ