21話 謎が謎を呼ぶこの世界。
加減乗除21話、加。
前回のほんのちょっと解決編というか。
まぁ、タイトルどーりまた謎を呼びますが。
「後二体もいるのか……」
「おい、これ飲んどけ」
オギは校庭に残った二体のボーゾを睨んでいると、不意にゼロから緑色をした小さく丸い物を投げられた。
「これは?」
「解毒薬だ。さっき救護科からかっぱらってきた。お前の相方にはもう渡してある。さっさと飲め、それで毒霧から一時間は持つはずだ」
「そうか。お前にしては珍しく気が利くじゃねぇか」
オギは投げられた緑色の丸い物(おそらく飴)を食べる。
うん。
時間が経つに連れて舌が痺れる様な苦味が口とのど全体に広がって――――――――、
「まずっっ!!」
なんだこりゃ!? 人間の食べるもんじゃないぞ!?
危うく吐き出しそうになる。
「あ? メロン味だとでも思ったのか? 馬鹿かお前は。こいつはれっきとした薬だぜ?」
「て、手前……!!」
「にしてもその程度の味で吐き出しかけるとは、お前もまだまだガキだな」
「こんなものを平気で食べられるお前の味覚のほうがどうかしてるんじゃないのか?」
「何だとコラ!!」
「やんのかコラ!!」
「二人共、今は戦闘中だよ!!」
俺達二人の言い争いはメリアの声で遮られた。
すると、ボーゾの内の一匹がこちらに向かって大口開けて突っ込んできていた。
「ちっ!!」
ゼロは舌打ちをすると左に飛ぶ。
俺も右に飛びながら回避する。
「こんなやつらさっさと狩るぞ!!」
ゼロはライフルを構えて先ほど突っ込んできたボーゾに向ける。
「オギ!! きっと知らない……っていうか忘れてるだろうから言っとくけど、こいつらは毒霧を出すけれど、それってつまり自分の身体能力には自信が無いって事なのよ!!」
「だったら何なんだ?」
「だーかーら、コイツの毒霧さえ封じてしまえば、倒すのは楽なのよ!!」
とてもこのいかつい外見(というか気持ち悪い)からは想像できないな。
「火よ、重なり合い炎となれ」
メリアは早速炎を手から出している。
ドォン!! という音がして、ゼロが撃った魔弾が一体のボーゾに、メリアの放った炎がもう一体のボーぞに直撃した。
『Gyuooooooo――――』
二体のボーゾはうめき声を上げながらズズンと倒れる。
「ほへー」
「こんなもんかしらね」
「俺ら二人に掛かればな、学年次席」
「俺を忘れるな!!」
とはいえ、今回もほとんど何もしてないけれど。
あれ、最近ほとんど何もしてないような――――――、
と、戦闘が終了してホッと一息ついていた時だった。
ゴゴゴゴゴ、と先ほどボーゾが出現したときのような地響きが響く。
「のわっ!!」
「キャッ!!」
俺とメリアは尻餅をつく。
「この程度で慌てるな」
ゼロは先ほどと変わらず立っている。
ピシッ、と。
地響きの中でまた別種の音が聞こえ始めた。
その音は、この校庭から聞こえている。
その音が大きくなると、校庭に亀裂のようなものが走り始めた。
「い、一体何が……」
様子を見ていると、バゴンと大きな音を立て先ほどボーゾが空けたであろう校庭の穴の地面から人の十倍はあろうかとする大きな手が突き出してきた。
手といってもそれはレンガと土を固めたようなもので、それが校庭から突き出していた。
「はっ?」
その手は地面を掴むとそのまま力を入れているようだった。
そうして、次にもう片方の手が現れ、最後に全身が姿を現した。
「あ、あれは……」
「ゴーレム……?」
目の前には身の丈3,4メートルはあろう土と泥と石で出来たゴーレムが立ちふさがっていた。
「校庭はもぐら叩きじゃねぇっつの。……、ん?」
ゼロはゴーレムが出てきた穴の奥に何かが見えた。
「どうした。ゼロ?」
「おい、お前ら。俺はちっとばかしここを離れる」
『えっ!?』
ゼロの突拍子も無い発言に二人は驚いた。
「気になることはさっきからあった。俺はちょっとあいつとボーゾ共が開けた穴に行って来る」
「行って来るって……」
「学年次席がいりゃ問題ねーだろ。それとも俺様と離れたくなーいってか?」
「黙れ。さっさと行って来い」
「はっ!! ゴーレムは相手にもよるが、こいつはそれなりな強さがありそうだぜ。泣きべそかいて俺にすがりつくなよ?」
「お前こそ穴から出れないとか言って俺に助けなんざ求めんなよ?」
オギとゼロはガシッと拳を付き合わせると、二人は走り出した。
「手前まで来るこたねぇぜ?」
「お前が一人で穴まで行けるか不安でわざわざついてきてやったんだ!!」
二人は言い合いながら穴まで向かっていると、ゴーレムがその不器用で不自然な腕で殴りに掛かっていた。
「せぇら!!」
オギはその拳を剣で横に流すようにしてかわす。
その間にゼロはゴーレムの股下をくぐり抜けてストンと穴の中に入っていった。
「ゼロさんが不思議に思うのも分かるかも」
「どうしてだ?」
オギはとりあえずメリアのところまで戻ると、メリアが不意に話し始めた。
「まず、この学園には魔法結界があるじゃない。どうやってあの程度の魔物がこれを抜けてきたのかって一つ目」
そう。忘れっぽい俺でも覚えていることの一つだ。
この学校には魔法結界と呼ばれるものがある。
これは外敵から身を守るための防犯用として設置されているもので、俺が入学して以来これが壊されたなんて話は聞いた事が無い。それくらい頑丈なものらしい。
「次に、ボーゾの毒霧について。どうしてあんなに早く毒霧が学園中に広まったのかってこと。大抵霧なんてものは風でもない限り溜まるものだから、地鳴りがして現れたんだとすれば、普通広がるのは校庭くらいのはず。それなのに、窓から様子を見ていたオギにも毒霧の被害が出ていた」
言われてみれば確かにそうだ。
毒霧のめぐりが早すぎる。
「私がオギのところに向かう途中にも毒霧に掛けられた人はたくさん見た。ってこと、あの毒霧は学園中にすでに回っていたことになる」
「あれ? そう考えると変だな」
確かに地響きがしてすぐに俺は外を見たはずだが。
「でも、この二つもあるキーワードを当てはめれば解決することが出来る」
「あるキーワード?」
「それは、地下よ」
メリアは指を下にして答える。
「地下には学園結界は張られていないし、魔物が入ってきたのもうなずける」
「ボーゾは多分、地下であらかた毒霧を吐いていたんじゃないかしら。それが空調機にでも入って学園中に流れた」
「どうかしら?」
メリアはウィンクをする。
やっぱりこの幼馴染は圧倒的に頭が良い、何より、戦場での状況分析が。
そう改めてオギは確信した。