【第23話】ホワイトデー
「鈴木ちょっといいか?」
放課後、俺の前に座った近藤が話しかけてきた。
「なんだ?」
今、来週提出の課題やってるところなんだが。
「相談なんだが・・・」
聞く体制に入ってるからさっさと言え。
「・・・ホワイトデーって何渡せばいいんだ?」
あー・・・そういやそうか。ホワイトデーか。
柊さんに本命貰ってたな。俺は柊さんから義理を貰ったけど。
「クッキーでいいんじゃないか?定番で良いだろ」
「やっぱそうかなぁ・・・」
俺もお返し考えないとなぁ。
*
「ホワイトデー何がいい?」
俺はうちに来て漫画を描いていた遥さんに直接聞いた。
いや、だって悩むぐらいならもう欲しいって言われたものを用意したほうがいいだろ?流石に高すぎる物は無理だが。
「えーっとねぇ・・・アナタとの子供」
「・・・」
「ちょっ冗談だって!!バレンタインに結局貰っちゃったしいらないって」
すっごく美味しかった。と遥さんはあの生チョコの味を思い出したのか息を漏らす。
満足してもらえたようでなにより。
とりあえず義理で渡してくれた人達には手作りクッキー数種類と考えている。あと梨花ちゃんには少し凝ったカップケーキとかいれておこう。
「まぁ貰えるならなんでもいいよ」
そういうのが一番困るんだけど・・・
*
アカネさんに呼び出されてリンとして待ち合わせ場所に行くと、アカネ君だった。あれ?わたしリンで来る必要なかった?
買い物に付き合ってほしいという話は先に聞いていたが、どこに行くのかは何も聞いていない。
「すみません。来てくれてありがとうございます」
「ん」
アカネ君はわたしがリンというのにはツッコミなしですか。
今から着替えに戻るのも面倒だし、このまま行こう。
「で、ここ」
移動してついた先は色々な専門店の入る大型店だ。
「はい。ナギサ姉へのバレンタインへのお返しを何にしようかと思いまして・・・女の子に聞けば何かナギサ姉が欲しいと思うアイテムが分かるかなと思いまして・・・」
わたしはアカネ君をじーと見る。わたしの性別をお忘れですか?
こんな形ですが、わたし男ですよ?しかも去年まで家族からしかバレンタインを貰ったことがないような非モテなんですが。
たとえわたしの性別を忘れていたとしても、そういうのは女子に聞くようなものじゃない気がするのですが。
アカネ君の視線がキョドり始める。あぁ、これ忘れてたっぽい。
「い、いやわ、忘れてなんて!!」
もう一度じーとアカネ君を見る。
「すみません。忘れてました・・・」
でしょうね。
「わたしもお返しを考えたかったから、丁度いい」
食べ物じゃなくて残る物で返すのも手かなぁ・・・
*
「はい。お返し」
「わぁ!!ありがとっ!!開けていい?」
「どーぞ」
いつもの昼休みの屋上で遥さんにホワイトデーのお返しの箱を渡す。
早乙女さんには朝の移動教室のときにカバンに突っ込んでおいた。
「カップケーキと・・・これって・・・ネックレス?」
そう。アカネ君と行った大型店で俺は安くもなく、高くもなくといったネックレスを買った。
シンプルなチェーンネックレスで男女どっちでもつけても違和感のないネックレスだ。
遥さんが早々に自分でつけてしまった。というか俺は動けなかった。
「ありがと」
頬に温かい感触がした。
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私は鈴木君に貰ったネックレスを肌に感じながら授業を受ける。
嬉しい。本当に嬉しい。何かと私達は遥斗だったりリンだったりで、性別通りの付き合いはそんなにない。
だから鈴木君から物を貰うというのはなかなか無いし、残るものを貰ったのは初めてかもしれない。
ただ・・・このネックレス丁度私も持ってる。
しかも今ラッピングされて鞄に入ってる。私もバレンタインのお返しに用意してあったんだけど・・・渡しそびれた。
同じものだけど、やっば渡したい。
*
部活に入ってない私達は授業が終わるとすぐに帰る。だから同じ時間に教室を出る。
校門から出て、周りにうちの学校の生徒がいなくなったのを見計らって声をかけた。
「鈴木君」
「ん?」
先を歩く鈴木君が振り向いた。
「これ」
鞄から取り出して、渡したのはお店でラッピングしてもらった赤い小箱。
「え?」
「私も貰ったから用意してたの、開けてみて」
私の言葉通りに鈴木君は箱を開ける。
「あっ」
「うん。被っちゃった」
「あー・・・」
鈴木君は何か思いついたようにそのネックレスをつけて
「お揃いだな」
にっと笑った鈴木君の笑顔はもさい眼鏡だったけど可愛かった。




