この地に別れを告げる
「なんだ…ラースとノアか、びっくりした~ でも、なんでこんなところにいるの?」
「俺は、聖女の護衛だからな。お前が行くところについていくのは当然だろうが」
ティアは緊張を解くと、ほっと息を吐く。
しかし、そこでふとなぜあいつがこの場所にいるのか疑問がよぎり聞いてみたが、やっぱりというべきか…のらりくらりとかわされてしまった。
うう、やっぱり私では聞きだせないか…
遠目ではわからなかったが、近くで見てみるとラースはすでに旅装の姿だ。私が村長さんの家に置いていた、全ての荷物も持ってきているようだ。
これは村には戻らずに、そのまま旅に出るつもりということか……
足元にいるフィヌイ様にちらりと目を向ければ、特に文句もないようで、髭をぴんと伸ばしふ~んと言った感じで見つめている。
「このまま旅に出るってことで、特に文句はないようだな」
「そうね…あのまま村にいても聖女様だの、なんだかんだでややこしい事態になりそうだったし。…ナギさん特に村長さんも真面目な人だったから、村を出発するなんて言ったら村全体を上げて、盛大にお祝いとかやりそうな雰囲気で、さらにこれからの旅に護衛とかもつけられそうな気もしたしね。私、そんなに偉くないし…みんなが無事だったらそれで満足だから、ただ気ままに旅を続けていたいの」
「クククッ…お前が予想した通りその流れでまず間違いないだろうな。まあ、お前地味だからな。そういう祝いの席とか合わないだろ。ついでに、お子様なうえに華もないしな」
「はあ…!」
こいつはまた人の感情を逆なでするようなことを言う。本当に良い奴だなと思ったのは、取り消しだ―!!
――僕もこれ以上、村に滞在するの気が引けるんだよね。ほんとうは、いつものようにお腹いっぱい美味しいご飯を食べたいんだけど、神様の威厳も保っていないといけないし、ただでさえ大変なのにお腹いっぱいご飯が食べたいなんて言いずらいよ。村が破産したら大変だし……だったら、村を出て自分たちで食べに行った方がいいよね!
「……。」
確かに……子狼の姿でも、普段のフィヌイ様ならガツガツとたくさんの量を食べる、たべる。どうりで、村ではずいぶんと小食で上品に食べていると思ったらそういうことか。
いつものこととはいえ、フィヌイ様って相変わらずなんだなとティアはしみじみと思ったのだ。
「フィヌイ様の言う通り。区切りもいいことだしここの結界の修復を終えたら、このまま次の目的地を目指しましょう。あ、でも…ナギさんに黙って出てきてよかったのかな。私たちがいなくなったら心配するんじゃ…」
「いや、それは問題ない。あいつには書置きを残してきた。『神託に従い、急ぎ次の目的地を目指す』とか書いて、嘘じゃないから大丈夫だ。移動場所は、おいおいノアを通じて殿下に知らせれば問題はない」
私が心配していると、ラースはしれっと言ってのけたのだ。
フィヌイ様も良いと言ってることだし、私も特に異論はなく、このままの旅に出ることが決まったのだ。
そして…再び水晶洞窟へ着くと、フィヌイ様の誘導に従い私はこの地の結界の修復を行う。今回は倒れることもなく、無事に修復を終えたのだ。
どうやら前に比べ、魔力のコントロールが上手くなったようだとフィヌイ様は褒めてくれた。
あらためて修復を終えたばかりの結界を見てみると最初に来たときと比べ清浄な光を放ち、心が洗われるような空気に満ちていた。
そして、私たちはフィヌイ様の導きに従いこの地に別れを告げ旅を続けたのだ。




