次なる目的地へ
フィヌイはキョトンとした顔をすると、
――あれ・・ひょっとして、まだ言ってなかったっけ・・?
ティアをつぶらな瞳で見つめると、可愛く小首を傾げたのだ。
・・あ、これは言ったつもりで忘れていたという、いつものパターン。
ちゃんと言わないとダメですよと・・注意しなければいけないんだが・・
白くてもふもふなうえに、可愛いのでつい許してしまうのだ。自分でも甘いってわかっているんだけどね。
「もう、ダメですよ・・フィヌイ様。そういうことは今度からちゃんと言ってくださいね」
――ふふふっ・・ごめんね。次からは気をつけるから、
子狼の頭をなでなで、もふもふを堪能するとつい頬が緩んでしまう。
――うふふふふっ
「えへへへへ・・」
会話の内容はわからないが、こいつらの雰囲気からお気楽な話をしているのだろう。
ラースはぴくぴくしながらこめかみに手をあてる。
こんなのと、これから先も付き合っていくのか!そう考えると頭が痛くなりそうだ。
「本当にこいつら大丈夫なのか・・!」
正直、本気でまともな神にでも祈りたい気分だ。
――それじゃ、次の目的地を発表するね。
ブラッシングも終わり、フィヌイ様は大きく伸びをし身体をほぐすと、話しを始めたのだ。
――次の目的地だけど、このまま道なりに東に向かいシェラー村を目指すよ。
「シェラー村ですか・・?」
「なんだと――!!」
聞いたことのない村の名前にティアは首を捻るが、
ラースは驚きを隠せないでいた。
「知ってるの?その村のこと・・」
「ああ、そうだな・・」
この男にしてはなんとも歯切れの悪い答えだ。
――シェラー村の近くにはザイン鉱山があって、そこでは綺麗な青い宝石が取れるんだ。
その宝石は僕の神力との相性がいいし、それを使ってティアにお守りを作ることができる。それともうひとつ目的がある。
「もうひとつの目的っていうのは?」
――それは、村に着いてから話すよ。複雑な話だから実物を見せながら話したいんだ。
フィヌイ様は尻尾をひと振りすると、それ以上は話さなかった。
「そういうことでラース!次の目的地はザイン鉱山の近くにある、シェラー村だってさ」
「ああ・・」
また生返事だ。一体どうしたというのか・・
だが、いつになく真面目な顔でラースはティアを見つめると、
「ティア、俺は反対だ。どうしてもそこを目指さないといけないのか?」
「どうしたの?いったい・・」
「あそこは・・国の統治が行き届いてない場所だ。危険すぎる・・また、命を狙われたらどうするつもりだ!」
ティアは振り返るとじっとフィヌイの目を見つめたのだ。
青い瞳は澄んでいて、寂しそうに嫌だったらそれでもいいんだよと言っている。
「ごめん・・次の神託がそこなら私、行ってみる。ラースは嫌だったら無理についてこなくてもいいから」
「・・! わかったよ。ついていけばいいんだろ!ついていけば・・」
ティアの言葉に根負けし、ラースはそっぽを向いたのだ。
だが嫌そうな言葉とは裏腹に、彼は頭の中ではすぐに切り替えていた。次に、どう動くべきかを考え始めていたのだ。




