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9/11 痒い
郵便受けには、山のように書類が積み重なっていた。
いや。
この場合直喩として現状を評価するのは適切では無い。
正しくは、書類が積み重なって山になっていた。である。
それは事実として目の前に折り重なっていた。
山の表層を削り取る。
8つ折りになったチラシが5枚ほど地面に落ちる。
山に変化は見られず、ただ悠然とそこに残る。
5枚を傍のゴミ箱に放る。
注意書きに書かれた『チラシは丸めて捨てないでください』の文字に手が止まる。
おそらく管理人は、チラシが圧縮されるほど郵便受けを放置する人間を想定できていなかったようだった。
仕方なしにある程度伸ばしてゴミ箱の中に重ねる。
指を突っ込む。
紙に重なってざらついた音がする。
腕に当たって郵便受けが軋むような音を立てる。
一度掻き出すごとに、同じ笑顔が重なっていく。
柔らかいものが指先に触れる。
私の指を待つ類のものだった。
構わず掻き出す。
爪の後が残る類である。
掻き出した。
顔を想像した。
おそらく押し込まないと入らない郵便受けにチラシを押し込んだ業者の顔を。
掻きむしった。
想像の中でこの郵便受けに手を入れる業者の腕を。
掻きむしった。
右腕に痛みが走った。
紙の端に触れて手の甲に跡が残っていた。




