最後の決意表明
やるやる詐欺をまたした作者
黒い水でーす
マジですいません
ここらへんで区切らないと、話が長くなりすぎそうだったんだよ
俺は!悪くねえ!
やめ!なぐら
ツーツー
壊れた建物が散乱する街の中を、一人の少年が全速力で走ろうと、一歩を踏み出した。
ミサイルではないのか?というほどの速度が出た
視界が、いつもの数10倍の速さで流れた。
「はやっい!?やばあうああああああああ!?」
契約によって身体能力が上がっているのを完全に忘れていた。
いっきに、神人と化け物が戦う戦場から離れることができたが、完全に速度が出すぎている。
動体視力も契約によって上がっているのか、一応周りの風景を目は追えている。
だけど、すぐに止まらず、勝手に上がった加速は本能的な恐怖が煽られる。
急な坂を、ブレーキのない自転車で下るのと同じ理由だ。
恐怖以外の何物でもない。
「ぎゃああああああああああああああああ!!!!」
情けない悲鳴が、上がった。
「やっと...止まった」
足が、怯えてがくがくする。
上手く立てず。
地面に刺さっている。折れた標識だったものををつかむ
「慣れるまでは、全速力を出さないようにしないと..」
止まれたからよかったが、こんな速度で建物にぶつかったら、つぶれたトマトの出来上がりだ。
「...ぐろい」
想像するだけで鳥肌が立つ
「いやいやこんな想像してる場合か、早く亀裂を探さないと」
右手を見る。正確には、手首の赤いリングを
大きさは腕時計ぐらいの大きさ、なのに重さが一切なく皮膚に触れない。
「これが亀裂の場所を教えてくれるって言っていたが、どうすればいいんだ。これ.....」
『えー、そんなこともわからず走ったの?おばかさん?』
「...え」
右を向くと。
白いワンピースを着て、青い目を持ち、クリスタルのように透明な小さな女の子が右側からのぞき込んでいた。
「ぬあああああ!?」
『え...驚くの?』
女の子は宙に浮きながら、そう浮きながら、宙に浮きながら
後ろにくるりと回転する。
半透明なロングヘアーが幻想的に、ふわりとなびく
そして、彼女の空気に溶けそうな透明感。
それが、氷細工のような儚げさを出す
『あー、そうか君から見たら初対面だったね。驚くのも無理ないか、ごめんね。』
「君...は..?」
その女の子は、小暮優香
僕の妹に似ていた。
だけど何かが、決定的に違う
理解できないけど、理由さえわからないけど、その女の子は、小暮優香に最も近く。
絶対に、確実に違う存在なのだ。
魂が、そう叫んでいる。
『...それは、私にもよくわからない。でも、それを考えるのはあとでいい』
女の子は、こちらの方を向き。真剣な目で
『あの子を、死なせたくないんでしょ?』
「っ...ああ」
あの子、それがだれかなんて聞き返さなくてもわかった。
だから、その問いかけに僕は、しっかりとした決意をもって答えた。
『よし、リングを触らせて、ガイド役の私が作動させる』
右手を差し出す
クリスタルのように透き通った指がリングに触れる
そして、リングが砕けた
「え」
砂のように、リングが砕けて崩れる。
突然の出来事に脳の処理が追い付かない。
啞然としていると。
砕けた欠片が渦を巻き始め、丸い球体となり。
リングのかけらを落としながら、移動し始めた。
『それを追って。ヘンゼルとグレーテルのお話のように、浮かぶ欠片を拾いながら』
それを言い残すと、女の子は消えた。
僕の目の前には、赤い欠片だけが残った。
唐突なことばかりだ、だけど
「死なせない」
それだけを心に刻み
「絶対にもう死なせない!!」
交通事故で妹を失った時の、後悔を繰り返さないために
少年は駆けだした。
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亀裂は、3階建てのボロボロなアパートにあった。
黒く、でもどこか水晶のような白さと儚げな透明感がある亀裂
それを前にして
ずっと考えないようにしていたことを、考えた。
これ以上、考えないようにしていたら、きっと後悔すると思ったからだ。
それは妹とサリエルのことだった。
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交通事故は、どうしようもないことだった。
だけど、小暮有英は自分を責めた。
幼い妹の損失に、心を砕かれながら自傷行為をするように
なんで自分が、道路側に立たなかった。
なんで、白線の外を妹に歩かせた。
なんで、自分が身代わりにならなかった。
なんで、神様は自分を身代わりにしてくれなかった。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
妹を死なせた、自分は生きているんだ?
