僅かな休日
「へー、この国ほぼ鎖国状態だったんだ」
「まあ、今の時代に主星だけの国家なんか相手にされそうにないしなあ。最悪滅ぼされそうだし」
エストは物珍しい視線を向け、クラインは苦笑いを浮かべた。
リビングには、八人の少年少女がいる。
お互いにおぼつかない質問を繰り返しているが、無理もない。クライン達にとっては初めての外国人で、エスト達にとっては初めて来た土地なのだ。
「それよりさ。怒ったりしねぇの?皆を捕まえたの俺たちだし」
あえてエリゼとクラインが避けていた質問を、ガイがぶっきらぼうに問う。
「まっさかー。私たち探すのが仕事でしょ?仕事してる人に怒れないでしょ」
エストはあっけらかんとしている。陽気な答えにエリゼとクラインは胸を撫で下ろす。
「へー、そんなもんなのか」
ガイはよく理解していないようだった。
「まあ、最初はどうなることかと思ったよ。一生帰れないのかなあって」
「一般人の拘束は問題よ?そもそも戦争中ならまだしも国交を持たないこの国では外から軍隊やスパイが来ることなんてないわ。むしろ、鎖国を終わらせるのに丁度いい機会なのかもかもしれないわね」
リンは掛けていた眼鏡を上げて、小さく笑う。
「そうだ、明日町案内しねぇか?」
ガイが手をポンと叩く。唐突だったが、いいアイデアだとクラインは思った。
明日は士官学校の休日であり、なおかつエスト達は数日で帰ってしまうので思い出作りにはうってつけだ。
「いいね。折角だし観光も兼ねて久々に遊ぼうか。皆はどうかな?」
クラインの提案に少女たちは互いの顔を見合わせ、それから同時に頷いた。
「っしゃあ!久々に遊べるぞー!」
ガイは幼子のように大はしゃぎしていた。休日も訓練と勉学に勤しみ、休日返上で鍛錬を行っていたが、本当はガイも遊びたかったのだ。
~~~~~~
この時代に自動車免許は無い。自動制御される自動車に行先さえ入力すれば、運転いらずで目的地に着ける。
座席は従来のような三列の座席で、前方にガイとクラインが乗り込んだ。
タッチパネルを操作して、観光名所を入力する。車のエンジンが掛かり移動し始める。
「今日は何処へ行くの?」
「今は秘密よ。きっと驚くと思うわ」
エストが問うと、エリゼは悪戯っぽくウインクした。