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第15話 継承の儀

 一学期の終業式が終わった。

 いよいよ明日から夏休みだ。


「約束通りに夏休みは、和也の鍛錬を中心に考えていいのよね」

「もちろんだ」

 フランチェスカがそう切り出してくる。俺も楽しみにしていたことだ。


「最初に和也に会った時に、当主になるためには二つの条件があるって話をしたの覚えてる?」

「あぁ、婿にふさわしい男性を見つけるってことだよな。あれ、もう一つって話を聞いた記憶がないんんだけど」

「うん、あの時わたしも舞い上がっちゃって、話をしてなかったと思うの。

 一つ目の条件は和也を見つけたことでOKになったの。それで、もう一つの条件の話になるんだけど、あらためて話しておくね」

「あぁ、そうしてくれ」

 話の流れからしてその二つ目の条件ってやつが、俺の鍛錬と関係してくるってことかな?


「当主にとって重要なことは血を伝えることともう一つ。強いこと。

 強さを証明することが必要になるの」

「でも、すでにフランチェスカは最強だろ?」

「でもそういう比較の問題じゃなく、ある課題をクリアしなくちゃいけないの」

「そういうのがあるんだ」


崑崙こんろんにダンジョンがあるの」

 いきなり話がぶっ飛んできたな。

「崑崙? なんか伝説上の地名だっけ?」

封神演義ほうしんえんぎとかにも出てくるね。でも、実際の地名でもあるのよ。

 崑崙山脈っていうのが、中国の西の果て、新疆しんきょうウイグル自治区の南にそびえ立ってるの。

 その中の標高6000メートル級の山の中腹にダンジョンがあるの」

 なんかすごい登山をすることになりそうだな。


「そのダンジョンの最深部まで潜って、そこにいる龍を倒してくるのが継承の儀って言って、当主の課題となってるの」

「それって代々の当主がやってきたことなの?」

 龍……ドラゴンだよな。

 伝説の生き物で最強ってイメージなんだけど、倒せるものなのか?


「実はね、その龍は結構強いみたいで、倒せない当主もいたそうなの。

 そんなときでも龍に認めてもらえれば、証を得られるみたいでそれでもOKみたい。

 でも、お母様は倒せたって言うから、わたしでもなんとかなるかなって」

 プリムローズさんは倒したんだ……すげぇな。


「ダンジョン自体は10階層の深いダンジョンで、階層が深くなるごとに強くなっていく感じだから、和也といっしょに攻略していきたいの。

 わたしの試練と和也の鍛錬の両方を兼ねてね。

 一緒に行ってくれる?」

「もちろんだ。そんなところにフランチェスカ一人で行かせることはできないし、俺の鍛錬になるならそれこそ大歓迎だ」

「ありがとう。和也ならそう言ってくれるって信じてたわ」

 フランチェスカは感激して俺に抱きついてきた。


「それで崑崙へはどういうルートで? 中国の新疆ウイグル自治区って聞くからにも行くのが難しそうだけど、まぁそのあたりはきっとコネとかあるんだよな」

「昔、一族が中国に住んでいた頃や、今みたいに移動手段が発達した時代ならともかく、昔の一族の次期当主たちがどうやって、崑崙のダンジョンへ行ってたと思う?」

 確かに……日本やヨーロッパに拠点を変えた後に、新疆ウイグル自治区まで行くとか半端なことじゃムリそうだよな。


「それで、これが必要となるわけよ」

 フランチェスカは青い石をニ個取り出して見せた。にぶくかすかに光っているようだ。

「これは、ダンジョンの龍を倒すと稀に落とすアイテムなの。

 この石を使うと、世界の何処からでも崑崙のダンジョン内へ転移できるのよ」

 ダンジョンへ転移とかまたファンタジーっぽいものが出てきたな。

「ニ個あるってことは一人一個ずつ必要ってことか?」

「うん、初めて転移するときは入り口にしか行けないけど、攻略が進めば各階層の入り口に転移できるわ」

 それはまた便利そうなアイテムだな。


「この石はたくさんあるのか?」

「んと、我が家で管理してるのは20個くらいあるはず。後は中国政府が何個か持ってるのと、ロシアにも数個あるので、ずっと両国間で返還要求が出されてるみたい」

「国際問題になるのか? だいたいどうしてロシアに」

「そりゃ、自国の領土内に気軽に転移して来られたら困るでしょうからね。ダンジョンの外には中国の警備の兵がいるはずよ」

「そうか、ダンジョンに転移しても外は中国だもんな」

「うん、そしてロシアに石が渡った経緯としては、しん溥儀ふぎ満州国まんしゅうこくへ渡った時に持ち出したみたいね。

 当時は中国政府も石のこととか知らなかったみたいで。

 その後、満州国が滅びた後にソ連政府に引き継がれていったみたい」

 フランチェスカの話を聞いていると、結構、歴史の勉強になるな。


「それじゃ、ダンジョンへ行く準備をしないとな。何が必要だろう?」

「準備とかいらないわよ」

「え?」

 いらないってことはないだろう。食料とか武器とか防具とか薬品とか……

 登山の用意は要らなくなったにせよ、危険なところなんだよな?


「いらないっていうか、準備しても仕方ないの。

 ダンジョンへは何も持ち込めないし、そして何も持ち出せないから……

 あ、この石とか証とかの、龍のドロップ以外はね」

 何を言ってるかよく理解できない……ダンジョンへ素手で乗り込むことになるのか?

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