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5/7 雇用主の極意


信じる者は救われるとまでは言わないが、困った時は何らかしらの作用が働いてなんやかんや救われるというのを、幼少期に読んだ小人の靴屋さんという童話で学んだ。


あの話、終盤小人に恩返しするフェーズで、素っ裸の小人に小さな衣装をやった事で「自分らはもうお洒落なのだから靴屋なんぞは似合わない」だとか何とか言って小人が出ていってしまうのだが、あれを見て雇用主と従業者の在り方と言うのを考え直したものである。


そんなことを考えながら、下宿先の外廊下を歩いていた。


ここに来るのは数日ぶりである。


このGWは実家にいたが、マンションの様子は特に変わっていないようだった。


玄関の扉を握り、そして少し躊躇する。


実家に帰るための荷造りをするためにかなり無茶をした数日前の記憶が蘇る。


キャリーケースから放り出した防災バッグ、圧縮袋、服を纏めるべくひっくり返したクローゼット。


適当なモノはそこらに放り、ドタバタと玄関から出て行った事。


目を瞑り、密やかに、それでいて強く願う。


留守の間に何らかの奇跡が起きて、床に散乱していた服や読みかけの本や謎に増殖したレシート類が、誰かの手によって整えられていてくれはしまいか。


小人とまでは言わないが、空気清浄機とか、ルンバとか、あるいは部屋そのものが自浄作用に目覚めるとか、そういう方向で。


意を決し、扉を開ける。




…唯一言えることは、現実は残酷なまでに誠実だったと言うことである。




キャリーケースを空いている空間に放り、ベッドの上の荷物を床にずらして寝転がる。


地獄絵図だ。


とてつもなく今困っている。


何とかこう、来てくれないか。


小人とか。


もし、小人が来たなら、私は恩返しにこのポップコーンwith味の素を振る舞おう。


あの靴屋の老夫婦は戦略を間違えた。


綺麗な衣装という外部で通用するものを挙げてしまったから転職されたのだ。


魅力的給与にて彼らを雇用し続ける事こそが大事であろうに。


私は、決して失敗しない。


それを胸に、地獄絵図の中で寝転がった。

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