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迷宮探索

 しばらく暗闇が続き、僕らはニュースさんの持つ明かりとセカバさんの案内を頼りに先へと進む。

 蒸し暑い迷宮内部には、これといってモンスターらしきものも、仕掛けらしい仕掛けもない。

 多少身構えていた分、ちょっと拍子抜けしてる。


「暁音さん、迷宮ってどこもこんなに単調なの」

「いや? 私もあんまり潜ったことないけど、多分ここはもう攻略済みのエリアだからなんじゃない。ね、セカバさん」

「うむ。ここらにも住み着く生き物はいたよ。ただ、それらは先のパーティがほとんど倒し尽くしてしまった。だからまあ、単調という表現になるのも仕方ないかな」

「もっと血湧き肉躍るような体験がしたいのか、ユーリ」

「あいやぁ、別にそういう訳じゃ……なるべくなら楽な方がいいので」

「なんじゃ、お前さんも平坦が好きなのか。近頃の若いもんは、皆、苦労を嫌うみたいだな。なあ、ニュースよ」

「ははは……。楽な方に流れちゃうのは人間の性ですから」


 誰だって苦労は嫌うもんだろうと思うけど、歳をとったらそう思わなくなるんだろうか。

 若い頃の苦労は買ってでも、みたいな言葉があるくらいだし、した方がいいのか苦労……。

 いやまて、思い返したけど結構苦労してるな自分。


「そういうニュースさんは、なんでライテールさんのところに? 楽な方に流れて行ったなら、絶対たどり着かない場所だと私は思っちゃいますけど」

「僕は元々王都直属護衛隊志望だったんです。でも、前提の魔導具の試験がダメで、おまけに実技の方もいまいちってところで。泣く泣く冒険者になったんです。そこから、何度かクエストに行ったんですけど、生半可な気持ちが抜けてなくて。油断してたら死にかけたんです。その時は無事に助かったんですけど、こんなことがもう一度あったら生きては帰れないだろうなって確信して。冒険者辞めるにしても、働き口を探すのが面倒で。クエストも受けぬまま、何ヶ月か酒場にいたら、師匠に出会ってしまって」


 出会ってしまって……。


「その甘ったれた根性を叩き治してやるって、言われちゃって。逃げるにも、逃げれなくて。そのままズルズル続けて今にって感じです」

「そういう門下生さん、他にもいらっしゃるんじゃ?」

「おっしゃる通りです。師匠のところには、優秀な方もいるにはいるんですけど、僕みたいな劣等生からの叩き上げみたいなのが大半で」

「全く、出来の悪い奴ばかりで苦労するわい」


 なんて言うか、部活の顧問とその生徒みたいな関係性だな。

 やる気もさほど無いのに、辞めるのも面倒だからとズルズル続けてるのとかまさにそう。

 僕の周りにも、辛い厳しいと愚痴を吐くだけ吐いてやる気もないのに辞めようとはしない奴とか、いたなぁ。

 

「私も基本面倒くさがりだからな。分かるぞー、ニュース」

「研究者でも面倒とか思うんですか」

「ああ、そりゃもちろん。なんせ、生きることの大半は面倒だ。飯を食うのも風呂に入るのも、研究のことも面倒だと感じる日だってあるさ。私が研究者になったのも、だいたいのことが面倒だったからだ。ちょっと興味あった分野に関われて、あとは成果さえあげれば寝てたっていい。研究費もある程度は国が出してくれるし、成果も十年二十年かけてやっと芽が出るとかがざらだから一年くらいサボってたってなんにも言われん。面倒くさがりにとって、こんなにも適してる職は他にないぞ」


 研究者なんて関わったことがセカバさんしかいないからその言葉のどこまでを信用していいのかいまいち不明だが、なんというかセカバさんが優秀だから成り立ってるだけなんじゃないかな。

 面倒くさがりに適してるなんて、そのイメージからはとても思えないが。


「そんなセカバさんが今回はどうして依頼を?」

「ふひひっ。いよいよ成果を上げないと不味くなったからな。十年ぽっち怠けてたら、いよいよ国から怒られて。手っ取り早く成果を上げるには、やはり未知の迷宮を研究するしかなかろうと。苦渋の決断だよ。補助金が出るとはいえ、四億も出費。加えて実地調査が必須ときた。前回の探索時ですら命からがら逃げてきたというのに、もう一度潜れなんて言われたのは死刑か何かかと思ったよ」


 ……やっぱり面倒くさがりじゃだめなんじゃん!


「そういう事でだニュース。私を反面教師に、面倒くさがりもほどほどにな」

「ははは、肝に銘じておきます」



 雑談もそこそこに、僕らは結構な距離を歩いた気がするが、出会ったのは羽の生えたコウモリらしき生き物だけ。

 出会い頭で現れた時は驚きもしたが、一度あれば二度目はそこまで驚くこともなくなった。


「お腹すいたら、私の持ってきた干し肉でも食べてください。知り合いのシェフに頼んだので味は保証しますよ」

「そうか。気が利くのう、アカネ」

「ここらで一度休憩にしますか?」

「いや」

 

 ニュースさんの問いかけに、セカバさんが待ったをかける。


「もうそろそろ最奥だ。休憩してもいいが、テレポーターのアカネの事だ、最短で帰りたかろう?」

「お気遣いありがとうございます。安全第一ではありますが、皆さんがよろしければ、先に行っても?」

「うむ、構わん。日が沈む前に帰れるのなら、それに越したことはない。弟子もワシを待ってる事だからな」

「自分も大丈夫です」

「僕も、大丈夫」


 互いに顔を見合せ、同意を得る。


「じゃあ、先へ」


 長い通路の奥、少し開けた場所に出る僕ら。

 最深部、この先に待つものとは。


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