央都防衛戦①
第二十四話です。
敵の攻撃を交わしながら、考えた。なぜ今回ディアブロは央都を襲撃しているのかを。前回村を襲ったのは無差別的なものだったが、今回央都襲撃にこれほどの戦力を割いているということはそれなりの事情があるはずだ。
後ろを見て追手を確認していると、地面に太陽によってできた巨大な影が数個近づいて来た。この不気味な正体を確かめるべく空を見上げた。
「なんで上級任務のモンスターがこんなにいるんだよ」
ハルタが空を見上げながら呟いた。
俺たちの真上を横切って行ったのは巨大な翼を広げて羽ばたいている竜だった。あの竜は討伐対象としてギルドが以前冒険者を募っていたのを覚えている。募集要項には上級冒険者のみが受注可能と書いてあったはずだ。なぜそのような強力なモンスターが複数体群がりながら央都へ?
学校付近に無事に到着して後退は無事完了したものの、城壁組が辺りに見当たらない。まだ来ていないだけか。周りには俺たちが引き連れてきたディアブロ共が集団を形成し始める。
「タツキ、城壁組が異様に遅くないか?」
「ああ。何かあったのかもしれないな」
「とりあえず城壁組が到着するまでこいつらの相手をするぞ」
「了解!」
剣を抜こうとした瞬間突然当たりが爆風で包まれる。思わず目を瞑って防御の姿勢をとった。
目を開けて目の前を見ると黒い大きな物体がそこにあった。視界が晴れてはっきりと物体が見えるようになる。そこにいたのは先程まで空中を飛んでいた竜だった。
「おいおいおい、ほかの奴らの相手をするだけでこっちは手が塞がるって言うのになんで上級モンスターまで来ちゃうんだよ」
「どうにかして食い止めよう」
「でもどうやって。流石に力量差がありすぎるよ」
ハルタの言う通りだ。どう足掻いても負ける未来しか見えない。
突然どこからか声が聞こえてきた。
「城壁組って奴らは掃除しといた。流石の二人でもこれほど圧倒されては案なしか? 少し残念だ。これをどう乗り越えていくのか期待していたんだがな」
声には聞き覚えがあった。声は竜の頭上から聞こえる。竜に乗っていたのはガリウドだった。
「ガリウドさん、なんで竜と一緒に?」
「俺は竜使いなんだよ。隠していたがな」
いつもより声のトーンは暗く、顔からはいつもの優しい笑顔が消えていていた。
「じゃあ俺たちのことを助けにきてくれたんですね」
「勘違いするなよ、ガキが! 俺はそっち側の人間じゃねえから。俺はディアブロ側だ」
どういうことか全く理解が出来なかった。今まで親のように俺たちの面倒を見てくれたり可愛がってくれた。なのにディアブロ側というのはどういうことだ? 今まで央都で積み重ねた数々の楽しい思い出の中にはいつもガリウドがいた。
「俺は元々ディアブロ側の人間で今までお前達を騙していた。これは上からの命令だ」
「そんな馬鹿な。ガリウドさんは俺たちのことを愛情もって面倒見てくれていたじゃないですか!」
ハルタがすかさず反論した。
「こっちにもこっちの事情があるんだよ。俺が今までどれだけ見下されてきたか知らないだろう。姉はこの大陸最強の一人と呼ばれる戦士でその弟はというとただの平凡な宿屋。周りの人は皆姉のことを慕い、一方の俺は見捨てられた。親に剣術をもっと上達したいと言っても聞き入れてもらえず、望んでもいないのにやらされたのは宿の雑用係。俺は今まで苦痛だった。そして俺はこれからその味わってきた苦痛を解放する」
ガリウドは指を弾いた。すると目の前の竜の口にが開きそこに炎が蓄えられる。
おそらく口に蓄えられた炎を俺たちに向かって放ってくる気だろう。
「ハルタ防御魔法を頼む」
「わかってるよ」
ハルタは両手を出して、詠唱なしで魔法を発動させる。俺たち前には水の盾が形成された。
「おお! 無詠唱ができるようになっていたのか。さすが俺が見込んだ奴らだ」
ガリウドが向こう側からつぶやいてきた。それと同時に指が再び鳴らされる。すると竜の口から巨大な炎が放たれた。
本当にハルタが形成した水の盾だけで防ぐことができるのか心配になった。
水と灼熱の炎が混じり合って水が蒸発する音が聞こえる。
