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第二話 この気持ちの正体は何なのか、そこのところに詳しいあの人に聞いてみよう

 いや~びっくり。女の人の顔をあんなに近くで見ることもそうそうないよね。僕はあの後、助けてくれたお礼も言わずに女性の前から走り去ってしまった。何だか分からないが今まで感じたことのない感情がこみ上げてとにかく走り去りたくなった。

 

 ということがあったのが、今から10時間くらい前のこと。今僕は不思議と後を引くこの想いが何なのかを考えている。人は考えるもの、中でもこの僕、五所瓦ごしょがわらこれぞうは特に頭を絞る。


 僕は今、見慣れた自室の天井を見上げながら椅子にもたれている。

 

 なんだろう。あの人のことを考えるとドキドキしてくる。これはどうゆうことなのだろうか。

 よし、こういう時は検索だ。

 僕は目の前の机の上に置かれたノートパソコンを開き、検索をかけた。そのワードはこうだ。


(女の人 思い出す ドキドキする これ何ぞ?)


 う~ん、ヒットしたページを色々と見ていくと、これはどうやら「恋」らしい。

 恋、この僕が?今まで同級生の女子をちょっと本が読める猿くらいにしか認識していなった恋愛オンチの僕が恋だと!

 これは俄には信じられない。だいたいネットにあること全てが真実とは限らないじゃないか。

 

 よし、次の手だ。こういう時にはあの人に話を聞きに行くべきだ。丁度我が家には地域一恋多き人物がいる。

 そして僕は腰を上げた。


「お~い姉さ~ん、入るよ~」そう言って僕は隣の部屋に入った。


 そう、相談相手は僕の姉さんだ。名前は「五所瓦ごしょがわらあかり」と言い、現在は大学一年生。

 女の中じゃ一番信用できる部類に入る好人物さ。


 それから5分後。


 「パチン!」と指を鳴らして姉さんは僕を指差す。そして次のような言葉を発するのだ。

「ビンゴ!これぞう、それ恋よ」

 

 姉さんはズバリ言い当てた。あの姉さんが言うのだ。だったらもうそれは恋で決まりだ。


「あんた、やったじゃない。今だから言うけどさ、あんたが猿を見るような目でしか同級生の女の子のことを見ていないから、もしかしたらコッチなのかもって心配してたのよ」


「姉さん、猿だなんて、僕が実際に猿を見たことがあるのはたったの2回だけだよ」と返したがさすがは姉さん、当たっている。ね、信用できる人物でしょ。で、コッチとはどっちなのだろう?


「で、それ誰なの?どんな子?」

「え、そういえば名前を知らない。でも子って言うにはさぁ、もうすっかり大人な人だよ」

「え……?」と言って姉さんは、勉学の息抜きとしてノートにケツアゴ男を書くために握っていたシャープペンシルを床に落とした。姉さんは昔から暇になれはケツアゴ男の落書きをする癖がある。

   

「これぞう、ちょっとこっちに来て座りなさい」

 姉さんはそう言って自分のベッドに座ると、自分の横に座れとベッドをポンポンして指示した。

 僕たち姉弟が割と深刻な相談をする時はいつもこうして話すのだ。


「で、誰?」

「だから名前は……」

「どこの女なの?」

「えっと学校の女性教師だよ。緑のジャージの」

「なっ!あんたって子は……」


 姉さんは両手で僕の両肩を掴み、顔を下に向けた。

 そして顔を上げると満面の笑みで「なんて面白いことになってるのよ!さすが私の弟ね」


「あ~そうかそうか、これぞうの初恋は女教師か~。もう~これぞうったら~、いやエロぞうね~」

 姉さんは僕の肩をバンバンしながら上機嫌で話していた。


「そうだったのか、これが恋。僕は初恋をしたのか」

「あんた高校生にもなってそんなことも知らないの?私なんか2歳の時にはもうハンフリーボギーを見てときめいたわよ」

「えっ、誰だって?」

「まぁまぁ、お姉ちゃんは良いと思うわよそういうの。頑張りなさいよこれぞう」


 という訳で姉さんのチェックが入った以上はっきりこう言える。

 わたくし五所瓦これぞう、高校一年の春にして恋を知りました、と。


「だいたいこれぞうが恋をできないのはお姉ちゃんにも問題があったわよね。何せ私ってあんたの同級生のどの女よりもイケてたじゃない。だから他所の女じゃ私よりも見劣りしすぎて冷めちゃうんでしょ」

 

 皆、この姉さんのことをイキった痛い女と想ってはいけない。身内の贔屓目ひいきめを封じても、姉さんはこれまで会った同級生のどの猿、もとい女子よりもイケてる女、通称イケ女だった。彼女の言ってることは勘違いでもなければ妄言でもない、ただの事実だ。姉さんに言い寄ってくる猿、もとい男共はたくさんいる。確かに姉さんを見た後にそこらの女性を見ると、明らかに見劣りするとは思う。こんなことを思う僕はシスコンなのかな。


「てことはその女、相当イケてるってことね」

「うん、綺麗だったよ」

「これはいつか視察にいかないとね。でも私も暇じゃないから当分先ね」


 相談はそこいらで切り上げることになり、姉さんはケツアゴ男の落書きの続きに戻り、僕は部屋に帰って寝ることにした。

 

 その日はドキドキしてなかなか寝付けなかった。

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