表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/136

第五話「悪戯好きの旋風」・1

 俺――月牙と、ウォータルト帝国の王である水恋は、ウォータルト帝国の領内を歩いていて、分かれ道に差し掛かった。


「分かれ道か。どっちに行こうか」


 後ろにいる水恋に相談しながら俺は交互に道を眺めた。すると、背後からバキッ! という木の枝の折れる音がした。


「……いい加減出てきたらどうだ?」


 さっきから密かに感じていた魔力反応。この反応が誰のものなのかは分かっていた。しかし、さっきから怯えているのか一向に出てくる気配を見せない。そして俺がふと後ろを振り返ると、傍の木陰に隠れていた人物が片手に傘、もう片手に扇子を持って恐る恐るその扇子で顔を覆いながら姿を現した。


「靄花さん、どうしてここに?」


 驚きの人物の姿に口元に手を置いて唖然とする水恋。


「……ちょ、ちょっと用事があって来ただけですわ! か、勘違いしないで下さる? あ、あら……分かれ道ですわね? じ、じゃあ私はこちらを行きますので御機嫌よう? おほほほほほ!!」


 顔を真っ赤にして慌てふためく靄花は、そのまま扇子を仰いで高笑いしながら分かれ道の片方を進んで行った。


「……あいつは一体何のために来たんだ?」


「さ、さあ? それよりも先に進みませんか?」


「あ、ああ。そうだな」


 このままここにいたとしても時間の無駄だと分かっていた俺は、水恋に言われてコクリと頷くと先へと進んで行った。


――▽▲▽――


 俺達二人が歩き続けてだんだんと日が暮れ始めた頃、ついに水恋がその場に座り込んでしまった。


「も、もうダメです! これ以上歩けませぇ~ん!!」


 地面にペタンと座り込みその地面に手をついて泣き言を言う水恋。――まるで子供の駄々のようだ。


「何言ってるんだ。仲間探しの旅はまだ始まったばかりだぞ? そんなすぐに倒れてもらったら困る!!」


 水恋に手を貸しながら俺は言った。


「で、でも……もうさっきから歩き詰めで何も食べていないのですよ? 何か食べ物はないのですか?」


 手を貸そうとしてもやはり座り込んでしまう水恋は、俺にウルウルした瞳で懇願してきた。


「し、仕方がないだろ……。さっきの謎の旋風にやられたんだから!」


 そう、それは少し前に遡る……。




――ウォータルト帝国の領域内の深い近隣の森でのこと……。




《まだ見つからないのですか? その伝説の戦士というのは……》


《そう簡単に見つかるわけないだろ? 相手は俺達と同じく特別な力を持った人間だ。自分の力を悪い奴らに悪用されないようにするために、自分の身を守って隠れてる可能性も思慮の中に入れとかなくちゃなんないからな》


 俺は暗がりの森の前方を額の汗を拭いながら言った。

 と、その時、ふと水恋が足を止めて質問してきた。


《ところで、先程靄花さんが砦に居た時に月牙さんが言っていた“ふれあ”って誰なんですか?》


《ああ……。俺の幼馴染でな、俺の母親とあいつの母親が知り合いっていうか、姉妹? らしいんだ。だが、どうも俺にはあの二人がそれだけの関係じゃないような感じがしてな……》


《そ、その……ふれあさん、ってどのような人なのですか?》


 水恋の質問に、月牙は一瞬立ち止まった。


《そう……だな。髪の毛が母親のフィーレさんに似て凄く綺麗でな、太陽の光に当たるとまるであいつ自身が太陽になったみたいに眩しく光り輝くんだ――その髪の毛がな!》


《へぇ~……。ぜひ会ってみたいです、そのふれあさんという人に》


 俺が振り返ると、水恋はなぜか満面の笑みを浮かべていた。俺はその表情を見て思わず笑みを零し言った。


《伝説の戦士を集めてたら、その内会えるさ!》


 我ながらいい台詞を言ったんじゃないかと自画自賛し、俺は再び前を向いて歩きだそうとした。

 刹那――大きな旋風が巻き起こり俺達二人を襲った。


《な、何だこの風は!?》


 突然のことに俺は思わず動揺してしまい、その旋風に飲み込まれてしまった。


《げ、月牙さんっ!?》


《水恋、この場から離れろッ!!》


 俺は旋風の音で聞こえないかもしれないが、必死に腹の底から声を出して水恋に向かって指示した。風の勢いでよく周囲の光景は窺えないが、どうやらちゃんと水恋はその場から離れてくれたようだ。