そんな後悔が、懺悔が、いつも心を渦いた。
死にたかった。
自殺したかった。
だから僕は、今日。
ビルにいった。
そして、妹に似ているサリエルと出会った。
「僕が、彼女を守ろうとしているのは...」
彼女を、僕の妹の小暮優香と重ねて....
「いや違う僕は...」
「彼女が、小暮優花になると思っているんだ」
もう死なせない
そんな言葉が口から出たとき、ぼくは心の奥底ではそんな風に考えていたと、気付いた。
神と名乗る、RPGのラスボスのような力を持つあんな化け物がいるのだ。だから死人が生き返って僕の前に現れてもおかしくない、それがただ記憶を失っているだけだ、僕を忘れているだけど、思い出したら僕を兄と慕ってくれる妹に戻る。そう、心の奥底では考えているのだ。でも
「...あれは、妹じゃない」
「妹は死んだんだ」
はっきりと己の口で、妹が生きてるかもしれないという希望に終止符を打つ
そうしなければ、自分は絶対。彼女を、小暮優花としてみて、サリエルとして見れなくなる。
それは、彼女の存在否定と同じだ。
僕を、救おうと死なせまいとした、彼女の優しい思いを踏みにじりたくはない。そこまでして僕は、自分の心を守りたくない
もし、小暮優花として彼女を思えば
僕を助けたのは、彼女の心の奥底では僕を兄だと覚えているからだ。
彼女が僕と契約しようとしたのは、兄である僕に親しみを覚えていたからだ。
そんな風に言って、彼女の行動全てを、妹の生まれ変わりだからだ、といい始め彼女を小暮優花に仕立て上げようとしてしまう。
妹の死を乗り越えられない臆病な心を、後悔と絶望で、すりつぶさないようにするためという、身勝手な考えで、だ。
ふざけるな
そんな身勝手が許されると思うな
心が痛くなる、妹が死んだと思うたびに痛くなる
でも、
「妹は、死んだ。死んだ。死んだんだ!!!!!!」
ポロリと一滴だけ、涙が頬を伝う
でも、それを気にせず、亀裂をにらみ
「サリエルは、絶対死なせない」
僕が助けたいのは、サリエルであり死んだ妹ではない,
と区切りをつけ
彼の戦場へと踏み出した。
亀裂の中、そこは
太陽があった
「....光?」
暖かな日差しが、目に飛び込んできた。
夜目だった目にはまぶしすぎて、目を細めたら。
うぐいす?の鳴き声が聞こえて。
目が慣れて周りを見渡せば
「も...り?」
鬱蒼と生えた草と、生き生きとした木の緑が視界を埋め尽くしていた。
すると
「きゃ!だ、だれです!うちの森に入ってくる、どろぼうさんは!です!」
「え」
後ろから、そんな可愛らしい叫びと僕への糾弾が聞こえた。聞き覚えがある声だ。だってその声は...
「化け物!?」
慌てて、後ろを振り向く
そこには
「ばけもの!?ひっひどいです!うったえてやるです!め..いよ?きそん?でうったえてやるです!」
顔を真っ赤にして怒る
金髪で緑色の目を持ち、化け物と同じ顔をした普通の女の子がいた。
そして思い出した。最初その外見を見て違和感に思っていたことを、記憶に引っかかっていたことを
「白石イザベラ...?」
「...あのーできれば恥ずかしいからお父さんの苗字は繋げて言わないでほしいのです..ていうか!何で知ってるのです!私の名前!」
女の子が、抗議する
だけど、僕にその言葉は届かない
だって
「なんで、いるんだ...」
この子は...
「なんでいきているんだ...?」
白石イザベラは
僕の妹を引いた運転手の子供さんであり...
「生きているはずがない。だって...」
連続殺人事件の最後の犠牲者なのだから。
「そうだね、生きているはずがない」
男性の声が聞こえた。女の子の後ろの方の草むらからその声の持ち主出てくる。
「あ!お父さん!!」女の子が、その男性に抱き着く
僕は、ただ茫然としていた。
「なんでここにいるんですか、白石さん」
「...やあ、小暮君。裁判以来かな?」
子どものあたまを優しくなでながら
僕に、あはは...と弱々しく笑うその男性は、白石透は、左手に化け物の目と同じ色の緑のリングをまとっていた。
また、読んでね 本当にごめんなさい