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ゼラと一通


 


「ということでして」


 二人で押しかけたのは、第二の住処である図書館だった。


「ゼラさんなら、なにか案を思いついてくれるんじゃないかなと」

「なるほど。期待されてるというわけ、だな」


 いつもの青色の服装に身を包む赤い瞳の少女。

 毎週のようにあってたから、数ヶ月空くだけでも久々な気分だ。


「残念ながら、期待に添えるような案は私には思いつかん」

「え!?」


 ゼラさんのギブアップは、想像以上に早かった。


「頭いいし、ゼラさんなら何か思いついてくれるんじゃって思ったんですけど」

「具体的な解決法というのは、当事者以外だと相当難しいものだ。私はまず冒険者になったことがない。加えて、依頼を受け尽くすなんて人を初めて聞いた。そんな人が抱える悩みにどう向き合えばいいんだ」

「まあ、イレギュラーな悩みなのは分かりますが」

「そこをなんとかぁ……!!!」


 暁音さんからの頼みもあって、ゼラさんは再び頭を悩ませてくれるが……。


「名をあげるというのは、やはり地道にやっていくしかないんじゃないのか」


 とまあ、間違ってなどいない正論をくれた。


「それはそうなんですけど。でも、手っ取り早く名をあげないといけない身分でして……」

「手っ取り早くとは言うが、実力に見合わぬ肩書きを掲げるのは難しいことだし、何より危険だ。分不相応な土台に乗れば落ち方も知らぬわけだろう?」

「そうなんですけど……」


 難しく、危険なお願いなのは重々承知だ。

 なかなか引き下がらない僕を見て三度悩んだ後だった。


「そうだ、月の魔物を退けたというのは使えないのか」


 ゼラさんは、続ける。


「奴の名はこの王国中で広くある。冒険者ともなれば知らぬものはいないだろう。そんな怪物をラストリゾート無しで退けた唯一の者となれば、それは何より大きな功績として使えるはずだ」


 そっか月の魔物か、完全に意識の外だったな。

 月の魔物を撃退したことを売り文句にして、Sクラスパーティに混じる。

 確かに、実績だけなら文句の言いようはない。

 でも。

 

「……出来れば、それはあまり使いたくはないんです」

「何故だ? 事実なんだろう?」

「なんというか、それをアピール出来るほど自分に実力がない気がして……」

「あまり四の五の言ってる場合では無いと思うが……」


 めんどくさい性格をしてるなとは自分でも思う。

 せっかく案を出して貰ったのに、自信がないからってダメにする。

 友達にこんな奴いたら、絶対にめんどくさいなって誰もが思うよな。


「つまりユーリが求めてるのは、誇張しすぎず、でも高い実力を誇示出来るようなものという事だな」

「そうなんです。何かありますか?」


 難しいお願いなのは分かっているが、何か。


「やはり思いつかん」

「そんなぁ……」


 わがまま言った僕が悪いけど、ゼラさんでもダメだったか……。


「ユーリにできるのは、やはり月の魔物の討伐の威光を借りることだろう」

「そうですか……」


 ゼラさんからはそう言われるが、気は進まない。

 だって、あれはまぐれっていうか。

 みんなからは化け物に見えた月の魔物が、たまたま人間の女の子の姿をしていたからで。

 僕が強いからとかじゃなかったんだよなぁ。


 このままでは、実力に見合わぬ肩書きを掲げ続ける痛いヤツとして振る舞わなければならなくなる。

 でも背に腹はかえられない、か。

 嫌だな、嘘つきみたいで。

 諦めと反発の入り交じった心の中。

 そこに差し込んだのは――。


「でも、ただ借りろと言うんじゃない」

「……え?」

「ユーリ、君の心の中に巣食う月の魔物を討伐しろ。訳を知って、強みを知って、君が心から倒せたと思えるように、成長してくるんだ」


 どういうことなのか。

 月の魔物を胸張って倒せたと言い切れるくらいの心の成長をして来い、ってことだよな。

 言ってることはなんとなくは飲み込めたが、はっきりと具体的なことはまだ分からない。


「えっと、具体的には何をすれば……」

「……本当はもっと早くに渡すはずだったんだがな」


 そうして渡されたのは、一枚の手紙。


「一月前から預かってたんだ。次に顔を見せてくれた時に渡そうと思っていたが、まさか他の街に出向いてるとは思わなくてな」


 重厚感のあるその手紙を見て、僕はまだ疑問符を浮かべるばかり。

 誰からだろう、宛名は、僕だな。


「彼女なら、君を成長させてくれるはずだ」



 彼女、なら。

 ゼラさんが言うほどの人ってのは一体。


 裏面、差し出し主を見て、僕は目を見開く。

 そこに書かれていたのは――。



 


「リッサ・A・フォルフォード……!!!」




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