《くそ……何なんだこの旋風は!》


 何とか脱出しようともがいてみるが、中々思うようにいかない。すると、何処からか声が聞こえてきた。


《ふふふ。ねぇ、お兄ちゃん。僕と遊んでよ》


 子供の様なその声は、すぐ後ろから聞こえてきたような気がした。――まるで、この旋風自体がその子供のように……。

 サッと俺は後ろを振り返った。そこには黒い影で良く見えないが、確かに人影が見えた――ような気がした。


《くそ……ッ!》


 何とか脱出することに成功した俺だったが、その代償として食料などを大量に詰め込んだ荷物を全て奪われてしまった。


《しまった! ……くそ、返せッ!!》


《ふふふ……返して欲しければ、僕と遊んでくれることだね……》


 そう言って子供の不思議な笑い声は、大きな旋風が消滅すると同時に消えた。


《げ、月牙さん。……大丈夫ですか?》


 心配そうな表情を浮かべ、水恋が俺に訊いた。


《あ、ああ……大丈夫だ。だが、さっきの旋風に食料を全て奪われちまった!》


《そ、そんな!》


 驚愕の表情を浮かべる水恋。恐らく、さっきからお腹が空いていたのだろう。


《だが、あの旋風には見覚えがある。確か風の里『ウィロプフロスト』だ。そこに住んでいる長老も、不思議な旋風を操ることが出来ると聞いたことがある! 試しにそこに行ってみよう!!》




「って言ったのはいいが、こう暗くちゃなかなか風の里なんて見つけられないぞ?」


「明かりを探せばいいのではないですか?」


 首を傾げそう呟く水恋。


「いいアイデアだ――と言いたいところだが、あいつらは火を使わないんだ。だから、明かりを探そう作戦は破棄だな」


「……そのなんたら作戦はともかくとして。そうですか、残念です」


 ガッカリと水恋は肩を落とした。


「最初の部分、なんか軽く非難してないか?」


「気のせいですよ」


「そう、なのか?」


 俺は少し気にかかったが、満面の笑みを浮かべる水恋を見るとそんな気分も失せ、何より今はそれどころじゃないということで忘れる事にした。

 その時、俺はいい方法を思い付いた。


「そうだ! 確か、風の里の住人は風に敏感で匂いとかも嗅ぎ分けられるって聞いたことがある。要するに、相当鼻が利くということ……。何か良い物は……」


 辺りを見渡していると、俺はいいものを見つけた。それは、少し大きめのキノコだった。何の種類なのかは詳しく知らない。そのため、もしかしたら毒キノコなんじゃないか? という可能性も無きにしも非ずだった。


「まぁいい、とりあえずこれを使おう!」


「そ、それ……大丈夫なキノコなのですか?」


「た、多分……」


 頬をかきながら俺は答えた。


「でも、火はどうするのですか?」


「それなら大丈夫だ! こいつがある」


 水恋のふとした疑問に俺は淡々と答えた俺は、懐からマッチを取り出した。炎属性を持った人物がいれば炎熱系魔法でどうにかなったろうが、生憎と俺は月光系魔法なので炎は使えない。斑希なら何とかなったかもしれない。