いつまで経ってもこの炎が止む気配がない。後ろを振り返ると俺たちが今立っている場所を以外は焼け野原だった。先程まで後ろに固まって集団をなしていたディアブロは竜からの炎で焼き消されたのか姿は無くなっていた。
「ハルタ耐えれそうか?」
「うん。でもこれ以上火力を上げれられるときついかも……」
ハルタの額には熱さから沢山の汗が流れていた。
やっとのことで竜の攻撃が止んだ。
「やるな。ここまで耐えるとは大したもんだ」
「ガリウドさん、いやガリウド、お前に聞きたいことがある」
「お前呼ばわりとは何様だ。でも裏切られてそう思う気持ちはわかるさ。いいだろう、答えてやる」
「今回の央都襲撃は何が目的でやっているんだ? サザンカ村襲撃にお前は関わったのか? あと、シーナはどうした」
俺は冷静さを少し失い始めていた。それはそうだ。今まで親身になって寄り添ってくれた人に裏切られたのだから。回答次第ですぐに奴の喉を切り裂こうと思った。
「襲撃の目的を教える敵がどこにいる。だが、俺は優しいからヒントをやろう。今回の目的は剣・魔術学校のことで襲撃している。サザンカ村襲撃はもちろん俺が企てた。サザンカ村について詳しく知っているやつでないと計画できないからな」
ガリウドを信じ切っていた俺が馬鹿だった。奴は人が変わったように、にやけながらサザンカ村襲撃のことを語った。
「で、一緒にいたシーナはどうした! 安全な場所にいるんだろうな」
「さあどうだろうな? 思いを寄せている人を危険に晒されて今どんな気持ちだ? ヒャッハッハッハ」
「クソが」
俺は剣を抜いて加護を纏って奴に襲い掛かろうとした。だが誰かによって引き止められた。
「待てタツキ。この狂っている野郎は私の手で殺る」
「えっ?」
振り返るとノルデンが手を握っていた。顔を見ると血管が浮き出て怒りを露わにしていた。
「ノルデンさんどうしてここに?」
「お前達の卒業を祝いに来たんだ。だが来てみると央都がこの座間だ。こいつは任せて学校へ向かえ。何かしらの手がかりが見つかるはずだ」
いつから俺たちの話を聞いていたのだろうか。ここはとりあえずノルデンに任せよう。自分の弟がこんなになってしまってノルデンも自分で手を下したい筈だ。
「わかりました。よろしくお願いします」
「ノルデンさん、よろしく頼みます!」
「それなりに強い奴が央都に来ているはずだから気をつけろよ」
一礼するとすぐさま学校の方へ向かった。
シーナは今どこにいるのだろうか。先ほどから気になって仕方がない。
学校に到着した。色々と破壊されているかと思ったが、一切その姿を変えていなかった。入口の周りを見回しても誰一人いなかった。ただそこには不気味な静けさだけが広がっていた。
入口の門をくぐり抜けて校舎に向かって歩いていると道の中央に竜が二体ずっしりと構えていた。隣には二つの人影があった。
「グロロロロロロロ」
竜が俺たちを睨みながら喉を鳴らす。
「やっときたかぁ。ものすごいまったよぉ〜」
「お前は! この前のサザンカ村襲撃の」
「そうそう、覚えていてくれたんだぁ」
彼の笑った顔から白い歯が垣間見える。
「学校に何の用だ?」
「必要な文書がここに保管されていてねぇ。それを奪いに今回来たのさぁ。今頃手下たちが文書が保管されている書物庫を探しているだろうねぇ」
「それを見逃すわけにはいかない。そこをどいてもらおうか。どかないというのならお前を殺す」
「うーん。本当は君たちの相手をしてあげたいけど。君たちの相手は隣にいる子なんだぁ」
隣に視線を移す。
「お前らがタツキとハルタか。一度やりあってみたかったんだ。おいトローニ手を出すなよ。こいつらは俺の相手だ」
奴は自分達よりも遥かに多い筋肉を体につけているのがローブの上からでもわかった。ということは物理的な攻撃を得意としているのだろうか。
「わかっているよぉ〜ケルビ。そうだ! タツキくんの好きな人? シーナって言ったっけ? 彼女なら安全な場所にいるよぉ。ケルビに勝ったら返してあげる」
「嘘じゃないだろうな?」
「本当だよぉ〜」
トローニの言ってることに確証は持てなかったが、シーナのため、そして央都のためにケルビと戦うことに決めた。
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