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第22話 変わってしまった旦那様

◇◇


 ――「孫」と尋ねたのが、いけなかったのだろうか?


(リューン様は、弟子と仰っていたわね。でも、見た目は小さな男の子だったし、お孫さんかなって思ったのだけど?)


 リューンにとって、孫がいることは、隠しておきたいことだったのだろうか?

 あの日以来、リューンはまるで別人のようになってしまった。


(だって八十歳なんだし、お孫さんくらいいてもおかしくないでしょう。それとも、息子さん? だとしたら、やっぱり失礼だったかしら)


 戸籍上は、アルカとリューンは夫婦で家族だ。

 あの男の子も、場合によっては引き取らなければならないかもしれない。

 詳しく教えて欲しいと、アルカはリューンに訴えてみたものの……。


「君が気にするようなことは、何もないです。あの子はとっくに帰ったので、存在自体忘れてください」


 あっさり流されてしまった。


 ――変だ。


 あれだけ熱心に、アルカと打ち合わせてしていた領主の仕事に関しても、リューンは一切、口出しをしなくなってしまった。

 それどころか……。


「君がいいなら、それでいい」


 投げやりになってしまった。

 しまいには、よく分からない場面で、肩を揺らして大笑している。

 リューンは、笑い上戸ではなかったような気がするのだが?


(やはり……リューン様は、ご病気なのかしら?)


 それとも、魔術で彼は別人になってしまったのか?


(まさか、そんなはずないわよね。リューン様も仰っていたじゃない。魔術は万能じゃない。不完全なものだって)


 きっと、出来の悪いアルカが、リューンに教えを請うたせいで、彼の体力を消耗させ、思考力の低下を招いてしまったのだ。


(……私のせいだとしたら、申し訳なさすぎるわ。リューン様)


 だけど、アルカは多忙でリューンに謝罪すらできなかった。

 毎日慌ただしくしていたら、あっという間に青白花セイレーン祭当日を迎えてしまったのだ。


(祭の宴会が終わったら、絶対、リューン様に謝りに行かないと)


 昼間の公務は、何とか終わらせた。

 あとは、夜の宴会だけだ。

 意気込むアルカの肩を……。


「もうっ。お嬢様ったら! またそんな難しい顔をなさって……」


 ぽんと、マリンに叩かれて、アルカは鏡台の前の椅子から転げ落ちそうになってしまった。


「マリン……。びっくりした」


 そうだった。

 マリンに着付けと化粧を頼んでいたのだった。

 半分寝たような状態で、考え事をしていたので、背後にマリンがいることを忘れていた。


「ほら! 淑女になるべく、身だしなみを整えている最中ですよ。なるべく、笑顔で! 今日ほど、ご自身の印象を変えるのに、相応しい場はないんですからね」


 アルカの髪を梳きながら、マリンは鼻をすすっている。

 彼女なりに、表の場にアルカが出るのが、感慨深いのだろう。


「……うん。ありがとう。分かっているわ」


 亡くなった母のように、優しいマリン。

 以前なら、アルカもつられて泣いてしまっているところだが……。


(気を張っているせいか、泣けないのよね)


 もっとも、今はマリンの櫛の使い方が荒く、おもいきり髪を引っ張られているせいで、涙目にはなっているのだが……。


「マリン、私ね……。以前ほど父の臣が怖くないの。リューン様が丁寧に指導してくださったから、彼らの言い分が理解できるようになって、色々、答えられるようになったのよ。みんなリューン様のおかげ。今回もこんな高価なドレスを作ってくださって、ありがたいことだわ」

「本当に、ようございましたね。素晴らしい方が、お嬢様の後ろ盾になって下さって」

「……ええ」


 「後ろ盾」という言葉に違和感を抱きつつも、アルカはたった今、マリンに着付けてもらったばかりの海色のドレスに視線を落とした。

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