 とりあえず、近くから薪の代わりになるような木の枝や枯葉などを集め土台を仕上げた俺は、丈夫そうな木の枝の先端にキノコをぶっ刺しマッチを()った。


「これでよし!」


 俺は竹棒で息を吹き込み風を送った。火の気が回りすっかり火も安定してきた。


「ついてたな。大抵、風の里付近は風の乱気流っていうのが激しくて火はなかなか点かず、点いたとしても安定しないんだが今日は何故か風が吹いてないな」


「何かあったのかもしれませんね」


 暗がりの森の周囲を見渡しながら水恋が俺の顔を真剣な眼差しで見た。炎の光に照らされて、その肌白い顔が明るく光る。


「ああ。ようし、良い焼き加減になってきたな。よし水恋!」


「は、はい! な、何ですか?」


「この団扇でキノコを扇いでくれ! あいつらが匂いに敏感という話が本当なら、この美味そうな匂いにつられてやってくるはずだ!!」


「私が先に食べてしまいそうですが、そうですね。分かりました! 私に任せてください!!」


 やる気十分に水恋は眉毛をキリッと上げて俺から団扇を受け取るとキノコを扇ぎ始めた。


――▽▲▽――


 一分後。


「あの~月牙さん。まだ扇がないとダメですか? 私、もう疲れたのですが……」


「何言ってる! 自分から進んでやったことなんだから最後まで責任を持ってやり通せ!!」


「そ、そんなぁ~!」


 水恋は疲れたような声で、団扇を扇ぎながら言った。

 と、その時だった。何かの気配を感じ取った俺は、サッと水恋の口を塞いだ。


「むぐっ!?」


「しっ! 静かに。誰か来る!!」


 俺は、団扇でキノコを扇いでいる水恋を止めて、近くの木陰に身を潜めた。


「大丈夫でしょうか?」


「しっ!!」


 水恋の言葉を遮るように口を覆い黙らせる。


「来たッ!」


 その俺の言葉に水恋は身を乗り出した。キノコの匂いにつられてやってきたのは、一人の子供だった。


「誰でしょう?」


「分からない。だが、一つ言えることがある。それは、あいつの身形(みなり)だ!」


「あの服装は間違いなく風の里ウィロプフロストの物だ! よし、あの子供の後を追い掛けるぞ!!」


「は、はいっ!」


 俺と水恋は目の前にいるキノコを持った十歳くらいの少年を追いかけることにした。少年は周囲を見回し、誰もいないことを確認すると何処かに走り去った。後を見失わないように追いかける俺達は、少年の後を追ってようやく目的地である風の里に辿りついた。しかし、辿りついた早々俺達は里の者達に四方を取り囲まれた。


「お前達何者だ? ここへ一体何をしに来た?」


「私達は別に怪しい者じゃありません!!」


 突然突っかかってくる里の者達に的確に対処する水恋。


「水恋の言うとおりだ! 俺達はこの風の里にいる長老に話があるんだ!!」


「何!? ……さては貴様、長老の命を狙って来たのだな?」


 長老という言葉を聴いてさらに警戒し出す里人。その手には槍が握られ先端部が俺の鼻先へと向けられる。


「ち、ちが――」


 必死に俺は否定したが、里人達は少しも聴いてくれなかった。

 その時、奥から長老らしき人物がやってきた。


「これこれ、待ちなさい」


「ちょ、長老……いけません!! こやつらは長老の命を狙って――」


「まぁ待ちなさい。何か理由(わけ)があって来たのじゃろう」


 真っ白な顎鬚をさする長老と言われる老人の言葉に里人は構えていた武器を下した。


「旅のお方、無礼をお許し下され。わしらも最近物騒なもので警戒態勢を強めておったのじゃよ。お詫びと言っては何じゃが、とりあえずどうぞこちらへ……」


「ありがとうございます」


 ペコリとお辞儀をする水恋。俺は長老と水恋の後についていった。

というわけで始まって早々に後ろからついてくるストーカー、もとい高飛車お嬢様の靄花。二手に分かれる道で逆側に行ってしまいましたが、ホント何しに来たんでしょうねあの人。そして道中現れる新キャラ、少年です。幼いです。今回ほんとにいろんなキャラ出るのでやばいです。後半もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