17話 親戚
「8月は配信できないと言ったな」
・そ、そうだ…
・は、配信して…
「あれは本当だ」
・うわぁぁぁぁ!!!
・え?
・本 当 か よ
現在8月1日午前8時。
親戚の子の東京到着が昼の12時過ぎのため調子に乗って配信中。
「だからあれだよ? 8月中にこのチャンネルで配信したらそれは身バレした時だよ」
・なにそれ怖い
・配信すんなよ
・身バレ記念配信?
「祝! 身バレ! ってやるかもしれん」
・祝うなよww
・喜ぶことじゃないだろ
・頼むから配信しないでくれ
「夏休みの間に身バレするRTA始まるよー! ってなる可能性もあるよ」
・や め ろ
・身バレしに行ってんじゃねぇか
・RTAすんな
・最速目指すな
流石にそんなバカな真似はしないけど。身バレ=死 というわけではないが、身バレすると相対的に遥香にバレる可能性が高まるからな。気をつけないと。
「マージで今どきの若い子って何話せばいいんだろ。おじさん困っちゃう」
・今どきの若い子が何言ってんだ
・現役DKだろ
・頑張れゴリラ
「だって俺はあれだよ?ちょっと前に、今どきの高校生がド〇え〇んズ知らないことに驚いてたんだよ?」
・前言を撤回する
・お前はおじさんだ
・知ってることに驚きだわ
どうしたものか。最近の若者が何を話しているのか見当もつかん。そもそも、俺が親戚の子と会った覚えがない以上、俺達の繋がりは伯母さんだけなのだから、友達の友達が家に泊まりに来るようなものだ。しかも初対面で連泊。よくもまぁ俺の家に泊めようと思ったなぁ、あのBBA! そしてよくそれを承諾したな親戚よ。俺は既に不安で胸がいっぱいだよ。
「若い女の子は何で喜ぶのかわかんないよぉ…」
・女の子?
・女の子だと?
・幼馴染か
・幼馴染だろ
「いや、あいつだったら………やっぱいいや」
・なんや?
・あいつだったら…なんだい?
・お姉さん達に言ってみなさい《白沢景》
「べつに…あいつだったら今さら何で喜ぶのか考えなくても全部知ってるから楽だよな。って思っただけですよ」
・惚気かな?
・こりゃ恋してますわ
・“全部知ってる”だってよ
・めっちゃLOVEやんけ
「よし、配信終わるわ。じゃあね」
・逃げた!!
・逃げやがった!!
・待てぇ!!
あ〜、恥ずっ! なんであんなこと言っちゃったかなぁ…。穴があったらそこで余生をすごしたい……が、そんなことよりそろそろ時間かな。
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「あ゛〜緊張する」
今日から親戚の子が泊まりに来る。1ヶ月近く泊まるとなるとそれなりに荷物も多くなるため、伯母さんが車で駅まで迎えに行ってくれる。俺もそれについていくのだが、俺を家まで一度迎えに来るのが面倒らしいのでこちらから伯母さんの家に出向くことになった。
今、伯母さんの家の前にいる。
前に会ったのはVtuberになると決めたときだったかな。あれから、同期になる予定だった人の前世でのやらかしが判明したり、俺がバ美肉になったり、他にも色々あってデビューまで時間かかったから、もう伯母さんとは半年以上会ってないのか。
やはり長いこと会っていないと、少しばかり緊張する。家貸してくれたり学費払ってくれたりいろいろと世話になってるし。
震える手で玄関のチャイムを押すと、顔を見せたのは俺より少し身長が高い中年の男性。彼は伯母の旦那さん。俺の伯父にあたる人だ。
「悠介くんか。ちょっと待ってて、車取ってくるから」
「すいません、その前に一旦中に入ってもいいですか? 伯母さんにも会いたいんで」
「いいけど、時間が…」
今日は家に入れてもらう前提で行動していたのだから時間には余裕がある。それなのにわざわざこんな事を言うなんて、俺のことそんなに嫌いなのかな。
「渡したいものがあるんですよ。ホントすぐ終わるんで! 」
「わかった…少しだけだよ? 」
「はい! ありがとうございます! 」
伯父さんに連れられて居間へと向かう。もちろんそこには伯父の嫁で俺の母の姉、俺の伯母にあたる女性がいる。
「あら、悠介じょない。早いわね、もうそんな時間? 」
「いや、まだかなり時間あるよ」
嫌いなら嫌いではっきりと言ってくれればこっちも割り切れるのに、こうやって普通に接されるとどう接していいのかわからなくなる。
「ん? ちょっと待って、どういうことかな? 」
「なにが? 」
急に伯父さんが伯母さんに問いかけた。叔母さんは何も分かっていないような様子。
「君が言ったんだろう。悠介くんは時間通りに来るから来たら車を出してあげてくれ。って」
「そんなこと言ったっけ? 」
「言ったよ。だからてっきり僕はもう時間なのかと…」
玄関での問答の原因は伯母さんが適当に伝えていたから。
自分が家にも入れたくないほどに嫌われているわけじゃないとわかっただけでも心が軽くなった気がする。
「はいこれ、2人に渡しに来たの」
「何? これ」
俺が差し出したのは一枚の封筒。中には現金数万円。
それを見た伯母の顔が少し怒っているように見えた。
「お金を請求した覚えはないんだけど? こんなことしなきゃいけないと思われてるなんて心外だわ」
「違う違う! それ初任給! 」
「初任給? 」
Vの収益化が通ってようやく入った自分で稼いだお金。
仕事の初任給では親にプレゼントを買ったりするらしいが、今の俺に親はいない。そのかわりに、俺の後見人になって家も貸してくれてる伯母さんと伯父さんに何かプレゼントをしようと思った。が、2人のやりたいこと、好きなもの、行きたい場所、どれも知らない。そうなったら1番嬉しいのは自由に使えるお金かな―――
「となったわけでございます」
「こんなもの受け取れるわけないでしょ」
「突き返しても無駄だよ? 俺も受け取る気ないから」
「こっちも受け取らないって―――」
「いいんじゃないか?」
俺と伯母さんの押し問答を止めたのは伯父さんのひと言。伯父さんはなぜかうれしそうな顔をしている。
俺としては受け取ってくれたほうが嬉しいが、こんなに金にがめつい人だったか?
「それだけ僕らを信頼してくれてるってことじゃないか」
「でも……」
「だめ? 」
「ああ!もう! わかったよ! 受け取るよ! 」
俺と伯父さんに押し切られる形で伯母さんは金を受け取る。
「それにしても、まさかあんたが美少女になるなんてねぇ」
「それは俺も驚いてる」
「なんであんたが驚いてるのよ」
「もう時間だよ」
伯父さんに促されて車に乗り、駅へと向かう。
なにげに伯父さんと2人きりになるのは初めてな気がする。
「Vtuberの仕事、楽しい?」
「楽しいですよ。俺、むいてるかも」
「雑談のネタをすぐに使い切る癖は直したほうがいいよ」
「え?」




