【第47話】双子1
「せーんぱいっ」
・・・なんで須藤さんは俺に付き纏うんですかね。
いや、告白は断ったけど友人としては遥さん交えて連絡先交換しておいたんだが、昼休みの屋上に来るとは思ってもみなかった。
弁当ではなく学食に走っていった近藤と柊さんはおらず、早乙女さんは今日はギャル仲間と今日は昼を食べるらしく、今日は俺と遥さんだけの昼休み屋上ランチだ。
ってあれ?・・・須藤さ・・・君じゃん。
声は完全に須藤さんの声だったし、須藤さんそっくりだけど、何か雰囲気が違う。といってもそんなに雰囲気が違うわけじゃない。
弟君の方を知らないと気が付かないぐらいの些細な違いだ。
現に遥さんは須藤さんだと思って会話を始めている。
俺が訝しげに見ていると須藤君の顔が気づきました?といった顔になり、口元に指を当て小さくウィンクされた。
なんか声優として会ったときより堂々としてるな。
「せーんぱいっ!!今日の放課後空いてますか?」
えーと彼女の前で堂々と誘うって肝座ってんな。
「先輩も一緒にどうですか?」
と遥さんの方へ向かって出したのはクレープの割引券が数枚。
遥さんが行くーと言ってからスマホでクレープ屋のホームページを見始めた。甘いもの好きだな。
「ちょっと一人だと入りにくくて・・・」
「クラスの人を誘ったら良いのでは?」
「先輩気が付いているのにそんなこと言いますか?」
「そのクォリティならバレずに誘えるだろ」
本当に須藤さんそっくりじゃねぇか。
「気が付いてるって?」
遥さんが俺に変わり種クレープというページを開いたスマホを渡しながら弟君に聞いた。
いや、この変わり種クレープは俺食べないよ。
「先輩が姉と入れ替わっているのに気がついたようなんです」
すみません。騙してしまって。と弟君のハスキーな地声で遥さんに謝った。
遥さんはひょっ!?と驚いたような声を上げて弟君の姿を上から下まで眺めて・・・
「あぁ・・・言われてみれば・・・微妙に体型が違うね」
「えっ、これでもそっくりだと思ってたんですが、どこが違いますか?」
「胸から腰へのラインと・・・胸のサイズね。少し盛ってるでしょ?」
「あっバレました?少しだけ姉の願望を入れてみました」
ぽふぽふとその偽乳を叩く弟君。元々須藤さんには胸があまり無いことも合ってそんなに大きくはない。
遥さんがナカーマとか言っていた。
「本物の須藤さんは?」
「今自分と入れ替わって教室でお弁当食べてると思います」
自分戦略的ぼっちなんで、少々入れ替わったところで誰も気が付かれません。とVサインしてきた。
「よくやってるのか?それ」
「はいっ!!誰も気が付かないんでたまに入れ替わってます」
面白いですよ。全然違う世界が見えて。と弟君。まぁ他人になるのって結構楽しいのは分かる。リンや遥斗だってそうだ。
「で、このクレープどうしますか?」
「「いく」」
別に弟君だろうとどっちでもクレープは食べに行く。
*
「先輩」
須藤さんがクレープ屋の前で合流する。少しだけクレープ屋の前には行列があり並ぶ。
「二人共そっくりになるんだね」
遥さんが二人を見比べながら、すごっと言っている。この前の事務所前で見た時は結構違っているように見えていたが・・・制服とメイクを変えるだけで、こんなにそっくりになるんだな。
「ちょっとメイクで両方共寄せてますから」
と須藤さん。二人のすっぴんを見たことが無いからなんとも言えないけど、メイクで入れ替われるということは似ているんだろう。
男女の双子ってことは二卵性だっけ?二卵性ってそんなに似るっけ?まぁいいや。知ったところでどうにかなるわけでもないし。
「ご注文はいかがなさいますか?」
気がつけば目の前まで来ていたみたいだ。
「俺は・・・いちごスペシャルホイップクリーム多めトッピングにシナモンパウダーとキャラメルソースで」
「はーい。少々お待ち下さい」
「えっ」
何?須藤さんが凄いものを見たという顔をしてこっちを見てきた。
「先輩。もしかしてここよく来るんですか?」
あの淀みのない注文の仕方は常連!!と須藤さんが何か興奮している。え?何。そんなに俺がクレープ屋で注文しているのが珍しかった?
「まぁたまにくるよ」
男としてはたまにね。リンとしては結構高い頻度で来てるけど。
*
「おはようございます」
スタジオで持ち込んだお菓子でプチパーティーをしていると須藤君が入って・・・なんで、ここに居るんですか須藤さん。
声は須藤君と同じハスキー声、姿も違和感はない。実際他の声優は全く違和感を持っていないようだ。
えっと、これは入れ替わっていることを言ったほうが良いのか、どうなのか・・・
「じゃぁ始めるぞー俺にも菓子残しとけよ」
監督・・・お菓子ほしいなら混ざったらいいじゃないですか。別に声優オンリーというわけじゃないんですから。じみーに事務の人も混じってますし。
男の人はわたし以外いませんが。
「ん?須藤・・・なんか前と違うくないか?」
「えっ?少し風邪気味なんで」
「そうか、気をつけろよ」
「はい」
男の娘好きの新垣監督は何かを感じ取ったようだが、まさか双子の姉弟で入れ替わっているとは思ってないんだろう。風邪で前と雰囲気が違うと思ったみたいだ。
まぁいいか。声で問題があったら新垣監督が何か言うだろうし。




