腹を切らせて、頭を砕く
能力を権能と書くようにします
統一してなかったので
僕には、もう彼を殺せない。
ただのエゴだ。
何も知らなければまだ違ったのかもしれない、だけど知ってしまったんだ。
でも
「死んでやわけにはッ.ぃかねえぇよ」
自殺で失われるはずだった命だ。
サリエルと共有されてしまった命だ。
こんな所で、無駄遣いは許されないのだ。
血が送られない頭で、覚悟は決めろ。
そして、ぐちゃり、と内側から肉がつぶれる音がした。
「なるほど、考えましたね。ですが荒業過ぎでは?」
心臓を再生させるために、体内の槍の位置を動かす。
能力で、半透明の塊を、槍と肉の隙間に生み出す形で、だ。
傷口から、肉を爪で抉り出すような痛みが走り、左の肺が文字通り押しつぶされる。それでも、心臓の位置にあった異物をどかせた。
2秒ほど、だっただろうか。血が、体にめぐる。
心臓が再生した。
鎖骨が外れ、使い物にならなくなった左半身を気にも留めず、右手で突き出た槍を握りこむ。
「させないよ」
白石の斧が、首めがけて振り下ろされる。
「死ねねえんだよ、この命は僕だけのものじゃないからっ!」
半透明な物を動かす、イメージはガンダムのファンネルだ。
斧をはじくと同時に、痛みが頭をたたく
それでも、槍を握りこむ力は抜かない。
「悪魔、手を離せ」
「だから私は、悪魔じゃありませんよ」
白コートの小さな姿が、自分から離れる。
体から槍を引き抜く。
「あわせろ」
「わかりました」
白石が斧を少女に渡して、血から刀を作り出す。
そして二人が一緒に走り出し、武器を振り上げる。
刀は正面から縦振りに。
斧は右側から横振りで。
左半身は、鎖骨が砕けたため力が入らずあと数秒は使い物にならない。
だけど、
「槍が、こっちにはあるんだよ!」
両手で持てないからと言って、槍が機能しないわけではない。
長いものといううだけで、使い方はいくつでもある。
ブン、と
バットでも降るように、白石の刀の側面に槍をぶつける。
刀と槍が砕ける。血の結晶がばらばらと視界にちらつく
そして...
腹部に激痛が走った。
腹が裂けた。
「...どうして?」
腹を裂いた張本人である白いコートを着る少女の声が、疑問形なのも無理がない。
小暮夕英が、権能で防がなかったからだ。
しかし、その疑問はすぐに解決する。
カン、と鉄と硬いものがぶつかる音を耳が拾う。
攻撃を防ぐのに使わなかった権能はどこに行ったのか...。
彼の権能はその場に固定されるのではなく、動かすことができる。ガンダムのファンネルのように、ある程度自由に動かすことができるのだ。
つまり、だ。何が言いたいのか、それは...
落としたものを、小暮のもとに持ってくるぐらいはできるということだ。
左手が拳銃をつかんだ。
左半身はもうすでに治っている。
至近距離で、外すわけがない。
爆音と血が爆ぜた。
残り23発。




