休息とブラッシング
「あの・・フィヌイ様、もし良かったらブラッシングってしてみませんか?」
――ブラッシングって毛を梳かすことだよね。
ティアの提案にフィヌイはキョトンとした顔をする。
「そう、それです!毛づくろいもいいですけど、ブラシで梳かすと毛に色つやが出て、皮膚の血行も良くなるんですよ」
――それじゃ・・ちょっと試してみようかな。
興味を持ってくれたようなので、善は急げとばかりに子狼姿のフィヌイ様を抱きかかえると、近くの草原へとダッシュで移動する。
ラースが呆れたようにこちらを見ていたが、そんなことなど気にしてはいられない。
ティアの膝の上にうつ伏せになり、ぺたんと顎を乗せると気持ちよさそうにフィヌイ様は目を細めていた。
いつもはぴんと立っている耳もリラックスしているようで今は垂れている。
背中のブラッシングをしながらティアはほくそ笑む。
ふふふ、良かった。どうやら気に入ってくれたみたいだ・・
さすがは商業都市ディルで買った、犬専用の最高級ブラシ。イノシシの毛を使っているからブラッシングには最適だと店員さんの言っていた通り。
後は、ブラシにたまったフィヌイ様の抜け毛を使えば・・念願のクッションの完成!
ふふふふっ考えただけで笑いが止まらない。
前に作ったクッションカバーにフィヌイ様の肉球の型はとってある、後はブラシにたまった毛を入れれば念願のもふもふクッションの完成だ!
「お前・・なにか悪い物でも食べたんじゃないのか。なにニタニタしてるんだ・・」
ラースが怪訝そうにこちらを見ているが、
「な、なんでもないわ」
そうは言ったものの、また頬が緩んでしまう。だって嬉しいんだもん。
これでいつでも、心おきなくもふもふを堪能できるのだ。
でも、おかしいな・・? ブラシについている抜け毛、ちっともたまらないんだけど。
「あの~、フィヌイ様の毛って生えかわっているんですよね。なんでブラシに抜けた毛がたまらないんでしょうか?」
――・・・? 確かに季節によって毛は生えかわっているけど、他の動物と違って僕から離れた毛は消えちゃうんだよね。
き、消える・・
つまりは、抜けた毛はブラシにもたまらないしクッションも作れないってこと!!
心の中でティアは絶叫し、ガクッとうな垂れたのだ。
それは、密かな野望が終わりを迎えた瞬間だった。
「おい、またいつもの百面相かよ・・。それよりも神託はどうなったんだ、神託は?」
その時、ラースの冷たい声が聞こえ。
「あ・・」
そうだった。すっかり忘れてた・・。
慌ててティアは、表情を引き締めるとフィヌイに向かい問いかけたのだ。
「フィヌイ様・・、次の神託をお願いします!」
ラースはその様子を見て脱力し、こいつらは本当に大丈夫なのかと本気で心配したのだ。




