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魔除けになる足跡


 その日の深夜――


 フィヌイ様の力を借りこの家にいる人たちはもちろん、村全体にいる人たちまで範囲を広げ、夜明けまでぐっすり眠ってもらうことにした。

 廊下へと続く扉をそっと開けてみると、扉の前では警備をしてくれている軍人さんふたりもすやすやと夢の中のようである。

 そうこれは以前、商業都市ディルにて、アドラ・ネーシュの館の中でフィヌイ様が使ってくれた眠りを誘う術。今回もそれと同じもの使ってもらったのだ。


 気がつけばフィヌイ様は子狼の姿のまま、ちょんちょんと前足でおやすみ中の軍人さんを突っついていた。


 ――ほら、前足でこんなにバシバシたたいても起きないよ。ほら、みてみて!

 「あの…フィヌイ様。……護衛の人の服に肉球の跡がついているんですが…」

 ――あ、ほんとだ。でもいい記念になるよ。なにせ、この国の主神である僕の足跡なんだからね。そのまま家に置いておけば魔除けにもなるし良いこと尽くめ間違いなし! 目が覚めたら、きっと泣いて喜ぶよ。

 「はあ…そうなんでしょうか……」


 なんと答えていいのかわからず、私は曖昧な返事をする。

 神様がつけたものだし、たしかに特別な記念にはなる。希少価値もあるだろうし、神力もちょっとだけ入っているからそれが魔除けになるということか…?

 でも、そうとは気づかずこの人が間違えて洗濯してしまえばそれで終わりだが……


 まあ、そんなこんなでフィヌイ様とたわいない話をしながら、数日宿泊してお世話になった村長さんの家をこっそりと抜け出したのだ。もちろん、私の貴重品も念のため全て持ってである。


 村の広場にはナギさんが言った通り、軍の部隊がテントを張り駐留しているようだ。

 しかし夜中とはいえ見回りの兵ぐらいはいそうだが、そのわりには広場はしーんと静まりかえっていた。どうやらみなさんおやすみ中のようで、フィヌイ様の眠りの術が効いている証拠だと私は確信したのだ。


 広場を抜けて村を出ると、私たちはふたたびザイン鉱山へと向かったのだ。


 その途中にある、村はずれのデックくんの家の近くを通るが……

 それとなしに聞いた話によると、お父さんはザイン鉱山で衰弱した状態で発見されたが一命はとりとめたそうだ。


 どうやら強制的に鉱山で働かされていて、最後は鉱山にいた他の人たちと一緒に邪神への生贄にされるところだったようで…本当に危ないところだったらしい。

 お父さんが無事に帰ってきてくれて、お母さんやデックくんもきっと喜んでいるだろう。


 ほんとうは一晩泊めてくれたお礼を直接言いたかったが、私が聖女だと気づいていたらややこしい事態になるのも困るし、それを避けるためそのまま通り過ぎることにした。

 家族三人――これから幸せに暮らしていけるように、そんな祈りを込めてティアは心の中で感謝を伝えたのだ。


 そしてフィヌイ様に導かれるままザイン鉱山を私は目指す。

 しかしなぜか鉱山の裏側へと回ると、今は使われていない採掘現場にたどり着いたのだ。そこには今は使われていないいくつもの坑道が、ぽっかりと横穴が開いている。

 だがよ~く見るとその中の坑道のひとつに誰かが立っている。それに気づいた私は思わず身構えると。


 「よう! 遅かったじゃねえか」


 そこには、ラースと鳥の霊獣ノアの姿があったのだ。

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