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52/52

52.あんな小娘の面倒だけは絶対見ない

 「ああ、何かすみませんね。結局品物持って行っちゃったから、自分が立て替えます」


「そうか、白殿は噂通り、年齢に見合わず道理をわきまえているようだ」


そういいつつ、値段を提示されるが精々が銀の葉2枚という所、ケチる必要なんて無い値段なのに、あの小娘ときたら。


「自分も本当は関わり合いになりたくはないんですけど、秦師姉に恩義のある身なもので」


「そうか、その歳で恩義を解するとは、将来に期待が出来る。我も本当は迷いがあった。この宗の次代を担う秦様預かりの人物の不興を買えば、この宗での取引もしづらくなる。しかしあのまま引けば我が宗の面子も立たない、間に入ってくれた事はきっと忘れないだろう」


うーーん魔宗ってもっと残虐非道の我儘放題みたいなイメージだったのに、超常識的じゃん?この人どこの魔宗から来たんだろうか?


「あの、本当に不躾な質問で申し訳ないのですが、無知な子供の無邪気な問いですので、どうぞ勘繰らずにいただきたい。どちらの宗派でらっしゃいますか?」


「ふむ、そう言えば我は白殿の噂は聞いていても、名乗りはしていなかったか。傀儡門が楽義と申す」


何かすげーちゃんとした名前の人だな。何でまた魔宗なんぞに入ったのか。


「既にお見知りおきいただきありがたいのですが、改めて名乗ります。白小青と申します」


「なんとも、しっかりした方だ。もし噂を聞いていなければ、あえて童形を取る立派な修行者とお見受けするところ」


「いえ、あの過分な評価痛み入ります。それで、傀儡門というのはどういった道を志すのでしょうか?」


「道とは個々に志すものであり、一概に申し上げにくいのだが、我々は傀儡を作る事を宗旨としている。特に我はこの宗の豊富な魔獣の死骸を引き取り、生活を手伝う傀儡として提供する事を主な修行としているのだが、なにぶんこの宗では霊石を中心に鉱石の取引が少ないので、他宗との往復時間の方が長いかもしれない」


あ~出た出た霊石だよ。なんかこの宗って辺境すぎて、霊石を輸入に頼ってるんだっけかな?確か辛い物が食べれないおじさんが言ってたんだよな。


「その霊石って、銀の葉とかで代用したりは出来ないんですか?」


「我は出来ないな。金または土の霊根の者は銀葉から霊力を取り出すことは難しい。だが、他宗の丹薬師の元へ持っていけば、高価で取引できるのも確かだ。故に商売としてはこの宗は悪くはないのだ」


「成る程、色々とご教示くださいまして、ありがとうございます。ところで傀儡をお売りになるのが修行なのに、あの銀細工って一体……」


「あれは、突き刺す事で一時的に対象を傀儡と化す法具だが?」


ん~!魔宗っぽい!超怖いんだけど!刺すだけで対象を傀儡にするとか、操作系じゃん!怖!


「そんな大層な物が、何で銀の葉2枚で取引されるんです?」


「それは、対象とする物が精々が手を一杯に広げた程度の小動物に限られるからだ。主に狭い空間等を走らせ、斥候に使う程度だ。しかも小動物の意図や意思を完全に汲めるものなど限られている」


ズコー……超古典的なコケをかましてしまった。


いや、まじで何でそんな物を欲して、更に揉め事まで起こしたのか?やっぱりあの小娘はアホなんだと心に深く刻む。


「あの、色々と教えてくださいましてありがとうございます。これからも時折顔を出させていただきます」


いや、マジで!凄く常識的でしっかりとした受け答え!魔宗が何か怖いってイメージが一気に吹き飛んだわ!


〔それはそうだろうな。魔宗ってのはやる事は阿漕に見えるが、その実ルールに縛られ実利をこそ重視する。理想ばっかり追い求めて、あわない者を排斥する正派よりある部分じゃ付き合いやすい。ただし、油断はするな〕


「こちらこそ、白殿は大変理解の良いお方とお見受けした。今後とも良い取引を願う」


なんだか魔宗とちょっと気持ちが通じて、いい気分で露店から振り返ると何故かまだ人だかりができている。


「一体全体なにがあったの?」


自分が何となくそう言うと、一人の見た事のある露店の店主が口を開く。


「いや、何て言うか……あの沈紅羽は何とかならないもんか?」


それはもうすごく嫌な予感がして、嫌な冷や汗が流れ落ちつつ、一応事情を聴く。


「なんで?」


「そりゃあなぁ……」


そういう店主が周囲に目を配るとざわざわと噂話が流れ始めるが、結局の所、沈紅羽が剣を覚えた事で以前より更に我儘放題かまし、剣で脅しては物品を奪い取るという事が多発しているようだ。


いや、マジでそんなのただの強盗じゃん?いくら力がモノを言う世界っていっても限度があるでしょ。


まぁ、正直自分がどうこうできる範囲はとうに超えてるんだけど、一応は出来る事はしなけりゃいかんだろ。


「分かりました。次に秦師姉に会う機会があれば報告します。本当に申し訳ないんですけども、今自分に出来る事はそれだけです」


何らか非難されるか、落胆されるかと思ったのだが、想定よりも周囲の反応は温かで、その場は解散となった。


どうにもあの小娘だけはいただけないな。

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