第17話 初戦闘
俺は実験の意味もあって思いつくままにいろいろなものを出現させてみた。
どうやら、イメージできても使ったことのないものは出現させられないようだ。
拳銃やライフルなどの火器をイメージしてみたが出現させることはできなかった。
またスマホのように使ったことがあっても、仕組みをよく理解できていないものも出現させることはできなかった。
「じゃ、電化製品とかはダメなのかな?」
「そうでもないぞ」
俺は懐中電灯を手に出現させてみた。ちゃんと明かりがついた。
「確かにこれも電化製品だねー」
「さすがに懐中電灯くらいは、俺でも仕組みを理解できてるからな」
「今度、拳銃やライフルの使い方や仕組みを勉強しに行きましょう。すぐに使えるようになるわ」
米軍に顔が利くようだから、そのくらいは簡単そうだな。
「俺の特殊スキルはこういうものなんだが、フランチェスカのはどういうものなんだ?」
「わたしのはね……」
そう言うと、フランチェスカはいきなり俺にキスをしてきた。
何やら甘い液体がフランチェスカの口から注がれる。
「これなに?」
「身体強化薬よ。30分くらい身体能力が30%くらい上がるわ」
「ドーピングか」
「薬物検査しても発見されないわよ」
「悪質だな」
身体能力が30%もアップしてドーピング検査でもひっかかからない薬物なんて、オリンピックで金メダル取り放題だな。
「わたしの特殊スキルはいろいろな薬物を作り出す力よ。口の中に出現するから、自分以外には使いにくいんだけどね」
だからキスしてってことになるのか。
「俺以外に使うなよ」
「あら、焼き餅かな? お母様やお父様には使ったことがあるわ」
「一族は許す」
そういえば、フランチェスカは昔にここに来たことあるんだっけな。その時は当然、両親と一緒か。
「どんな薬でも作れるのか?」
「和也みたいにイメージしただけってのじゃなくて、最初から作れる薬は決まってるみたいだけど、大抵の薬は作れるみたいよ。
ファンタジーな効果なやつがいろいろあるわ」
「ファンタジーな?」
「どんな病気でも治したり、身体の欠損も治したりの治療薬とかね」
「それは、確かにファンタジーだな」
「でも、死者の蘇生はムリだから死なないでよ」
まぁ死にたくて死ぬやつはいないだろうけどな。十分注意しよう。
「割とバランスのいい特殊スキルって言えるんじゃないか?」
「とってもいいと思うわよ。攻撃スキルしかない二人とかだと、最初は余裕でも後半は結構厳しくなると思うから」
「そんなときって回復はどうするんだ?」
「一応、モンスターからの拾得物や宝箱からポーション類が出るから、それである程度はなんとかなるようね」
ドロップアイテムだけじゃなく宝箱まであるのかよ。
「なんかそれってゲームみたいじゃね?」
「うん、多分だけどこういうダンジョンの記憶が伝えられて、ゲームの元になったんじゃないかと思うのね」
「実はダンジョンタイプのRPGも中国発祥なのか」
「これは伝承だけではっきりしないんだけど、こういうダンジョンは世界のいろいろなところにあったみたいなの。
今も伝えられてるのがこのダンジョンだけで」
「それじゃ、世界各地のモンスターの伝承とかも?」
「うん、いろんな場所で似たような伝承があるから多分そうかと……
あ、話がそれちゃったね。
ポーションとかで回復が追いつかない時は撤退して、治療後にまたダンジョンに挑むって感じになるのかな?
攻略済みの階層まではすぐに転移できるから」
そんな感じになるのか……
「ただ傾向として、一族の当主は回復スキル持ちが多いみたいよ。
お母様も回復魔法が使えるし」
「魔法!」
魔法まであるんだ、やっぱり……ってことは……
「攻撃魔法を使ってくる敵もいるからね」
そういうことだよね……
「よし、何はともあれ、軽く戦闘してみたいぞ」
「はいはい、バトルマニアなところは、うちのお父様そっくり」
やっぱ、そういうタイプだよね、オズワルドって。
フランチェスカとともに俺はそのままダンジョンを進み始めた。
この通路の先から敵の気配がビンビン伝わってくるぜ。
通路の先にいたのは2匹のオオカミだった。
最初からオオカミかよ。可愛らしくウサギくらいからの戦闘が定番だろ?
なかなかのハードモードのようだな、このダンジョンも。
「わたしが先制するから、トドメを刺していってね」
フランチェスカがオオカミに急接近して、オオカミの首元に手刀を次々と当てる。
オオカミは2頭とも意識を失っているようだ。
俺は日本刀でオオカミの首をはねていった。
どうやらフランチェスカと一緒なら、ハードモードでなくイージーモード。
いや、これはチュートリアルレベルだったようだ。
「トドメを刺すと能力の上がりがいいみたいなの」
経験値はパーティー単位で公平に分配されるけど、貢献度によって差が出るようなシステムってことだろうか。
フランチェスカの言うとおりなら、ラストアタックが貢献度が高いってことなんだろう。
前にしたことのあるRPGの知識が役に立つとは思わなかったぜ。
俺の初戦闘はこうして、あっけなく終わった。




