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71. デセンドの優しき第六王女ミェルVS謎の地雷系美少女スーニャ!?②(燃料追加編)

 お母様、お元気にされておりますでしょうか。私は変装で大切な友人を騙して、面白がってしまった事に罰が下ったのでしょうか。愚かな失敗をしてしまい。きっと、恵雨お母様も草葉の陰から泣いて見ておられる事でしょう。


 どんなに悔やもうとも、私に優しい笑みを浮かべてくれるはずのミェルは引き攣った笑顔がほぐれる事はなかった。無言で歩く彼女の後ろ姿を見ていると、ただでさえ重い厚底ブーツの重みが更に増していく。

 あら、これなら身長高く見える上にかわいいし、地雷系ファッションはいいじゃない。そんな事を考え、ウキウキと廊下を歩いていた時の私は見る影もなく。奇抜なファッションに身を包んで、しおれながら、情けなくとぼとぼ歩いてスタジアムの通路を歩いていた。


「アスティルー……」


 いざという時には頼れる彼へ視線を向け、声を掛けるも、小刻みに首を左右に振る姿しか見せない。だめだ、この王子様は救わないタイプの王子様だ。


「私達に限らず、お兄様まで呼び捨てにするとは……!」

「あ、急に止まったら……」


 前を歩くミェルが急に止まり、履き慣れない上底の靴が倒れてしまう。ガクンと姿勢を崩してしまい、無意識に彼女の肩に掴まってしまった。


「きゃっ」

「ぎゃんっ!」


 ミェルは尻餅をついて、可愛らしい声をあげた。方や私は顔面を強打し、食堂の店主に追い払われている野良犬の様な声をあげてしまった。

 鼻は痛いし、足首は痛いし、恥ずかしいわで、今日はとても最悪な日なのだろう。ミェルに話しかけるのを邪魔をしてくれたシトレを絶対に許さない……!


「なんて所を掴んでいるのですか!?」


 地面から顔を離して、ミェルを見ると、私の両手は方ではなく、彼女の胸部を掴んでいた。

 ハイラさんよりも少し大きめ。本当に私と同年代なのかしら。何を食べたら、こんなに柔らかくて、大きいものが実るの?

 美味しいものを食べたらやっぱり、大きくなるのかしら。でも、最近は私も美味しいものを食べているけど、成長した様子はないのよね。


「ひぃっ、触らないで!」

「ごめんなさいっ!」

「ぜっ、絶対に許しません!」


 ついに作った笑顔まで消え失せたミェルに、親の仇を見るような目を向けられている。デセンドの法律が無ければ処刑している所だ、という比喩は本気なのかもしれない。

 許してくれる……かしら?


 もう何もしまいと、大人しくスタジアムに行って、わざと負けてしまおう。その後にちゃんと謝罪でもすれば、元に戻ってくれるかしら。

 

「貴女はそっち、私はこちら。アナウンスの指示をうけたら入場なさい」


 ミェルは私の腰を見る。


「貴女、武器を持っていないのですね。魔法士であろうと関係ありません。武器の貸し出しもしています。好きな武器をお使いなさい」


 銃は論外ね……使うとすれば刀かしら。カッコよかったので、ピニアに使い方を少し教えてもらった。だけど、それをミェルに向けるつもりはない。早く済ませて謝罪しようと考えながら、私は控室に入った。

 室内にはベンチがあり。テーブルには水やお菓子などが置かれていた。必要なら運動前に糖分を摂取しろということかしら?

 

『クーナ……しょうがない。ついていなかったんだ。察するに、メディの襟をぶつけられ、シトレに邪魔をされてクソ女と呟いたのだろう?』

「分かっているなら、アスティルがミェルに説明できないの?」

『無理だ。普段は怒らないから、怒りのコントロールする事に慣れていないんだ。このままだと、クーナに矛先が向く』

『お兄様、クーナとお話しをしているのですか!?』

「ミェルもそこにいるのね」

『聞いてくださいクーナ、とんでもなく失礼な方がヤルヤと私を排泄物呼ばわりしたのです。絶対に許されない事です。スーニャとかいう女……絶対に許しません!』

「私の名前に似てるわね。実は私の変装だったりして」

『申し訳ありません。冗談を聞けるほどの余裕はありません。仮に変装したクーナがした事でも、許せない事をあの女はしたのです。聞いてください、人前で私を押し倒し、私の胸に触って恥辱を与えてきたのです!』


 ええ、まだ手に罪悪感と感触が残っているわ。


『クーナは今どこにいるんだ。錬金術準備室に居る。そうだな!?』

『是非とも私の応援に来ていただけたら幸いです。相手が強かろうと、弱かろうと、私は鬼になってでも反省させてみせます!』

「ごめんなさい、今は危険な薬品を取り扱っているの。中和するのに時間がかかるから、間に合ったらそちらへ向かうわね」

『そうですか……本来なら痛覚トレースを切っているのですが、今回はちゃんと設定しているのです。私も痛い目に合うかもしれません……ですが、私は負けません!』

『駄目に決まってるだろ!』

『相手の申請レベルは五十台、私よりも高いですが……先生達からの了承は得ました』


 痛覚トレースって何!?

 痛いのは嫌よ。レベルのおかげで痛みは減らせるけど、それでも痛いのは嫌いなのに。


『クーナ、入場する前にちゃんと聞いてから出て。そうでないと酷い目に遭う』


 待機室のスピーカーからヤルヤの声が聞こえてきた。私にアドバイスをくれる様だ。


『クーナ、そのかっこよくて可愛い服の売っている所を後で教えて。絶対にわざと負けちゃだめ。ミェルが聖剣を顕現させてた。防御力の痛覚遮断を無効化する。とても痛い』


 聖剣って、魔族や魔物の霊体に特化した攻撃ができる剣の事よね。相手に痛みのみを与える事もできる。扱いを間違えれば拷問器具にもなる残虐性を持っているが故に、清廉潔白な人にしか使えないと言われている。伝承クラスの武器をこんな喧嘩まがいの試合で出そうとしているの!?


『ミェルはすごく怒ってる。殺傷力を下げて、痛みだけ与えてくる。お仕置きを超えた拷問……ミェルに勝って、服の売ってる所を教えて』


 私が悪いのに、ミェルを痛い目に合わせるなんて出来ない。


『ミェルは過去の自分を追いかけて、自分を出すのを我慢している。感情のコントロールが下手。怒りを抑える事を覚えてもらう。あの子の為にも絶対に勝って』


 そう言われてしまっては仕方ない。妹思いの厳しいお姉様の為に、私も本気を出すとしましょう。

 相手は聖剣、日本刀で戦えるかしら。ピニアは扱いに気をつければ、滅多に折れたり曲がったりはしないと言っていたけど。

 それはあくまでも剣の道に精通しての話だ。製造した職人さんには悪いけれど、消耗品として扱う必要があるかもしれない。


『気をつけて……お兄上の本当の護衛はミェル。クーナのレベルなら戦える』

 

 私はもしかして、この学園で1番怒らせてはいけない人を、激昂させてしまったのかもしれない。

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